炎の章   第10話





「くそっ。何だよ、これ。よく分からねぇ生き物がいるし。...皆の混乱で余計にけが人が出るな。これは、軍と屋敷に避難させた方がいいな。焔、来い!」

炎狼が呼ぶと、守護獣である炎の龍の焔がどこからともなく現れた。

その背に乗った炎狼は高いところから応戦している兵や国民に指示を出す。

「皆、軍の施設と頭領の屋敷へ行け!動ける者は手伝って負傷者を軍へ連れて行ってくれ。子供や年寄りには特に気を遣ってやってくれ。―――!!」

上空から降りてきたおさげの子に蹴り落とされた。

しかし、下で待機していた煌に受け止められ、地面への激突は免れた。

「やっほー。お兄さん、あたし暇だから遊んでくんない?まぁ、お兄さんが遊んでくれなくても、街の人たちが遊んでくれるだろうから、別にいいけどね。」

おさげの子は、そう言って避難をしている街の人たちに向かっていく。

「待てよ、俺に蹴りを食らわせておいて余所見なんかすんな。遊んでやるよ、チビ。」

炎狼はエンブレムを手にする。

「(確か、右胸に当てて)炎の勇気、我が魂に。」

エンブレムが強く光り、炎狼の服が替わっている。

(力が溢れてくる。神器は...)

そう考えると、炎狼の両手にそれぞれ小太刀が収まった。念じれば現れるらしい。

小太刀二刀流。炎狼が最も得意とする剣術だ。

炎狼が構えた。

それを見た目の前の子は、楽しそうに笑い、炎狼に攻撃を仕掛けてきた。

彼女は武器を持たない代わりに手にグローブのような物を着けている。

体術を得意とするようで、素早い動きの拳と足のコンビネーションで攻めてくる。

炎狼はそれをかわしつつ小太刀で切りつけるが、それは手甲で防がれる。

一進一退の攻防が続いている中、大地たちが市街地に着いた。

「おいおい、何で攻撃しないんだよ、飛翔。炎狼も...互角なのか?」

大地が呟く。

その直後、炎狼の小太刀が光りだした。

炎狼は小太刀を自分の目の前で交差させ、そのままバツの字を描くように手を引く。

時空が裂かれようになり、そこから炎が上がる。燃え盛る炎の中から紅いドラゴンが出てきた。

その波動を受けたおさげの子の覆面が破れ、素顔が覗いた

「...マジかよ。」

その顔を目にした大地は呆然とし、声にならない声で呟いた。

おさげの子は、目が大きく、女の子だった。彼女は慌て腕で自分の顔を覆い、隠した。

下の様子を見ていた覆面の男は、地上にいる仲間に指示を出す。

「引き上げるぞ!これだけ能力者が揃っていると、こちらの分が悪い。」

時の国の者は、この指示に従って撤退していく。

「じゃあ、またな。風の戦士さん。―――ドラゴン、か。」

そう言って男も去っていった。


皆が炎狼の周りに集まった。

「ねぇねぇ、さっきのどうやったの?ドラゴン。」

沙羅が興味津々で尋ねるが、炎狼は、

「いや、どうやったって...。『私の名はホムラ。どうか火竜・ホムラと私を召喚してください。』って声が直接頭に響いたんだ。
だから呼ばないといけないのかな、って思って言われたとおり、『火竜・ホムラ』って呼んだら体が勝手に動いて、お前らも見たとおりだよ。
そういえば、あいつ去り際に、『私は炎の勇者に仕える火竜です。今後は名を呼んでくだされば、どこにでも、必ず参ります。』とか言ってた...」

と、呆然としながら答えた。

「とにかく、屋敷に戻って、頭領の報告した方がいいだろ。」

飛翔の言葉に皆は頷き、屋敷に向かった。

「炎狼、先ほど上空に現れた龍、いや、ドラゴンと言った方がいいな、あれは何だ?」

秀炎は事の次第を全て聞いた後、暫く黙って俯いた。

そして、ゆっくり口を開く。

「『天高く竜現われしとき、神の御使い地上に舞い降り、かの地に光をもたらさん』。
これは、昔からの言い伝えだ。この『竜』は、先ほどのドラゴンのことだろう、伝説どおりだ。」

「へえ、そんなのがあったんだ。おれ知らなかったぜ?」

「お前は初めから先代や、私の話を聞いていなかっただろう。あ、先代、お疲れ様です。どうぞこちらへ。」

軍本部から戻ってきた炎陽を労う。

炎陽は目を瞑り、深く息を吐いた。

「とりあえず、市中の後始末は任せてきた。...奴等の国内進攻も増えてきたな。国外は勿論、国内の守備体制も考え直さんとならんな。人以外の物の怪の相手もせんといかんようだしな。」

そう言って炎陽は腕を組んで考え込んだ。

「ところで、炎狼。お前はいつこの国を発つつもりでいるのだ?」

秀炎に問われ、

「明日...明後日くらいか?余り長居出来るような状況じゃないしな。皆の神器を回収しながら時の国まで行かないといけないから、早く出発した方がいいだろうな。あ、オヤジ、十日分くらいの食糧も一応用意してくれねぇか?尽きるはずは無いらしいんだけど、一応、確保しておきたいんだ。」

と答える。

「分かった。すまないが、明後日まで待ってくれ。今日、あんなことがあって今は手が回らない。一応急かしてはみるが、明日には間に合わんだろう。...さあ、皆さんもお疲れでしょう。どうかゆっくりお体を休めて下さい。」

そう言って秀炎は部屋を後にした。

皆の各々宛がわれた部屋のある別棟へ帰っていった。

部屋には、腕を組んで考え込んでいる炎陽の姿が残された。











桜風
04.11.28


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