終章 第11話





「あー、何か飛翔以外久しぶり」

少し照れくさそうに最後にやってきた雷が室内の仲間たちに声を掛けた。

国に戻って暫く飛翔は旅に出た。各国を回る旅だ。軍を辞めたので時間が出来たため、ゆっくりと世界を見て回ろうと思ったのだ。

まだ国と国との交流の定めがなかったが、飛翔はハヤテに乗ったり自分が風に乗ったりして全ての国を回った。

どの国でも一応は歓迎された。

共に戦った仲間を訪ねていったのだが、やはり戦後と言うこともあって政治や軍に大きく絡んでいる彼らは非常に忙しそうだった。

6国全て回ったが、暇そうにしていたのは炎狼だけだった。これでは、それぞれの国が惑星となって別れていたときと全く変わらない。あのときから炎狼はいつも暇そうにしていて、炎の国を訪れれば飛翔を口実に修行や勉学をサボっていた。

今回の訪問でも飛翔を口実に色々とサボっていたから飛翔が喝を入れて仕事をさせた。飛翔は頭領たちに非常に感謝された。

そんな時間をすごしたので、飛翔だけが戦後に皆と直接会ったことがあり、それ以外は顔を合わせるのは時の国を後にして以来となる。


「忙しそうだな」と言いながら軽く手を上げて返したのは氷だ。国がひとつの惑星になったこともあって各国の噂話は流れてくる。国を継ぐこととなっている雷や沙羅はその勉強などが大変そうだ。

「ま、ね」と肩を竦めて雷は室内に入って適当に椅子に腰掛けた。

今日は七勇のお披露目の式典が執り行われることとなっている。

今更、という感覚ではあるがそれは七国が戦争を終結させたと全世界に高らかに宣言をするためのものだ。

提案は炎の国だが、開催国は風の国となっている。

あの魔族との戦いから6ヶ月が経った。

もっと早くに行いたかったが、各国の国内での混乱を収めるのが先となったため、こんなに時間が経ってからのそれとなった。

各国の代表である国の頭とその国の勇者が一堂に会す。

その様子は全世界にテレビ中継が行われる。その開発もこの式典に6ヶ月かかった理由だったりもする。

元々科学技術が優れている風の国が超特急で開発を行い、突貫工事で各国に中継地点を置いて全世界で同じ情報を共有できるシステムを作ったのだ。

だから、風の国が開催国となった。まだ他国では中継を発信するほどの施設はない。現時点では受信施設しか作れなかった。

「でも、すごいよね」と沙羅が呟く。

「何が?」と大地が返した。

「全世界への中継施設をたった6ヶ月で作っちゃったんだもん。風の国、恐るべし!」

笑いながら言う沙羅の言葉に飛翔は苦笑して彼女を見た。

「各国の協力のお陰だ。各国、というか皆の、だな」

中継地点を作るに当たって各国に交渉を行った。とりあえず、王族の4人は現在の国の最高責任者と政治の重鎮の説得を行って工事が出来るように取り計らってくれた。

氷は、王の説得も政治を負っている軍の高官の了承を得るために会議を設けた。元々氷は彼らからの信頼は大きく、難しい説得をすることもなく快く承諾してくれた。

大地も、王がかなり心を入れ替えてくれていたので、説得が楽に進んで少々物足りなさを感じたほどだ、と言っていた。政治については、各隊長の許可が下りれば良いと言うことで、これは結構面倒だったが、各隊長を捕まえるのが面倒だっただけで説得自体は楽だったというそこまで大変ではなかったという。渋っていた隊長は総司令が説得してくれたとか。


「そういや、風の大改革も平行で行ったんだよね?」

炎狼が飛翔を見た。

風の大改革、とは他国から見た様子で、国の中ではある意味大混乱だった。

飛翔が軍に居られなくなり、炎の国の頭領が飛翔を引き取りたいと申し出たのだ。

炎の国は元々政治に女性の参加を禁止していない。

だから、飛翔が炎の国に行けばその実力を遺憾なく発揮できる状況が待っている。

飛翔のその才能を埋もれさせておくのはもったいないというのが頭領の言い分だ。元々、炎と風は交流があり、戦争中も条約を結んでいたため戦後と言っても今までと体制的には変わらず、変わったことといえば国どうしで移住ができるようになったということだ。

