終章 第4話
| 城に戻ると雷と飛翔は集中治療室に入っていた。 「容態は?」 傍に居る霞に聞く。 「今晩が峠、だそうです。もう少し発見が遅かったらもう手遅れだったかもしれなかったと医師が言っていました」 「そうか...まあ、あれから3日は経ってるもんな」 空也はそう返事をして軍議に出るため、会議室へ向かった。 「空也さん、まだゆっくりされていた方が...」 部屋に入ってきた空也を見て、ある隊長が駆け寄ってそう言った。 「まあ、そうも言ってられないだろう。あと一息だし」 そう言った空也はふと窓から入ってくる風に違和感を感じた。 「悪い、通信室使わせてくれ」 そう言って空也は部屋から出て行った。 「ちょい、悪い。ここ使わせて」 オペレーターにそう頼み、空也は端末の前に座る。 「こんなことなら、お袋にもっと習っとけば良かったな...」 そう呟きながらキーボードを打つ。 周りに居るオペレーターたちは感嘆の溜息を漏らすが、空也にとっては遅い方だ。 ピッと短い電子音と共にモニタが開く。 『んあ?!誰だよ、ったく...お!おい、空人!!』 モニタの先に居る人物が慌てて少し離れたところにいる上官を呼ぶ。 『どうした、東風』と言いながら眉間に皺を寄せていた空人だったが、モニタに目を向けた途端敬礼をした。 『黒の中将!ご無事で何よりです!!そちらは...』 「時の国だ」 敬礼を返しながらそう答えた。 「今、お前らが掴んでいる情報を教えてくれ。こっちはまだ魔族が居てどうにも動けん」 『は!しかし、我々も何も...青の大佐は?』 「生きてる。...一応な。こちらに進軍してきた魔族の封印は済ませれたんだが、その後の始末が残ってて。魔界に戻れなかった弱い魔族がまだこちらにうようよと居てな。で、さっき風に違和感を感じた。この国にウチの風も居るんだ」 空也の言葉に、空人は窓を開けるよう指示を出した。 『そう、ですね。知らない風もいくつか混ざっていま..炎?』 「ああ、それは俺も感じた」 『白の少尉』 少し離れたところから空人を呼ぶ声がした。 『なんだ?今、通信中だ』 『それが..頭領から通信です。しかも、大総統専用コードで通信が入っています』 『大総統の...?少々お待ちいただけますか?』 空人はそう言って敬礼をしてモニタから離れた。 (親父の回線...?ああ、飛翔か親父がお教えしておいたのか) 大総統の回線はどの回線よりも最優先となる。今回たまたま他の回線が開いていなかったから空也と同じ時に回線を開くことが出来たのだ。 数分待っていると空人が慌ててモニタの前に立つ。 「どうした、お前が珍しいな」 『は、申し訳ありません。今からそちらに映像を送りたいのですが、大丈夫でしょうか?』 空也は責任者に確認を取り、了解する。 「何だ、これは?」 そこに映し出されたのは見たことの無い惑星だった。 『頭領が水の国を出て時の国に向かわれていたときに突然それが現れて、時の国が消えてしまわれたそうです』 流石の空也もこれには声が出ない。 昔、飛翔が話していた。七国はもとはひとつの惑星だったか、若しくは国だった、と。 『大佐が...』 幼馴染でもある空人は飛翔の仮説を知っている。空人も同じことを考えたのだろう。 「頭領との通信、繋げれらるか?」 『可能です。...どうぞ』 そう言うとモニタの画面が切り替わり見慣れた叔父の顔があった。 『空也。久しいな』 「は。ご無沙汰しております、頭領。それで、今回の...」 『私も俄かに信じ難いのだが、この星以外ないんだよ。星が。というコトは、きっと君も考えていることと同じだと思うんだけどね。ところで、私の愚息と、その乳兄弟は...』 「ご安心ください。無事です。と、言っても次期頭領はかなりボロボロですけどね」 苦笑をしながら空也は答えた。 『そうか。生きているならいい。では、君の妹で私の姪は...?』 「...今夜が、峠だそうです」 空也の答えに『そうか』と小さく呟く。 