炎の章   第8話





時間は遡って、炎狼。

皆を帰したあと、炎狼は独り炎の道を歩いていた。

「熱い...暑い...。『あつい』って言ったら余計にあつくなるんだよな、誰か言ってた気がする。よし、じゃあ。いやー、涼しいねぇ、こんなに涼しいところなんて今まで無かったよなぁ、うん。
って、こんな所で涼しいなんて思えるかぁ!!」

独り言が大きくなっている上、頭も回らない。

自分の言葉にツッコミを入れてガリガリと頭を掻く。

「あー。おれ、今凄ぇ馬鹿みてえだったな。っにしても、此処、いつまで歩けばいいんだ?歩き続けるだけっていうのも何か『試練』って感じがしねぇよな。
武器の前に行くとボス敵か何かがいたりするのか?もう、歩くの飽きたし、ここらでもう少し変わったこと起こらねぇかな。後ろに引き返せないように炎に道が塞がれているしな。
ま、尻尾巻いて逃げる気なんて更々無ぇけど。」

その後もぶつぶつ言いながら足を進めた。

この遺跡に入ってから既に半日近く時間が経過した頃、炎狼は最奥の突き当たりの部屋を前にしていた。

「ゴール!あー、足痛てぇ。何でこんなに距離があるんだよ。あの山はこんなに広かったのか?!まあ、ここが終点だからいいけど。しっかし...」

その部屋は入り口がそこしかなく、他のドアも見当たらない。

そして炎狼が最も気になったことは、

「ここの部屋の炎は何処だ?」

だった。

炎狼は部屋の中を改めて見渡す。

すると、部屋の奥に台座のような物が目に入り、その上では何かが神々しく光っている。

(あれが神器ってやつか?)

そう思った炎狼は、部屋の中に一歩足を踏み入れた。

その途端、その台座を囲むように炎が上がる。

驚いた炎狼は、思わず足を引っ込めた。炎狼の足が部屋の外に出ると、炎も消える。

それを二、三度繰り返した炎狼は腕組みをして、

(なんだ?おれが部屋に入るとあれを守るように炎が出てきやがる。でも、おれが要るのって、たぶんあれだしな。...あの炎、操ってみるか?
ま、考えても話が進むわけじゃないし、やってダメならゆっくり考えてみるってのも手だよな。んじゃ、行きますか。)

炎狼が二、三歩部屋の中に足を進める。

やはり、台座を守るように炎が上がる。

炎狼はそのままその炎を操ろうと神経を集中させた。しかし、それは何の変化も起こらなかった。

炎狼は舌打ちをし、炎の傍まで行った。炎の前に立った途端、入り口が閉まり、閉じ込められてしまった。

「げ!?あんな扉みたいなのってあったか?...ああ、これはネズミ捕りの要領だな。餌に食いついた途端扉が下りてきてそのまま閉じ込められる。―――閉じ込められる?」

炎狼は自身の言葉に引っかかる。

しかし、ふっと笑い、

「上等じゃねぇか、絶っ対に出てやる!!さて、と。」

と言って構えた。勢いよく燃え盛っているその炎を操ろうと再び神経を集中させた。

しかし、さっきと同じく炎に少しの変化も見られない。

それでも力を集中させていたが、次第に意識がぼんやりしてきた。

(...やべえな。頭がくらくらしてきやがった。だろうな、こんだけ勢いのある炎と密室でご一緒だもんな。


に、してもなんでこいつの勢いだけは衰えねぇんだ?酸素が無くなってもこのままっぽいよな。


でも、マジ俺の酸素が足りねぇ。おれの炎をぶつけて消してみるか?...おれの炎で消えるか?


いや、どうせなら悪足掻きをした方がよっぽどマシだな。

ジジィ、オヤジ、母上。おれ、正直な人間にはなれたと思うけど、勇気はあんまし無ぇみたいだ。


いつも正直で、勇気を持った男になれって言われてたのにな。

じゃ、これが今のおれの炎だ、食らいやがれ!!)

炎狼はすべての精神を込めて全力の炎をぶつけてみた。

しかし、炎狼の炎はその炎の壁にぶつかり、飲み込まれていくだけだった。

(...やっぱ、無理だったか。悪いな、皆。)

炎狼は前のめりに倒れた。

意識が薄れていく中、声を聞いた気がした。

―――いいんでない?お前の炎。まっすぐで、俺様は気に入ったぜ。それに、勇気なんて人一人助けるために命を懸けられる。それだけで十分だろ。
―――ラグ様。
―――ホムラか。こいつが次の主だ。助けてやれよ?
―――はい。心得ております。
―――炎狼、お前は...右胸だな。そこにエンブレムを当てて、こう念じろ。『炎の勇気、我が魂に』。いいな?
煌、連れて帰ってやれ。











桜風
04.10.24


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