地の章 第4話





建物を出るとき、大地は皆にマントを渡した。

「それ被れよ。外暑いから。」

「暑いのにこれ被るの?」

沙羅が疑問を口にした。

「肌出してると帰るまでに火傷するぞ。そのくらい暑いんだ。」

大地に言われ皆はマントを被り、外へ出た。

外は太陽が射すような眩しい光を放ちながら輝いている。

皆は尚も沈黙したままだった。


先頭を行く大地が振り返り、

「ワリ、ちょっと家帰る前に寄りたいところがあるんだ。」

そう言って町外れの方角へ向かった。

暫く歩いていると教会らしき建物が見えてきた。大地がその建物を指差し、そのまま歩いて行く。

建物で日陰になっているところでは子供たちが元気に遊んでいた。

一人がこちらに気付き、教会に入って行く。

暫くして教会から一人の老神父が出てきた。

大地はその神父を目にすると駆け出す。皆もそれに続いた。

「久し振り。この前は約束してたのに来れなくて悪かったな。ちょっと急用が出来て留守にしてたんだよ。えっと、皆元気にしてた?神父も、子供たちも。」

神父は優しい笑顔で大地を見つめて「元気だよ。」と答えていた。

その様子を少し離れて見ていた炎狼たちは、子供たちに囲まれる。

「なぁ、あんたたち大地兄ちゃんの友達?」「俺、おっきくなったら大地兄ちゃんみたいに強くなってこの教会を守るんだぜ!」

など口々に言う。

そんな子供たちの様子を見た大地がゆっくり歩きながら、

「おい、あんまり兄ちゃんの仲間困らせるなよ。今日は急いでいたから土産がないんだ、悪いな。今度来るときはちゃんと何か持ってきてやるよ。」

「わーい。ねぇ、兄ちゃん。遊んでよ。」

「あー?じゃあ、少しだけな。お前ら疲れただろ、少し中で休んでろよ。」

炎狼たちにそう言った大地は子供たちに手を引かれていった。

「皆さん、どうぞ中に入ってお休みください。」

神父にも促された炎狼たちはそれに従い教会の中に入っていった。


教会の中は薄暗く、涼しくて気持ちが良かった。

少し水分を補給した後、

「皆さんには大地がお世話になりました。親代わりの者としてお礼を言います。」

と神父が礼を言った。

「大地はね、本当はとてもいい子なんですよ。軍に入ったのもこれ以上戦災孤児を増やしたくないからだとか。本人から聞いたわけではないのですがね?
それに、給料の半分はこの教会へ寄付してくれていルカら、あの子供たちを養うことが出来るんです。裏に井戸があるんですが、あれも大地が少しずつ掘っていってくれた物なんです。能力者だからこつこつやらなくても出来るのに、能力を一切使わなくて。
理由を聞いたら『そんな特別な物を持ってなくたってできることなんだから、皆でできることは皆でやったほうがいい。そのほうが喜びも増えるだろう?』と。

あの子は十四年前にここに来たんです。私が外に出ると良く寝ていた男の子とまだ乳飲み子だったその子の妹がいたんです。手紙が置いてあって名前が書いてありました。『大地』と『砂輝』と。『ザズ様のご加護がありますように』とも書いてありました。
この国は国王の政治に不満を持つレジスタンスが各地で暴動を起こしているんです。そしてそれから避難する途中、子供たちを連れて行けなくなった親は子供を教会に預けて逃げていくんです。他に預ける場所がありませんから。
私はね、大地もですが、あの子たちの父親になれたことを幸運に思っているんですよ。生活が多少苦しくてもあの子達の笑顔を見ることが出来ればそれで十分幸せなんです。
ただ...大地だけは、私のことを『父』と呼んでくれなくてね。少し寂しい気はするのですが。でも、これは贅沢な悩みですよね。ああ、少し話しすぎましたか。退屈だったでしょう?」

炎狼たちは首を横に振った。

「神父様、何故俺達にそのようなお話をなさったのですか?」

いつもは口数の少ない氷が尋ねた。

神父は目を細めて微笑み、

「何故でしょうね。何となく、あなた方は大地にとってかけがえのない宝となる気がしたんです。そうですね、神のお導きということにしておいてください。」

と言った。

「おい、そろそろ行こうぜ。」

大地が教会の入り口から声を掛けてきた。

皆は神父に頭を下げて出口に向かい、神父も見送るためにそれに続いた。

「大地。お前が来れなかった間、千里さんが良く顔を出してくれたよ。お礼を言っておいてくれないか?」

「千里が?分かった、言っとく。あ、あと、また当分顔を出せなくなるんだ。ごめんな?」

神父は優しく微笑み、頷いた。

教会を後にした皆はそのまま大地の家に向かう。

途中、大通りで果物や干し肉などの夕飯の材料と水を買った。











桜風
05.3.27


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