炎の章 第3話
| 朝食を摂った後、皆は自室に帰らず、そのまま居座った。 炎の国が近い。 「ねぇ、炎の国ってどんな感じなの?」 雷が炎狼に声をかける。 「どんなって、普通だと思うけどな。火山と地震が多いかな。火山の殆どが休火山で、たまーに嫌な感じで噴煙上げてくれてるな。でも、おれが生まれてこの方火山の噴火なんて見たこと無いぜ。 あ、あと地下のマグマのおかげで、あったかいぞ。温泉もそこかしこにある。民家の風呂が普通に温泉とかな。 他に―――。何かあったっけか?」 「温泉かぁ。」 沙羅は、嬉しそうに呟いた。 「なあ、飛翔と炎狼っていとこなんだよな。」 大地が突然飛翔に話を振ってきた。 「ああ、父方のいとこだ。私の父と炎狼の父親が兄弟だからな。」 「何で国の外―――――」 大地が話を続けようと言葉を口にしたとき、外部からの通信が入った。炎の国の領域に入ったらしい。 『この先は炎の国の領域となっている。どこの国に属している船か速やかに答えろ。こちらの指示に従わない場合は、即刻撃ち墜とす。』 横柄な態度の通信が入ってくる。 それが気に食わなかったのか、炎狼はモニタの前に立ち、通信回路を開いた。 「お前、このおれに喧嘩売ってんのか?通信員はもっと物腰柔らかく丁寧に話せよな。必要の無い問題が起きるかもしんねえだろうが!?」 今度は炎狼が横柄な態度をとり、通信員を叱りつける。 「炎狼が『物腰柔らかく』って言っても説得力ないよね。っていうか、これでこの船墜とされたら炎狼のせいだね。この宇宙の暗ぁーい未来も。」 沙羅は中央のテーブルに頬杖を付きながら呟いた。雷と大地もそれに頷く。 『え、炎狼様?!』 「「「炎狼様ぁ?!」」」 驚きの余り、暫く口が利けなくなっていた通信員が発した言葉に、 三人は思わず声を合わせて通信員の言葉を繰り返した。 いつも落ち着いている氷までもが驚いているようだ。 「おう、悪いけど、港の入り口開いてくれ。今から帰るからよ。」 通信員と自分の後ろの仲間の驚きっぷりに気を良くした炎狼は、軽い口調で頼んだ。 すると、一人の、どこか炎狼と雰囲気が似ている老人がモニタの前に出てきて怒鳴った。 『馬鹿者!なぁにが『今から帰るからよ』じゃ。今までどこに行っておった。お前なんかもう要らん。この国の頭領は、炎勇のところの倅に継がせる。二度とこの国に来るな、お前のアホ面はもう見たくない。その船でどこへなりと好きなところへ行ってしまえ!』 その言葉を聞いて雷は、「そっくりじゃん、顔」と思わず呟く。 「んだと、クソジジィ!可愛い孫が無事に帰ってきたんだ、涙を流して温かく出迎えるのが常識だろが!!」 後ろでは、「...そんな常識知らない」と再び突っ込みを入れる雷。 『うるさい!貴様なんぞ孫でもなんでもないわ、赤の他人じゃ!』 「――――なあ、あの二人っていつもこうなのか?」 二人の応酬を見ながら呆れた大地が飛翔に耳打ちをする。 「ん?ああ。あの二人はいつもこんな感じだよ。独特のコミュニケーションのとり方だよな。後ろの通信員も涼しい顔して見ているだろ?日常茶飯事なんだ。あの人は炎狼の、そして私の祖父で先代の頭領だった人。炎陽(えんよう)様だよ。頭領っていうのはこの国の王みたいなものだって言うのは知っているかな。 ...しかし、まあ。いい加減止めるか。」 飛翔は溜息を吐いて立ち上がり、モニタの前で尚も口喧嘩を続けている炎狼を押しのける。 そして、モニタに向かって、 「長い間ご無沙汰しております、先代。お元気そうで何よりです。」 と微笑を浮かべて話す。そんな飛翔の姿に炎陽は、目を細める。 『おお、飛翔も居ったのか。居るなら居るであのバカ孫に通信させんとお前がすれば良かったものを。まあ良い、とにかく入って来い。港の入り口を開ける。屋敷で食事をしながら話を聞こう、昼食はまだであろう?』 そう言って、炎陽は後ろの通信員に指示を出す。飛翔は操縦をマニュアルに切り替え、港へ向かった。 一方炎狼は部屋の隅でいじけていた。 飛翔を除く四人はその姿を生暖かく見守った。 |
桜風
04.8.8
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