戦の章 第4話
| 飛翔たちのチームと別れて夜になった。 比較的休まずに歩いたと思う。霞は良くついてきたと彼らは感心した。 火を熾す段になって炎狼が居ないことに気づき、「不便だぁ」と雷が呟いた。 いつもこういう時は炎狼か沙羅が火を点けてくれていたが、残念ながら今は2人ともこのチームには居ない。 昨夜の残り火で作っていた火種を使って火を熾し、携帯食を口にする。 「見張りは俺と大地が交代で行うから。2人は寝ていろ」 氷が言うと「ワタシが入っていなのは何故なのかな?」と少し怒ったように雷が言う。 「雷は俺たちよりも体が小さいだろう?」 「ま!酷いなー。年下なんだから少しくらい体は小さいよ。理由はそれじゃないでしょ?」 睨むように言われて氷は大地を見た。 「雷はこっちのチームで一番早い。寝不足でスピードが落ちたら、チームの構成要因として頼りにしている要素がひとつ減るだろう?」 そんな大地にずい、と顔を近づけ 「きっと向こうのチームは飛翔と炎狼が交代で見張りよ。つまり、スピード要因に不安が出るとかってのはどうかと思うわー。今回偶々ワタシがこっちに居ただけで、向こうに居たら問答無用でワタシは見張りでしょ?」 「...そんなに見張りをしたいのか?」 呆れたように大地が言う。 「男の子だもん。頼りにされてナンボでしょ?」 ニッと笑ってそう言った。 大地と氷は顔を見合わせて同時に溜息を吐く。 元々軍人の自分たちはこういう野営に備えて訓練も受けているし、体力にも自信が有る。だが、雷は王の子でこういった野営には慣れていないだろう。 勿論、今まで何回かそう言った状況になったが、それでも人数が多かったため見張りの時間は少なかった。 「仕方ない」と大地は呟き、「じゃあ、見張りは3人だ。オレ、氷、雷の順。それでいいな?」 大地の言葉に雷は機嫌よく頷いた。 氷は大地の意図を汲んで頷く。 雷を最後にしたのは見張りの時間を少なくさせるためだ。時間を3等分するのではなく、4:4:2くらいにしようという意図がある。 まあ、翌朝雷に文句を言われたらまた考えよう。 大地はそう思い、氷を見ると彼も同じことを思っていたのか頷いた。 飛翔たちは沙羅の体調に合わせて移動することにした。 無理をさせて結局負ぶって歩かなくてはならないとなったら大変だから。悠にも疲れ具合を聞きながら、と思っていたがなんでも彼女は疲れというものが殆どないらしい。一応、彼女は神属性に近いというのだ。 「神様なのに、人間の霞に従うの?」 食事を済ませてひと段落ついたころに思い出して沙羅が問う。 「はい。わたしたちは確かに霞様に従ってます。霞様の魂に呼ばれてあの方についています。しかし、そのような仕組みを作られたのは時の神であるヴィーク様です。回りまわってわたしたちはヴィーク様の命によりこの人間界にいるということになります」 「んー...要は、ヴィーク様が霞に従いなさいって言っているから従っているということ?」 「仕組みとしてはそう言った感じで理解していただけたらよろしいかと思います。しかし、わたしたちは霞様が大好きですし、元々のディースの在り方はどうであれ、この先も霞様の命に従うつもりです」 霞の傍に居ることが自分の誇りだと言わんばかりの表情を浮かべて悠が言う。 「わたしの召喚獣たちと同じような感じかしら?」 沙羅の問いに悠は頷く。 「そうですね。召喚士と召喚獣や、炎狼様と守護獣のようなものだと思われたら分かりやすいかもしれません。少し違いますけど、その方が想像しやすいのではないでしょうか」 なるほどな、と飛翔は興味深そうに彼女たちの会話を聞いていた。 「で、さ。見張りはどっちを先にしたい?」 こういう話はあまり興味のない炎狼が話を移した。 「どちらでも」と飛翔が返すと「わたしも見張りに立たせてください」と悠が言う。 ディースは神に属しているから本当なら睡眠も食事も殆ど必要がないらしい。しかし、それだと気味悪がられるから人と似たような生活をしていると言う。ディースは本来、主の影であり、奥の手であるのだ。 その特殊な存在を公に知られてはならない。だから、カムフラージュのために食事をするし睡眠も取るのだという。 「おそらく、体の中の時間が人間よりもゆっくりなのだと思います」と悠が言い、飛翔は納得した。 だから、お腹が空くことが『ない』のではなくて、『殆どない』なのだ。睡眠も似たようなことなのだろう。特に、ディースは神界に帰っていると大幅に疲労を回復させることが出来るため、人間界で態々休息をとる必要がないらしい。 「便利だなー」と炎狼は呟く。 人はお腹が空くし、睡眠をとらないと体を壊す。 「じゃあ、3人交代で見張りをしよう」 「おれ、真ん中な?」 炎狼の言葉に飛翔は眉を上げた。真ん中と言うことは、一番睡眠が浅くなってしまう。 「いいのか?」 「まあ、妥当だろ?先と後は悠と話し合って決めろよ」 そう言って炎狼はその場にごろりと寝転び、すぐに寝息を立て始める。 沙羅もあくびをかみ殺していたが、こくりと舟を漕ぎ始めた。 「横になったら?」と飛翔が声を掛け、沙羅は頷き草の成長を促進してそれをベッド代わりにして横になる。 「じゃあ、私が先に見張りに立とう」 飛翔の言葉に「わかりました」と悠は頷き、近くの木の上に移動して幹に背を預けて目を瞑る。 飛翔は別の木の太い枝に上がり、幹に背を預けて腕を組む。 遠くまで見渡せるから、木の上のほうが良い。 足元には赤く炎が揺らめいている。 後どれくらいで着くだろうか。 ちゃんと、合流できるだろうか。 このチームで最年長は自分より3日ほど早く生まれた炎狼だが、それでも何となく自分がしっかりしなければと思ってしまう。 意外と、年長組に頼っていた節があった自分に驚いた。 国では大佐としてそれなりに多くの部下を持ち、纏めているというのに、氷や大地がいないと途端に何だか心許なく感じる。 炎狼に言ったらもの凄く怒られそうだが... 飛翔はそんな自分に苦笑した。 兄が生きていたから、何となくまた末っ子気質が出てしまったのかもしれない。 「まだまだだな...」 呟いて空を見上げた。 木が空を覆い、葉の隙間から微かに月明かりが漏れているだけの暗闇だ。1日歩いただけでこれほどまでに闇が濃くなるものなのか。 飛翔は目を眇めてこの闇の先にあるはずの魔族の本拠地に視線を向ける。 向こうにも、こちらにも大して時間があるわけではない。 予想出来ない残った時間に心が逸る。 |
桜風
08.10.19
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