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父の指示により、沙羅は牢に入れられていた。
「お父さまの、バカ...」
「そう、陛下を悪く言わないでください」
いつの間にか牢の前に立っていた近衛隊長が優しい声でそう言った。
「陛下は、沙羅様が行方不明になってからの毎日、本当に心を痛めておられたのですよ。あの方は本当に大切に思う方を、昔、亡くされておられましから、余計に心配だったのでしょうね」
その『大切に思う方』が誰だか分かった沙羅は俯いた。
昔は良くその人の話を聞いた。愛しそうに寂しそうに目を細めて何度も何度も話してもらった。
「でも、今回の陛下には賛同しかねますので...」
そう言って近衛隊長はポケットから鍵を取り出して軽く振る。
「え、でも、あなたは...」
「ええ、陛下に忠誠を誓ってますよ。でもね、正しくないことにまで従うことを『忠誠』とは言わないんじゃないですか?諫めても聞いてもらえないなら、止める方法を考えないと。
で、止められそうも無いから、自分の賛同する方法のお手伝いをする。それが、国の、陛下の為だと思っていますからね」
そう言いながら鍵を開け、そして
「姫。その格好では少々動きにくいのでは?」
といつも着ている服を渡す。
「入り口でお待ちしております」
と言って去っていった。
沙羅はドレスを脱ぎ捨て、服を着替える。
重いドレスから身軽な服装になる。
「よし!」
気合を入れて入り口まで走った。
「では、ご武運をお祈りしております」
「ありがとう。いつも本当に...」
そう言って沙羅が走り始めたが、それを近衛隊長が呼び止めた。
「姫。貴女の場合、あちらに向かわれた方がよろしいのでは?」
そう言って指した先は庭だった。
しかし、沙羅は笑顔で
「言われてみれば、そうね。本当に何から何までありがとう。...たぶん、魔族が来るから、気をつけて。わたしの仲間も手を貸してくれるけど...」
「承知いたしました。国と陛下は我々の誇りにかけてお守り致します」
「ありがとう!」
そう言って沙羅は庭に向かって走り始めた。
それぞれ案内された部屋で大人しく過ごしていた。
「さて、この場合はどうしたらいいんだ...?」
夜になって炎狼の部屋のガラスがコツン、と鳴る。
ベランダに出てみると、目の前まで木が生い茂っていた。
「何だよ、これ...」
そう呟いて炎狼が外を覗き込むと木に攫われた。
「うあ!?」
「静かにして!」
驚いて声を漏らすとその木に隠れ居ていたらしい沙羅が炎狼の口を押さえながら睨んだ。
「わり。皆は?」
「全員居るわよ」
そう言った沙羅の視線を辿ると皆の姿が見える。
「で?これからどこに行くんだ?」
「試練を受けに。着いて来て」
そう言って沙羅が木から降り、皆もそれに続く。
皆を乗せていた木は何故か枝も小さくなり、昼間見たとおりの木の形になっていた。
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