終章 第10話





炎狼からその話を聞いた翌日、大地たちは久遠に呼ばれて通信室に向かった。

そこには、オペレーター席に座っている翼がいた。

「悪いが、国との通信コード、教えてくれ。機密部分じゃなくて、オープンにしているコードで大丈夫なはずだ」

「おれも?」

「炎はいい。頭領が乗っていらっしゃるシャトルが衛星になっているから。お前が無事なのは頭領ももうご存知だしな」

翼の答えを聞いて「ほーい」と炎狼は返事をし、大地が自分の国のコードを翼に伝える。

翼が端末を操作すると地の国のオペレータが出てきた。千里だ。

「大地!?」

「すげ...繋がった」

呆然と呟く大地に「簡単に報告しておいたらどうだ?」と翼が促す。

そういえばそうだった、と大地は千里に報告をした。

「じゃあ、終わったの?」

「一応。まだ帰れずに残った奴らがいるからこの国はまだ大変だけど」

大地の報告を聞いて千里はほっとした表情を浮かべた。

「けど、このコードはどこの?」

千里に聞かれて翼を見る。

「風の国だ」

「ウチのシャトルなのに?」と炎狼が聞くと「ウチのコードを埋め込んだらしい」と翼が苦笑する。

なるほどな、と納得している炎狼とは逆に千里は混乱している様子だ。

「風がこの通信の媒体を提供してくれているらしい。いや、炎か?」

「両方」と炎狼が答え、「だ、そうだ」と大地が千里に振る。

地の国のシステムではこんなことは出来ない。

「悪いが、時間がない。次の国との交信をしたいんだが...」

翼の言葉に千里は慌てて敬礼を向けた。

「報告は確かに受理しました。2番隊隊長、帰国の際には再度ご連絡ください」

「了解」と大地も敬礼する。

そして、そのまま各国との連絡を取り、報告は一通り終わった。ただ、まだ伏せている雷の故郷とは連絡を取っていない。

コードを聞いて、連絡をしてもいいのだが、それはそれで説明しにくい。何より、またこじれて戦争が始まっては溜まったものではない。

雷に一応確認を取ると、彼も同じ想いだそうで、「急ぐ必要はないよ」と苦笑したのでそのとおりにした。



国の正確な位置も把握できたこともあり、飛翔、雷を除く者たちは帰国することとした。

彼らはそれぞれの病室に足を運び、挨拶をする。

「まあ、暇があったら遊びに来いよ」

大地が言うと飛翔は「暇ならたぶんたくさんあるから遊びに行くよ」と軽く返した。

「待ってるぜ」と応え、大地は部屋を後にする。


「だいぶ顔色も良くなったな」

「お肌ツルツル?」

雷の見舞いを兼ねて挨拶に行った氷に雷がそう応える。

「肌の調子は、まだだろう」と笑いながら返すと「そうなんだよねー...昔のとおり玉の肌までもうちょっと時間が掛かりそうなんだよね」と残念そうに呟く。

「まあ、休ませてもらえるうちに休んでおかないと。帰ったら次代の為政者としての色々が待ってるんだろう?」

「氷は、そのつもりはないんだよね?」

雷のことばに少し驚いた様子を見せた氷だったが「ああ」と苦笑して頷いた。

「じゃあ、またな」

「うん。今、各国間の連絡体制が出来てるみたいだから、また連絡するよ」

氷は片手を挙げてそれに応えて部屋を後にした。


「霞、スイーツ食べられなかったね...」

残念そうに沙羅が言う。

「ええ、そうね。今はどうしてもお互い忙しいから。けど、落ち着いたら食べに行きましょう。遊びに行くわ」

「絶対よ!あ!いい事思いついたわ。わたしが作ってあげる!!」

沙羅が高らかに宣言する横で「腹壊すから辞退しとけ、霞」と炎狼が茶々を入れる。

「ちょっと、女の子同士の友情を暖めているところに水を差すのやめてよね!!」

沙羅が抗議をすると

「こっちも友情だ」

と炎狼が返す。

霞は目を丸くして炎狼を見上げた。

「じゃあな。飛翔とか兄さんとかまだ残るから世話になるけど、ヨロシクな」

「いいえ。こちらこそ、お世話になっているもの。翼さんの戦略とか結構ためになってるってウチの軍の人たちが言ってたわ」

「兄さんはそういうの得意だから。兄貴は、その場で臨機応変って言うか...前もっての計画がトンと苦手だって昔言ってたからな。あれで隊長ってまずいよな、普通は」

苦笑して言う炎狼に「そうなの?」と霞は目を丸くして首を傾げていた。


雷は、飛翔よりも早く帰国することが出来た。

「じゃ、お先」と軽く言う。

飛翔は一応歩ける程度には回復していたから、見送りには出た。

「帰国したら連絡頂戴よ」と雷が言い、飛翔は軽く手を上げて「ああ」と応えた。


「お世話になりました」

最後に残っていた飛翔が帰国することとなり、深々と頭を下げた。

「皆様、お帰りになられて寂しくなります」

久遠が言う。

「長々と滞在させていただいて、感謝しております」

翼が礼を言うと「こちらこそ、残存兵への防衛戦の指揮を執っていただいて助かりました」と霞が返した。

「おーい、飛翔。そろそろ時間だぞー」

ジェット機で迎えに来た東風が飛翔を呼んだ。

「では」と飛翔は久遠たちに敬礼を向けた。

「神のご加護があらんことを...」

久遠と霞はそう言ってそれぞれ祈りを向けてくれた。

飛翔が帰国したのは、雷の帰国から約2週間後で、あの戦いが終了してからひと月経った日のことだった。









桜風
09.10.18


ブラウザバックでお戻りください