『私に何かできることはあるか?』 モニタの頭領がそう声を掛けてくる。 「風にお帰りください。恐らく、頭領の船の位置と風の国の位置の把握は出来ると思います。技術部がそんなものを作っていた気がしますので。私が指示を出しておきます。風の方から連絡が来るのをそのままお待ちください。貴船のコードはもう向こうで控えていると思いますので。燃料等に問題は...?」 『無いよ。わかった。じゃあ、大人しく連絡を待っておこう。協力できることがあったらなんでも言ってくれ、と伝えてもらえるかな?』 「は、助かります。では、通信を切らせていただきます」 そう言って一旦頭領との通信を切った後、再び風の国へと通信した空也は固まった。 『ご苦労。頭領との話、こちらでも聞かせてもらった。確かに技術部がそんなの作っていたな。今指示を出した。あと、そちらの状況を知りたい』 目の前に居たのは間違いなく、父だった。 『...黒の中将?』 眉間に皺を寄せて言葉を促す炎勇。 『ホンモノだ。その気持ちは分からんでもないがな。帰ってきたら説明してやるから、早くそっちの状況を話せ』 「は、はい。えーっと。勇者たちはその任を終えました。しかし、負傷が酷く、雷と風の勇者の2名は先ほど救助し、非常に危険な状況です。他の5人は既に歩けるまで回復しておりますが、決して楽観視できるものではなく。一応、絶対安静というコトになっています。...聞きやしませんけど。 国は、まだ魔族が残っており、こちらへの攻撃もあります。時の国もずっと防戦しておりますので、兵に疲れも見られ、ここへ来て負傷者も増えてきています」 空也の報告を聞いて炎勇は顎に手を当てて「ふむ」と考え込む。 『時の国の責任者。久遠様と話は出来ないか?』 炎勇にそう言われ、「少々お待ちください」と席を外そうとしたとき、 「私に何か...?」 通信室に来ていた久遠がそう声を掛けてきた。 『お久しぶりです、久遠様。今、そちらの状況を黒の中将から伺いました』 「ええ、拝見しておりました」 『そこで、わが国の精鋭を派遣しては如何かと思いまして』 「精鋭、ですか?」 『はい、あまり大人数で押しかけるのも失礼かと思いますので...』 「しかし、どうやって?」 『大気が繋がっていれば、風は何処にでも行けるのですよ。...ああ、そうかわかった。失礼しました。それで、如何です?』 通信中何かの報告を受けたらしい炎勇は一言詫びて答えを促す。 「どれくらい、かかりますか?」 『そちらに到達するまで大体2日かかるかどうかですね。今貴国とわが国との位置関係が出ましたので』 「そう、ですか。では、お願いしても宜しいでしょうか?」 『ありがとうございます。これからそちらに参るのは、白の大将である翼、そして、青の大佐である飛翔の部下の颯希の2名です』 「本当に精鋭だけ、なんですね」 久遠は驚き、目を開く。 『ええ。そこそこの能力者ならまだ居ますが、この2人は飛翔に次いで速いので』 「分かりました、お待ちしております。...私も、驚いておりますわ。幻だったのでしょうか?」 『いいえ、幻ではございません。ただ、神のお導きといったところでしょうか。では、私は失礼致します』 そう言って一礼をして炎勇はモニタの前から離れて行った。 『空也さん』 モニタの前には東風が居た。 「あ、ああ。どうした?」 『裏工作は任せろ。飛翔が得意だったしな。飛翔は、危ないのか?』 「今晩が、峠だと医師に言われている」 『ちゃんと、連れて帰ってくれよ?』 「そのつもりだよ。じゃあ、通信を切るぞ」 そう言って空也は通信を切り、部屋を後にした。 廊下に出て、自分の手を見る。 まだ残っているあの感触。夢ではないと、父が言った。でも、ホンモノだ、と。 パタパタと涙が零れる。 何かから開放されたように空也は声を殺して泣いた。 |
桜風
09.7.19
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