以前から移住をしたいというものが居れば受け入れるつもりでその制度はあったが、如何せん簡単に行き来できるような状況ではなかったため、実現しなかった。

しかし、同じ惑星の中にそれぞれの国があり、現時点では戦争も終結している状況となったら今まで障害となっていたことがなくなる。

そのため、条件さえ満たしていれば風の国の出身者が炎の国の国籍を取得することも可能となった。

もちろん、国籍を取得しなくても移住権は認めるし、その国で働いてもいいこととしている。国の政治の中枢に関わることは簡単ではないが、飛翔は先代の孫であり、炎の国を治めるものの血を継いでいる。

それに、頭領が言ったのは飛翔の養子の話だった。

飛翔の父親である大総統は反対しなかった。もちろん、その息子たちで飛翔の兄である翼や空也も。

飛翔を疎ましく思っていた高官たちはもろ手を挙げて賛成したらしいが、それに反対したのは、その高官の息子たちだった。

飛翔の実力と知識を他国に譲るのはこの国にとってマイナスだ、と。

しかし、親たちにとってみれば飛翔は女で、もし飛翔の国政への参加を認めれば息子たちの出世の妨げになる、とある意味冷静な判断を下していた。

そんな世代間で熱い議論が交わされ、結局は署名活動などで女性の政治への参加が認められるという今までの歴史を覆す結果となった。

飛翔を他国に渡せば、政治的にこの国が弱くなる。

若い世代は現在の状況を冷静に把握していたということになる。

何せ、飛翔は他国の王族全てと顔を合わせたことがあり、炎、雷、森の国の次代の為政者とは友人関係を築いている。

もちろん、政治の中で馴れ合いが出来るなんて思ってはいないが、彼女の知識は他国での風習や宗教、歴史など、外交に必要と思われる知識がその頭に詰まっている。

今の混乱した情勢の中で冷静にその国の政治的な流れを見極めて交渉を行うなら飛翔が適任だ。

風の国以外の6国はそのように判断していた。

その証拠に、炎が動いたと聞いた途端、雷と森、そして時が同じように飛翔をヘッドハンティングしようと働きかけたのだ。

結局、飛翔は元々この国を守りたくて軍人になったので、風の国を守る仕事が出来るなら、と他国の誘いは断った。

そんな短期間で行われた風の国の政治変動を『風の大改革』と呼んでいる。


コンコンとドアがノックされ、ゆっくりドアが開いた。顔を出したのは空人だ。飛翔と同じく、外交を担う部署に配属されることが決まっている。

「そろそろ時間です。お願いします」

彼はそう言って廊下に出て行った。

「それでは、最後の一仕事を致しましょうか」

そう言って霞が椅子から立ち上がり、ベランダへと続くガラス戸を開けた。

「時の悠久、我が魂に」

霞を皮切りにそれぞれがエンブレムの力を解放する。

この力の解放も久しぶりでちゃんと加減が出来るか心配だった炎狼はベランダに出てそこで開放を行った。室内で大きな力を解放してしまったら、下手をすれば色々と壊してしまうからだ。

全員がエンブレムの力を解放し、自身の竜たちも呼び出す。

人型として現れた彼らに「手はずどおり頼むな」と炎狼が声を掛けるとホムラは頷き、竜の姿をして上空へと翔けていった。

「じゃあ、オレたちも行こうか」


風の国の庁舎のベランダに七勇と各国の頭が並ぶ。

ベランダの下には風の民は勿論、態々他国からこのお披露目の式典を見るためにやってきた民も憧憬の眼差しでベランダの上の神の使いである存在の勇者たちの姿を見つめている。

開催国である風の国の頭、帝が宣言を行う。

「永きに渡る我々の間で続いていた悲しい戦争を終結させ、これからは力を合わせて平和な世界を築き上げる」

要約すれば、そう言った内容となる宣言を行い、七勇が神器を掲げた。

その上空では七神竜が悠々と飛んでいる。

七勇の姿は人々には神々しく見え、先ほどの帝の宣言に希望を見出す。

ベランダの下でこの式典の様子を見守っていた人々は喝采した。

各国でこの式典の中継を見ていた人々も同じように希望を胸に抱き、平和へと流れている世界を歓迎した。



『炎の勇者』炎狼、『地の勇者』大地、『光の勇者』雷、『精霊の勇者』沙羅、『風の勇者』飛翔、『水の勇者』氷、『時の勇者』霞。

この七人の勇者としての仕事はとりあえずこれで終わった。

―――七勇。今となってはその存在は伝説などではなく、世界が平和であるように努力し続けることを見守る存在として、平和の象徴として勇者の存在は全ての国に認められることとなった。

ひとまず、彼らの伝説はこれで幕を引くこととなる。









桜風
09.11.1


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