地の章 第10話





「悪い、オレちょっと教会の様子見てきていいか?」

皆が了承したので大地は教会へ走る。

窓ガラスが割れていることはあったが、他に被害はなさそうだ。

大地は安堵の息を吐く。

「大地兄ちゃん。」

子供たちが大地を見つけて寄ってきた。

「お前たち、全員無事か?」

「うん。でも...」

と言いよどむ。大地は走って教会の中に入った。

「大地?!」

神父が近づいてきた。足を引きずっているようだ。

「どうしたんだよ、足。」

「ああ、これはなんでもないよ。丁度電球を替えているときに襲撃があって脚立から落ちてしまったんだよ。それよりも、お前は大丈夫か?先ほどの魔族たちはそのエンブレムと何か関係あるのか?」

そう指摘された大地は思わず自分の持っているそれを手で覆い、隠す。

「何で...」

「こう見えても、私は神父だよ。それは神気を放っている。...お前もそうだったんだ。」

「オレ、も?」

「そう。お前をこの教会の前で初めて見た時、私は驚いたよ。初めて見る大きさの神気だったからね。ここへお連れした皆さんも神の使いなんだろ?」

「一応、そんなとこらしいけど。...オレさ、さっき仲間を傷つけたんだ。そいつと近しい奴は気にするなって言うんだけど、オレが気づくのがもっと早かったら、とかって思うと後悔みたいなのしかないんだ。」

「そうか。大地、人は間違ったり後悔しながら成長する生き物だから、お前もこの先たくさん辛いことや悲しいことに直面するだろう。でも、お前は一人じゃないんだ。一緒に闘う仲間が居るんだろ?お前を心配しながら帰りを待つものもいる。だから逃げずに闘ってみなさい。逃げたら成長しないけど、戦って足掻いたその先にはきっと何かがあるはずだよ。そして疲れたら、いつでもここへ戻ってきなさい。ここはいつでもお前が帰ってくるのを待っている。私はね、思うんだ。お前のような優しい子にならこの世界を託せるよ。がんばっておいで。」

そのあと少し話をして大地は家に帰った。


「ただいま。」

家に帰ってドアを開ける。

「ああ、早かったな。神父様たちはどうだった?」

「ああ、無事だった。電球変えてると急に奴らが来たから脚立から落ちて足くじいたみたいだけどな。それ、どうしたんだ?」

大地が『それ』と言った物は氷が手にしている氷(こおり)だった。

「これは俺が作ったんだ。炎狼の傷が熱を持っているから冷した方が気持ちいいと思ったから。」

「作った、て...」

「水の能力者は水を操れるのは勿論だが、空気中の水分を集めたり、水を凍らせて氷(こおり)を作ることが出来るんだ。」

大地は「ふうん」と曖昧に返事をした。

氷に続いて大地も炎狼がいる部屋へ向かった。


丁度目を覚ましたらしく、炎狼が虚ろな目で開いたドアを見る。

「ああ、目が覚めたか。どうだ、具合は?」

氷が炎狼に声を掛けながら氷(こおり)をそばにいる飛翔に渡す。

「あー、あつい...。大地...。」

「...炎狼。」

「ごめん。」「すまない。」

二人が同時に謝った。

「「は?」」

二人はお互いの言葉に混乱する。お互いが先ほどのことは自分が悪いと考えていたのだ。

飛翔が溜息を吐いて、

「炎狼、ここまで迷惑を掛けたんだ。話すのが道理だと思うが?」

「ああ、そのつもりだ。雷と沙羅呼んできてくれないか?」

炎狼に頼まれた飛翔は部屋を出て行った。

「『話す』って、何をだ?」

「まあ、皆が集まるのを待ってくれ。そしたら話すから。」


皆が部屋に集まった。

「おれが、エデンでこの炎の勇者の役を引き受けたのには理由があるんだ。おれの幼馴染というか、乳姉弟の『爛』が時の国の奴らに連れて行かれたんだ。おれは彼女を守りたかったのに、それが叶わなかった。でも、エデンで天の大神が言っていただろ?『連れて行ったやつらは殺さないだろう、能力者なら尚更だ』って。だからおれは炎の勇者の役目を引き受けた。あいつを助けるために力が必要だったから。そして、爛はさっきおれの前に現れた。...敵として。ごめんな、大地。考えるより先に体が動いていたんだ。お前を傷つけるつもりはなかった。」

「...そうか、炎狼気にするな。オレも、お前の気持ち、分かるから。オレも話しておいたほうがいいかもしれないな。炎狼には話したけど、オレには『砂輝』っていう妹がいるんだ。皆も聞いた名前だろ?オレの妹も能力者で、時の国の奴らと戦ったときいなくなったんだ。炎狼、あの時は言わなかったけど、砂輝は本当に生きていたんだ。炎狼の幼馴染と同じで、敵として。炎の国でお前と戦ったチビがいただろ?あれが、砂輝だ。お前の竜、えっとホムラだったか?あいつを呼び出したとき覆面の布が破けただろ。あの時、顔が見えた。間違いなく、砂輝だった。認めたくなくて、考えないようにしていたんだけどな。オレが地の勇者になったのはやっぱり炎狼と同じだ。助けたいと、思ってる...」

大地が辛そうに話す。

「助ければいいだろ。」

沈黙の中、飛翔がこともなげに溜息混じりに言った。

「明日、あっさては無理でもきっと大丈夫だろ。爛さんの様子を覚えているか?彼女、炎狼の名前を口にしただろ?きっと洗脳されているだけなんだ。心から従っていないのなら、まだいくらでも取り戻す可能性はある。大地も炎狼のように動いていいと思う。でも、今回の炎狼のような重症は覚悟してくれよ?炎狼も何を難しく考えているんだ?いつも『やってダメなら考える』って言っているじゃないか。」

皆は飛翔をぽかんと見ていたが、炎狼が突然笑い始めた。

「だよな、助ければいいんだよ。難しく考える前にやってみることだよな。結構本能で動いた方がうまくいく事だってあるしな。でも、『考えるな』って飛翔が言うとは思わなかった。いっつも『考えが足りない』とかって言うのにな。」

「...お前は深く考え出すと必ず溝に嵌るんだよ。ただし、私たちも全力で応戦する。それだけは覚えていてくれ。手を抜いて何とかできるような人たちじゃなさそうだからな。こっちがやられたらそれこそ本末転倒だ。」

「「わかってる。」」

2人は決意に満ちた目をしてそう答えた。










桜風
05.6.26


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