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肩で息をしながら、よろよろとしながら沙羅は立ち上がった。
「...やる気になったのね?」
母の言葉に応えず、沙羅は召喚を始める。
「汝、氷の女王。汝の凍てつく瞳を以ってしてかの者の全てのときを止めろ。フラウ!!」
「汝、地の覇王。汝、破壊王。我を害する者を地の底へと誘え。ザハード!!」
凍気に覆われた冴えるような美しい女性の姿をした召喚獣を沙羅が召喚し、母が召喚したのは、巨人だった。
フラウが手をスッと上げ、人差し指を母に向けると無数の氷の矢がそのまままっすぐ飛んでいく。
それを迎え撃ったのは母の召喚したザハードで、地面を殴りつけて地を裂き、その破片が飛んでくる氷に当たり、相殺された。
このままで終わらせるわけにはいかない。
自分の持っている召喚獣はすべて母から譲り受けたもの。母が戻ってきたら彼らが母に従うのは、道理だと思う。
しかし、だからと言ってこのまま諦めるわけにはいかない。
「汝、風の誉(ほまれ)。汝は黒き疾風。」
沙羅が、最後の召喚獣を召喚しようとしたとき、
「我が前に立ちはだかる者を切り裂け。ガルーダ!!」
自分よりも早く呪文を終えた母が召喚を終える。
鷲の顔と爪、赤い翼を持った白顔で金色に輝く人間の姿をした者が空を飛んでいる。空中でピタリと止まり、沙羅に目掛けてつむじ風を起こす。それは段々大きく育ちながら沙羅に近づいていった。
最後の召喚獣を呼び出され、沙羅はそれを防ぐことができない。
沙羅は目を瞑り、背中を向けた。
その直後、沙羅はガルーダのものとは違う風で飛ばされ、直撃を免れた。
自分のいたところを見ると、
「シルフ!」
風の精霊がぼろぼろになってぐったりとしている。
沙羅は走り寄り、そっとシルフを抱える。
「どうして...ねえ、目を開けて。お願い」
沙羅の呼びかけにシルフはうっすらと目を開け、にこりと微笑んで消えた。
「召喚獣と違って精霊はたくさんいるわ。貴女が呼び出している精霊はいつも同じ子じゃないでしょ?大丈夫、自然に帰っただけよ。また力がつけば具現化するわ」
精霊が消えたことに涙を流して悲しむ沙羅に母がそう声をかけた。
「分かってる!でも、あの子は...」
そう言って涙を流し続ける。
「...そろそろ終わりにしましょうか」
そう言って、母が沙羅に向かって手をかざし、
「バルログ」
と声を掛けて攻撃を促した。
バルログがそれに応えて腕を上げ、沙羅に向かって沙羅に向かって振り下ろす寸前、沙羅の前に小さな陰が現れた。
「ウンディーネ?!やめて、逃げて!!」
水の精霊のウンディーネは前を見据えたまま首を横に振り、沙羅の願いを拒絶した。
クラーケンとは比べ物にならないくらいの小さな水をバルログに向けて放つ。
そのか弱い水はバルログの炎に何の影響も与えず勢いが衰えないままその炎は沙羅に、ウンディーネに向かって走ってくる。
炎を受けると思ったとき、沙羅は突然突き飛ばされた。
振り返ると、ウンディーネとそして、土の精霊のノームが倒れている。
そして、自分を守るように炎の精霊のサラマンダーと、光の精霊ルミエールが現れる。
「お願い、やめて。皆逃げて。召喚獣にあなたたちが勝てるはず無いじゃない。お願いだから...」
沙羅がそう言っても精霊たちは応えずただ沙羅の盾になるよう、じっとしていた。
「フラウ」
母に名を呼ばれてフラウは頷き、手を上げて沙羅に人差し指を向ける。
とっさに沙羅は目の前の精霊たちを抱え込み、氷の矢に背を向けて精霊たちを守る。
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