地の章 最終話





翌日、大地は不本意そうに軍へ向かう。

「大地、教会に挨拶に行かなくてもいいのか?」

氷が聞いてみると

「...いいよ。なんかそういうの苦手だし。」

という返事をする。それを聞いた炎狼が

「親不孝者。」

と呟いた。その言葉を黙殺して大地はそのまま軍に足を運んだ。


皆は案内されてひとつの部屋に入った。

昨日の戦闘のおかげで謁見の間は使い物にならないらしい。

その部屋に入った途端、皆の口から感嘆の溜息が漏れる。

その中で炎狼が、

「この絵に似たの、おれの国にもあるぜ。飛翔も見たことあるだろ?」

飛翔は無言で頷いた。

「そうですか。それは何代か前の七勇の勇姿を描いたものです。」

不意に声がして皆が振り返ると国王と総司令が立っていた。

大地が敬礼をして皆もそれに倣おうとしたとき、国王がそれを制して頭を下げた。

「皆さん、昨日はどうもありがとうございました。」

大地をはじめ、皆はこの国王の態度に戸惑った。

「七勇のことは我が国でも伝説になっています。そして、『王族たるもの神の使いには従え。』と言われ続けてきました。つまり、七勇のあなた方を立てろということです。これは王族の義務となっているのです。少なくとも、我が国は。」

イマイチ状況が把握できなかった大地は曖昧に納得した。

しかし、絶対に忘れてはいけないことを思い出し、慌てた。

「では、私の願いを申し上げてもよろしいということでしょうか?」

「勿論です。」

「それでは。この先、私が戻るまで戦闘は防戦に徹してください。『絶対にこちらから戦いに赴かない』、そう約束をしてください。炎の国は既にそういうことになっております。敵は人以外のものに絞らなければ結局奴らに力を与えることに繋がるのです。」

「心得ました。約束いたしましょう。」

その言葉を聞いて大地は安堵した。


大地たちはそのままステーションに向かった。

「...なんで居るんだよ。」

大地が呆然と呟いた。

目の前には大地の育ての親である神父がいた。

「総司令が招いてくださったのだよ。どうせ挨拶無しで出て行くつもりなのだろうからって。図星だったね?」

大地はばつが悪そうに視線を逸らす。

「挨拶しとけって。」

炎狼に背中を押されて大地は仕方なく神父の前に立った。

「あー、えっと。行ってきます。」

「ああ、いってらっしゃい。気をつけるんだよ。...大地は私の自慢の息子だ、忘れてはいけないよ?」

二番隊の隊員とも挨拶をする。

「ちょっと隊長、もしかしなくても自分が代わりにこれまとめるんですか?」

涙目で基が訴えてくる。

隊員たちの性格を把握しているだけに気の毒に思うが、だからこそ、まともな部類に属ずる基以外に任せられないのも事実だ。

隊長となると他の隊とのコミュニケーションをとる必要もある。せめて常識が通じる人でなくてはならないのだ。

「お前以外には任せられないんだ。諦めてくれ。」

そう無理矢理諭し、他のメンバーとの挨拶を済ませて大地たちは船に乗り込む。

最後を歩いていた大地がふと振り返り、神父に向かって

「じゃあ、行ってくるから。体に気をつけろよ...父さん。」

と言って足早に船に乗っていった。大地は後ろからでも分かるくらい耳が真っ赤だった。

「大地はいつもあなたを父と慕っていましたよ。ただ、照れくさかったみたいです。良かったですね、神父様。」

総司令に声を掛けられて神父は嬉しそうに微笑んだ。



(行っておいで。お前はいつもザズ様のご加護があるんだから。私たちはいつでもお前が帰ってくるのを待っているよ。)

神父は船が出て行く様子をモニタで見ながら息子の無事を願い、そう思っていた。











桜風
05.7.24


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