地の章 第5話





大地の家は町から少し離れたところにあった。他の家と同様に石造りで二階建てのシンプルな印象を与える建物だった。

家の中も概観と同様にシンプルで飾りっ気がない。

「シンプルだね。でも、思ったよりも綺麗に整頓されてるね。...ところで、部屋はどうするの?」

家に入って中を見渡しながら沙羅が聞いてみる。

「そうだな。部屋は四つに食堂だが...」

「私は炎狼と相部屋で構わないが...」

皆は少し沈黙をする。

先ほど結構派手な喧嘩をしていた相手と同室で良いと言う飛翔に驚いた。

炎狼に目を向けると、

「おれもそれで構わねぇよ。」

という返事があった。

「じゃあ、飛翔と炎狼が同室。で、あとの三人はそれぞれ一部屋使ってくれ。オレは食堂で寝るから。」

「いいのか?俺はおまえと相部屋で構わないが。まぁ、俺もお前もお互い体が大きいから少し狭いかもしれないが。」

「いや、どうせベッドはひとつだから。飛翔、お前たちの部屋もベッドはひとつだぞ。」

「ああ、いいよ。おれが床で寝るから。」


夕飯は大地が作ったがひそかに不評だった。

この国の独特な香辛料の香りにクセがあり、好き嫌いがハッキリしたのだ。

ちなみに、『好き』と言った者はなく、炎狼と雷と沙羅はかなりおかしい顔をしながら食べていた。

食事が済んだ後、一息ついた頃大地が皆に言った。

「なあ、今思ったんだけどさ。俺がいない間お前らどうするんだ?メシとか、メシとか、メシとか...。昼間の教会に行くか?あぁ、でもあそこはもう手狭だよな。別にこの家を自由に使ってもらって構わないけど、勝手が分からないだろ?」

「食事は俺がたぶん作れると思う。さっきのなら。」

「「「え?!」」」

炎狼、雷、沙羅がかなり嫌そうな顔をしていた。よほど苦手な香りだったらしい。

「お前らなぁ...」

大地が呆れているとドアをノックする音が聞こえてきた。

「はい?」

大地が返事をすると、ドアが開いて昼間会った千里が入ってきた。

「鍵が開いていから勝手に入らせてもらったわよ。大地、明日からの飛翔さんの軍の中での監視は二番隊が任務に就くことになったわ。遺跡には総司令がご同行なさるから。」

「おい、ちょっと待てよ。何でオレの二番隊が国王(アイツ)の道楽に付き合って飛翔の監視の任務に就くんだよ。総司令だって...。オレを信用してないってのか?!」

大地は憤り、千里の胸倉を掴んだ。

千里は大地の剣幕に押されて驚いているようだった。

「おい、大地。やめろよ。千里さんは悪くない。悪いのは後先考えずに馬鹿な約束した飛翔だ。今のお前がやってることは八つ当たりだろ?!」

炎狼が大地の腕を押さえて止めた。

手を離した大地は「悪い」と呟いて千里から手を離した。

手を離された千里は少しむせたが服装を正し、大地に向かって口を開いた。

「聞いて、大地。これは飛翔さんを守る為でもあるの。こう言っては何だけど、あの陛下がただ律儀に約束を守るとも思えない。だから、あなたを絶対的に信頼していて陛下にも強硬な手を使わせることができない二番隊に監視についてもらうの。あなたの隊、性格にはかなり難があるけど実力は一番隊以上の人達が集まっているでしょ?監視というのはただの名目。どちらかと言えば飛翔さんを陛下の暴挙から守る護衛といったところかしらね。総司令も同じ。あの人は道理に合わないことを良しとしないし、物事の優先順位を理解なさっているわ。自分の栄誉のために飛翔さんを売るような真似はしない。総司令のことも、二番隊のことも陛下から文書で承認をいただいているから、あなたは約束のことだけを考えて。...ごめんね、不快な思いをさせるつもりはなかったんだけど。じゃあ、私は帰るね。」

千里は一瞬寂しそうな表情をしたが、笑顔を向けてドアに手を掛けた。

「千里、悪いんだがひとつ頼まれてくれないか?」

大地に呼び止められて千里は振り向き、「いいけど...」と答える。

「あのな、オレがいない間、こいつらの面倒を見てくれないか?家においてくれって言っているんじゃない。要は、メシのことっつうか、生活全般なんだけど。こいつら今日ここに来たばっかりで慣れてないだろ?色々と不都合なことがあるだろうから、頼んでいいか?」

「うん、大丈夫。心配しないで。私に任せなさい。」

千里は笑顔を浮かべて自分の胸を軽くぽんっと叩いた。

千里が帰っていったあと、皆は明日に備えてそれぞれ部屋に帰っていった。













桜風
05.4.10


ブラウザバックでお戻りください