地の章 第2話
「警告する、ここから先は地の国の領域となる。あなた方の所属する国と認識番号を述べなさい。こちらの命令に応じない場合は法に従い自衛権を発動します。」
地の領域に入ったらしく、女性の声で通信が入った。
大地はモニタの回路を開き、
「よお、久し振り。...だよな。オレは地の軍二番隊隊長、大地だ。えーと、この船の所属する国、及び認識番号はよく分からない。というか、たぶん存在しない。悪いんだけど、ゲート開けてくれるか、五番隊隊長殿...」
目を泳がせながら話していた大地に向かって、五番隊隊長と言われたその女性はわなわなと震えている。
「ちょっと今までどこに行ってたのよ?!皆で心配してたんだから。非番の人は遺跡まで態々あんた探しに行ったのよ。...あんたまでいなくなって、もう帰ってこないんじゃないかって思ったじゃない。第一、あんたがいなくなって基(もとい)は凄く大変だったんだからね!!ちょっと聞いてるの?!どこに行っていたか吐くまでゲートは開けませんからね!!」
彼女は殆ど息継ぎ無しで怒鳴った。
彼女の後ろから男性二人がモニタに近づいてきた。
一人は半泣き状態で、もう一人はこめかみに青筋を立てている。
大地は苦い顔をして明後日を見るような遠い目をした。
半泣きの彼がモニタに顔を近づけ、
「大地さーん。隊長、酷いっスよ。いきなりいなくなるなんて。自分は突然隊長の代わりに隊をまとめなくちゃいけなくなったんですよ?!あの、奇人変人の集まりと言われている二番隊を!!大地さん以外には無理っす、あの集団をまとめるのは。もう二度とごめんですからね、いなくならないでくださいよ。でも無事で良かったー。砂輝(さき)ちゃんみたいに連れて行かれたかと思ってたスよ。」
一通り言ってすっきりしたのか、彼はモニタから離れて大地に敬礼をして、一緒に来たもう一人にも敬礼をして去って行った。
次に青筋を立てた男性がモニタの前に立ち、(引きつっているが)満面の笑みを向けてきた。
大地は青くなり、まるで蛇に睨まれた蛙状態だった。
「大地、久し振りだな。元気にしているようだな。基は良くやってくれたよ。隊長のお前が無断で姿を晦ませている間、お前の代わりに隊をまとめてな。苦労していたぞ。
さて、ここからが本題だ。お前はどこへ、何をしに行っていた?私や、国王陛下に無断で...
お前が王族の方たちにどんな感情を抱いているかは私も知っている。だが、軍に所属している以上、そういう自分の感情で行動をするな。さて、私の質問に答えろ。...ん?後ろに誰かいるのか?」
大地は少しの間沈黙し、モニタの男性を見据えて口を開いた。
「たとえ、総司令のご命令であっても、今、このような公の場で口にすることは出来ません。自分が今までどこにいて、そして何をしていたかは、国王陛下の御前で申し上げます。できれば、総司令もご同席ください。また、後ろの者たちのご説明もそのとき一緒にいたします。ですから、入国許可ならびに、このものたちへの滞在許可をいただきたく存じます。」
モニタの向こうは俄かに騒然とした。
総司令と呼ばれたその人は暫し考え、溜息を吐いて口を開く。
「許可しよう。国王陛下に謁見を申し込んでくる。大地、お前は軍服に着替えておけ。他の人は...まあ、いいだろ。そのままで結構。千里(ちさと)ゲートを開けてやれ。では、後でな。大地。」
大地は敬礼をして彼を見送った。
地の国のゲートが開き、飛翔は船をそこへ向かわせた。
「大地って軍人さんだったんだ。しかも隊長?凄いね...。―――凄いの?」
沙羅が感心して口を開く。
大地は目線だけを沙羅の方に遣り、返事はしなかった。かなり汗をかいている。相当緊張したらしい。
地の国の軍のステーションに入った船を降りると大勢の軍人が待っていた。
あのモニタで見た基も居る。
「大地さん、お帰りなさい。」「簡単にくたばるとは思っていませんでしたけど...」
などと口々に言って大地を迎える彼らは二番隊の人間なのだろう。
「お帰り。で?後ろの人達はどのような扱いにしたらいいのかしら?」
通信で見た五番隊の隊長、千里も来ていた。
大地は一度振り返り、炎狼たちを見て
「えっと、こいつらはオレの仲間だから客人扱いかな?オレんちに泊めるから。紹介は後でな?とりあえず着替えてくる。そうだな、謁見の間の前の廊下まで案内してやっていてくれ。頼んだな、千里。」
と言って走っていった。
二番隊の面々は、残された炎狼たちに興味津々だったが、千里に怒られて元の持ち場に戻っていった。
「私は地の軍五番隊隊長の千里。大地とは幼馴染ってやつよ、よろしく。こっちよ、付いてきて。」
言われるままに炎狼たちは千里の後を付いて行った。
ステーションを抜け、廊下や階段などを十分くらい歩いた先に謁見の間はあった。
部屋の前に人影がある。
大地に総司令と呼ばれていた人だ。彼はこちらに気付き、声を掛けてきた。
「大地はまだのようだな。私は軍の総司令官、垓(がい)という者だ。君たちは大地と共にあの船に乗っていた人だな。大地が世話になった。」
五人は出身国名を省いて自己紹介をした。垓も別に尋ねてこなかった。
少しして、大地が軍服に着替えてやってきて垓に敬礼をする。
垓は大地たちを率いて謁見の間へ入っていった。千里は敬礼をしながらそれを見送った。
桜風
05.2.27
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