炎の章   第4話





「よく来たな、飛翔。すまなかったな、炎狼が多大な迷惑をかけただろう。

ところで、後ろの人達は一体...」

炎陽は上機嫌だった。飛翔は周りの様子をうかがい、

「あの、ここでは申し上げることは出来ません。御内密にお話しした方がよろしいかと思います。それと、この船には一切手をつけないで頂きたいのですが。こちらの理由も一緒にお話できると思います。
お願いできますか?」

飛翔の話し振りから重要な話だと察した炎陽は、了解して部下たちに指示を出し、飛翔たちを屋敷に招いた。

「お?炎狼様じゃないですか。どうしたんです、ぞろぞろと。」

「炎狼様、また今度遊んでよ。」

「たまには飛翔さんのように本を読まれては如何です?」

街を歩いていると老若男女問わず、炎狼に声を掛けて来る。

「いいよ、本読むと眠くなるから。それよりどうしたんだよ、顔に痣が出来てるぜ、奥さんと喧嘩したか?いい男が台無しだな。」

「父ちゃん、昨日も母ちゃんに負けたんだぜ?」

「こらっ!はは、お恥ずかしい。」

「いいんじゃねえの?女殴るよりよっぽどかっこいいじゃん。」

「...炎狼って人気者だね。」

雷が感心したように飛翔に声を掛ける。飛翔は苦笑しながら、

「いつも修行サボって、街の人の手伝いとかしているからな。」

と答えた。

街の人に声を掛けられ続け、それに答えながら歩いたので屋敷に着くのに随分時間が掛かった。

「おい、気を付けろよ。この屋敷、無駄にからくり多いからな。下手に掛かられると助けるのが面倒くせぇ。」

そう不機嫌に言った炎狼は先頭を歩き、飛翔が最後を歩いた。

屋敷で一番大きな部屋に着いた。

そこには、炎陽ともう一人、炎狼とそっくりな顔をした中年の男性が座っていた。

「遅かったのぉ。今昼食を用意させておる。」

「ジジィ、てめえ、客招いたんなら自分で案内しろよ!横着すんな。」

そう言って炎狼は椅子に座る。飛翔も炎狼の傍の椅子に着き、他の四人も手近な椅子に座る。

「私は、頭領の秀炎(しゅうえん)で、炎狼の父です。皆さんには息子がお世話になりました。お礼を申し上げます。そして、もう自己紹介も済ませたかと思うのですが、こちらが先代の頭領の炎陽です。」

「なあ、母上は?」

「...お前が無断で姿を晦ましていた時に溜めた心労が今出たようじゃ。寝込んどるわ。」

苦い顔をしながら炎陽が話す。それを聞いて「あちゃー」と炎狼が項垂れた。

「先代。炎狼はどれくらいの期間、居なかった事になるんですか?」

飛翔が聞くと、炎陽は指を折って数え、

「今日で一週間かの?思ったよりも短いの。」

と答えた。

一週間。エデンとこちらの時間の流れは違うらしい。

そういうものくらい調整してくれればいいのに、とそれぞれ心の中で思う。

「まあ、話はそれくらいにして、とりあえず、食事を済ませましょう。そういえば、飛翔。風の皆は息災でおられるか?今度、ゆっくりこちらにおいでになってくれればよろしいのに。忙しいか?兄上は。」

「...そうですね。中々時間は取れないでしょう。」

「そうか。何はともあれ、お元気ならそれに越したことは無い。」

秀炎がそう言って話を終わらせた。

昼食を済ませて、皆が一息ついてから秀炎が話を切り出した。

「ところで炎狼、お前は今までどこに行っていた。そして、この方たちは?」

炎狼は、エデンでの出来事を語った。途中、説明不足のところは、飛翔が補う。

「ふむ。そのような事が...それで飛翔はあの船に手をつけるなと言ったのじゃな。」

「はい。私自身あの船について殆ど理解していません。一応、マニュアル操縦と、動力源は分かりましたがその他はよく分からないのです。こちらには余り時間も無いことですし、下手に手を付ける訳にはいかないので。」

「しかし、炎狼がこの国の勇者か。そして、この人たちが、他国の...」

「おい、オヤジ―――じゃなくて、頭領。こいつらに危害を加えんなよ。まあ、頭領は大丈夫だろうけど、ジジィ、分かってんな?
で、武器が封印されていそうなところ、知らねぇか?おれイヤだぜ、今から古文書漁っていくの。飛翔には楽しい作業かも知れねぇけど、おれには退屈すぎる。」

「まあ、お前のことを分かっている人間は、そういうことをお前に期待せんよ。...炎狼。炎のエンブレムを見せてみろ。何かの手がかりになるやも知れない。」

そう言って促す秀炎に、

「ん、これ。あ、でも何かおれ以外が触れるとヤバイみたいだぜ?飛翔の触らせてもらって痛かったから、何か、やっぱ力があるんじゃないかな。飛翔もそうだったろ?」

「まあ、少し。私の場合、炎も持っているからな。炎狼程じゃなかっただろうけど、痛かったことは痛かったな。」

「ほう」といいながら炎陽が手を伸ばしたので、秀炎がその手を制し、

「先代、触れるのはおやめください。危険です。」

と言う。

そして、机の上に炎狼が置いたそれを見て、

「...この紋章は。炎狼、この屋敷の裏の山の中腹にこれと同じ紋章が刻まれている遺跡のような物がある。
おそらくそこに手掛かりはあると思うのだが、何せ、その入り口が分からないんだ。何度か調査に出たが、発見出来なくてな。まあ、とにかく行ってみてはどうだ?」

「ふうん。そんなのがあの山にあったのか。ガキの頃あの山に入って遊んでたけど、知らなかった。じゃあ、早速行ってくるぜ、オヤジ。飛翔、悪いんだけどその遺跡まで風で連れて行ってくれねえか?」

飛翔は頷き、立ち上がる。

「ねえ、わたしも行きたい。炎狼の試練ってのを見たらわたしの時に何か参考になるかもしれないから。ダメかな、飛翔。」

他の三人も同じ意見だったらしく、結局六人で行くことになった。










桜風
04.8.22


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