地の章 第6話





夜が更けて辺りは静寂の闇に包まれていた。

「眠らないのか?...本当に寒いな。」

外へ出て風景を眺めていた大地の背から声がした。

「炎狼か。お前こそ眠らないのか?」

炎狼は大地の隣に腰を下ろした。

少し言葉を捜した炎狼はゆっくりと口を開く。

「なあ、昼間は飛翔が悪かったな。なんか余計なプレッシャーかけたんじゃないか?あいつは、なんていうか...合理的なことを優先する性質で気持ちよりも事実を優先する癖があるんだ。普段はあそこまでじゃないんだけど、今はなんか焦ってるみたいなんだ。
―――あのさ、答えたくなかったらいいんだけど、『砂輝』ってお前の妹の名前なんだろ?なんか、軍の奴...えっと基だっけ?あの人が言ってたけど、どうしたんだ?」

「......。」

「あ、いや。言いたくないんだったら良いんだ。この国に来て名前は聞くけど、姿見ねぇから気になっただけだし。...明日は早いからもう寝ないとな。じゃあな。」

炎狼は慌てて立ち上がり家の中に入ろうとドアに手を掛けた。

「砂輝は、時の国の奴らの奇襲にあったとき、連れて行かれた。砂輝もオレと同じ能力者だったし体術の心得もあったからまだ軍に入ってなかったけど参戦したんだ。奴らが引いた後、砂輝の姿は無かった。国中探したけど死体が見つからなかったから連れて行かれたんだってオレは思ってる。もうどこかで、時の国で死んでるって言う奴らも居るけど、砂輝は、生きてると思う。あいつはそこらの十四歳のガキじゃない。このオレが体術を教え込んだ地の能力者なんだ。簡単には死なない。」

それを黙って聞いていた炎狼は大地に背を向けたまま呟いた。

「大切な物って、そばに在るときは分からないのに、失くして初めてその大きさが分かるよな。」

そう言って炎狼はドアを開けて家の中へ入っていった。

ドアが閉まった後、大地は俯き、目を瞑って「そうだな」と一言呟いた。


翌日、夜明け前に総司令と千里、二番隊の面々が大地の家にやってきた。

「隊長、お仲間のことは自分たちに任せてください。絶対に守って見せます。だから必ず帰ってきてくださいよ。約束ですよ。」

昨日の基とかいう青年が代表して激励する。

「ああ、大丈夫だ。ちょっと留守にするからな、頼んだぜ、お前ら。」

そんな大地の言葉に「オォー!」と手を上げて皆が答える。

(―――軍隊と言うより、山賊とかそんな感じ?)

雷はぼんやりそんなことを思っていた。

飛翔が基の前に出てきて

「私が今回お世話になります飛翔と申します。宜しくお願い致します。」

と深々と頭を下げた。慌てても基をはじめ、二番隊の隊員も軽く頭を下げる。

「では、そろそろ行こう。時間が勿体無い。」

総司令がそう言った。

「皆さん、気をつけて。」

千里の言葉にそれぞれが手を上げて答え、出発して行った。


「―――総司令殿は高いところは平気ですか?」

町から少し離れたところで飛翔が口を開く。

「おそらく平気とは思うが...。どうした?」

「では飛んで行きましょう。その方が速い。皆、少し目を瞑って息を止めて。」

そう言った飛翔が風を呼んで皆を空に連れて行き、気流に乗った。

総司令は目を丸くして驚き、大地は気分悪そうに下を見ないようにしていた。

あっという間に遺跡に着いた。


「えーと、台座みたいな物はないのかな?」

キョロキョロと周囲を見渡しながら沙羅が呟く。

「こうも砂が多いと難しいな。もしかして埋まってるんじゃないか?」

「これから発掘作業ってこと?」

嫌そうな顔をしながら、雷が溜息を吐いていると、

「あったぞ、たぶんコレだろ。」

と、氷が遺跡の入り口の前で上を見上げながら声を掛けてきた。

皆がわらわらと集まり、それぞれが見上げる。

確かにある。それに間違いはないだろう。だが、

「届かないんですケド...?」

六人の中で一番背が低い沙羅が膨れる。

「飛翔の風は?」

雷が聞いてみると炎狼が、

「そりゃ、いいけどさ。ここ屋根があるだろ?砂が逃げずにそのまま砂被るぞ?」

と嫌そうな声を出す。それを聞いた雷と沙羅は顔を顰めるが、

「それ以外方法が無いんだ、諦めろ。」

と大地に諭されてしまう。

「じゃあ、覚悟はいいか?」

そう言って飛翔が再び風を呼び、皆の体が砂と共に浮かぶ。

紋章の順に並びそれぞれ嵌める。黒いエンブレムは今回も既に嵌まっていた。

どこかで地響きが聞こえる。

「封印解けたんじゃねえか?」

地面に降りた炎狼はそう言って遺跡の入り口に手を入れようとしたが、ゴッと言う音がして中に入らない。それを見た大地が炎狼と同じことをするが、大地の手はすんなり中に入った。

「...だな。じゃあ、必ず三日後の正午までには帰ってくるからな。行ってくる。」

そう言って遺跡の中に足を進めていく大地の背が見えなくなるまで皆は見送った。












桜風
05.4.24


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