森の章 第1話





雷の国を出て数日経った。


「そういえば、やっとわたしたち六人の半分が終わっただけなんだね。」

沙羅が突然そう言った。

「そういや、そうだな。結構長くかかってるな。で、お前んちはどうなんだ?」

炎狼が聞くが、

「どうって?」

沙羅が聞き返す。

「いや、おれたち今まで3国だけど、色々あったじゃねぇか。」

「ああ、それなら...」

笑顔で答えるのかと思いきや、沙羅の顔が段々蒼褪めてくる。

「そ、そうだった。マズイ...」

その後はどうしよう、どうしようとその場をウロウロと行ったり来たりし始めた。

「落ち着けって。どうしたんだよ、突然。」

「よーく考えたらマズイの。ああ、叱られる。ああ、お説教...」

「まあ、叱られるのとか、お説教とかは沙羅だけの問題でいいとして、国のこと少し話してほしいんだけど?」

オロオロしている沙羅に雷が冷静にそう言った。

「他人事だと思って...」

「他人事よ。ほら、話してくれないとまた問題が増えることになるでしょ!」

そう言われた沙羅が渋々話し出す。

「わたしの国は、その名のとおりに森だらけなの。其処彼処に木があるわ。生活の一部なのよね。
でも、森の中には中々入れない。大抵の人が入れるのは入り口程度、外が見えるところまでね。それより奥へ入ることが出来る人って少ないのよ。
殆どの森は『迷いの森』ってことになってるわ。精霊がね、住んでるの。でも、大抵の精霊はイタズラ好きで人を道に迷わせて楽しんでるのよ。だから、森の中に入れるのは召喚士だけ。
召喚士って精霊よりも強いものを呼び出せるのね。つまり、明らかに自分より強いものを従わせている人だから、精霊もイタズラをして来ないの。森の中には薬になる薬草もたくさん生えてて強いのになればなるほど森の奥に生えてるのね。だから、召喚士が依頼を受けて摘みに行ったり、自分のために摘んできたりするの。
わたしの能力を皆知ってるよね?召喚と治癒。実は両方兼ねてるのって少ないのよ。勿論、治癒はウチの基本の能力だから大抵の人が持ってるけどね。
召喚力が強ければ、治癒力が弱くて、治癒力が強いと召喚力が弱いの。そして、治癒力は所謂外科だけ。内科とかはやっぱり勉強したお医者さんが薬を調合して処方するの。」

「へえ、じゃあ。召喚力のあるヤツが医者をすれば一人で全部出来るじゃん。外科は精霊を召喚して、内科用の薬は自分で薬草を摘んできてって。」

興味津々に大地がそういうと、

「うーん、確かにね。そういう人も居るけど、実際は少ないわ。精霊の召喚も実は難しいの。言うことを聞いてくれない子が多いから。危害は加えてこないけど、協力もして来ないってのがあの子達の傾向ね。
召喚士って結局は能力を生かせない人が多いのよ。普通は、日常生活の上では召喚なんて必要ないもの。特に幻獣はね。」

「回復系の幻獣は居ないのか?」

氷の疑問に

「居るけど、大抵の召喚士って呼び出せる、というか、契約を結べる幻獣は1体程度なの。」

と、沙羅が答え続いて炎狼が

「でも、沙羅はまだたくさんのものと契約してるんじゃないのか?」

と問う。

「そうねー。でも、わたしのは自分で契約した子が居ないから。全部お母様から受け継いだ子達なの。お母様に言われてわたしに従ってるだけなのよね。炎狼の、煌だっけ?と似てるかもね。」

沙羅が寂しそうにそう言う。

「じゃあ、お母さんは、召喚しないの?」

雷が聞くと

「うん。もう出来ないよ。わたしを産んでひと月もしないうちに亡くなったの。そのときに、あの子達をわたしにって。」

「あ、ごめん...」

「ううん。いいの。ずーっと前のことだし。でも、そうね。一度でいいから、お母様に召喚を教えてもらいたかったわ。最高の召喚士だったって伝説の人になってるから。」

そう言った沙羅の笑顔は少し寂しそうだった。











桜風
06.4.9


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