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飛翔に連れられて城に戻った沙羅はベッドの上で寝ていた。
心配そうに沙羅の世話をする者たちは、いつもより動きが硬い。
それもそのはず。
伝説の幻獣たちの王、ユニコーンが沙羅のベッドの傍らで寛いでいるのだ。
少し呻き、沙羅の目がうっすら開く。
「気ガツイタカ、我ガ乙女」
ユニコーンが首を伸ばし、沙羅を見る。
「ここは...?」
「城ノ中ダ」
寝ぼけ眼といった感じだった沙羅はハタと気がつき、
「お母さまは?!」
とユニコーンに聞く。
「カノ者ノ魂ハ、昇華サレタ」
「そう。...ありがとう」
「悲シムナ、我ガ乙女。カノ者ノ魂ハ救ワレタトイウコトダ。ソレヨリ、モウ起キレルカ?国ヲ守レルカ?」
ユニコーンにそう言われて初めて外を見る。
他の召喚師が召喚した幻獣たちが街の中に見える。それらは、もう見慣れた魔族と交戦している。
沙羅はベッドから飛び降り、ベランダに出る。
「わたしもすぐに行かないと!」
「我ガ乙女。乙女ハ、両鎖骨ニエンブレム1ツズツ当テテ、『精霊の神秘、我が魂に』ダソウダ」
「分かったわ。『精霊の神秘、我が魂に』」
言われたとおりにエンブレムを両鎖骨に当ててそう唱えると神気が漲る。
(武器は...何?)
自分の武器が見当たらない。
自分が必要だと思ったらそれが勝手に現れると炎狼たちには聞いていた。それなのに、今の自分には現れない。
<聞こえるか?>
頭に直接声が響く。
「誰?」
<俺は、アンタの、森の勇者の竜だ>
「わたしはどうすればあなたを呼び出せるの?」
<お前の武器は、その左手の甲にある。まず、それを外せ>
確かに、それはある。
グローブというか、手袋の左手の甲に楕円形のべっ甲のようなものがある。
透明ではないが、色も着いていない。不思議な感じのするものだ。
沙羅が触ってみると簡単に取れた。
「わっ」
驚いたことにそれは外れると大きくなる。
自分の背の半分くらいの大きさになったそれの上と下を両手で支えた。
大きさの割りに重くない。
<それは、異世界と直結している鏡だ。取りあえず、俺を召喚しろ>
「どう言えば?」
<精竜(しょうりゅう)、リョク。俺の名前だ>
「精竜、リョク!」
沙羅が自身の武器だといわれた鏡を空に掲げて竜を召喚する。
すると、鏡が光り、中から竜が出てきた。
<街に行くなら乗せるぜ。どうする?>
「お願い。あなたは?」
リョクの背に乗って、部屋の残っているユニコーンに向かって声を掛けた。
「我ハ一度戻ル。必要トアラバ、ソレデ呼ブトイイ」
そう言って消えた。
「ありがとう。リョク、お願い」
ユニコーンに礼を言い、リョクに声を掛けた。
<しっかり掴まってろよ>
そう言ってリョクは翼を羽ばたかせる。
「ねえ、この鏡って他に使い方は?」
<お前は、召喚師の弱点は何だと思う?>
「えーと、召喚中は無防備になること?あとは、属性の偏り?あ、精神力の消費!これ、かなりキツイのよ」
<まあ、大まかに言えばそんなところだな。お前の場合は、全ての属性の召喚獣を持ってるし、それを呼び出すだけの力があるから、属性のことは、まあ、ここでは置いとこう。残りの二つ。特に召喚中の無防備は避けたい。だから、それだ>
「...どういうこと?」
<さっき、俺は言っただろ?『それは異世界と直結している』って。つまり、呪文が無くても直接呼べるんだよ。名前を呼んだだけで、だ。あと、精神力の消費も随分抑えられる>
「あー、やっぱりゼロじゃないんだね...」
<当たり前だ。術者と召喚獣はギブ&テイクだ。術者の精神力で、召喚獣がこちらの世界で動けるんだからな。それ以上贅沢を言うな>
呆れたようにリョクが答える。
「はーい。じゃあ、呼んでもいい?」
<俺の上でか?>
「そ。じゃあ、『ガルーダ』!」
そう叫びながら沙羅は鏡を掲げる。
すると鏡が光り、ガルーダの姿が現れた。
ガルーダは空で応戦している飛翔や雷の邪魔をしないように敵をなぎ倒していく。
<本当にやりやがった...>
「うん。さすが、ガルーダね。風の規模が段違いだわ」
<無視かよ...>
そうこう言っている内に、沙羅たちは激戦区になっている街の中心部までやってきた。
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