地の章 第7話





大地はそのまま、まっすぐに歩いていった。少しすると部屋があり、行き止まりになっていた。

「あ?炎狼は延々歩いた先にやっと部屋があったって言ってたのに、ここはもう行き止まりか?」

部屋の中を見渡すと、自分のエンブレムと同じ紋章が描いてあるブロックがあった。

あからさまに怪しいが、動かないことには始まらない。三日後の正午までに戻る約束をしている。

(こういうのってブロックを押すと近くの壁が崩れて横穴が出来るんだよな。)

そう思いながらそれを押すと足元が崩れた。

「下かよ!?セオリーは守れよな!!...ちッ。」

落下しながら毒づいたあと神経を集中する。まっすぐだった穴に突起を作り、それに手を掛ける。

大地、地の能力者の力は地形の変化である。砂を岩に、そして岩の形も変えられる。勿論それは力が強いほど規模の大きいものも変化できる。

今大地のやったことは滑らかだった竪穴に凸凹を作ったのだ。

安堵の息を吐いて、そのままフリークライミングの要領で逆に降りていく。

どれくらいの距離かは分からないが、二時間くらい降り続けると地面が見えてきた。やっと横穴に出られる。

地に足をつけると横穴に明かりが灯った。

「どうなってるんだよ、コレ。酸素不足だけは勘弁してくれよ?」

大地は文句を言いながら足を進めた。

警戒しながら数時間歩いたが、何も起こらない。不審に思いつつもそのまま一本道を歩いていると地鳴りがした。

嫌な予感がして振り返ると、何故か大きな球状の岩が勢いよく転がってきた。下り坂でもないのに止まるどころかスピードが上がっているように見える。

「何でこういうお約束はあるんだよ!」

大地は走りながら叫ぶが、当然のことながら答える者は誰も居ない。

止まってあの岩を変化させようかとも考えたが、あれだけ勢いのある大体積のもので失敗したらシャレにならない。

走っていると前方が二股に分かれていた。

大地は片方の道に入る寸前で地形変化を行い、もう一方の道に岩が転がるように壁を作った。

岩はその一方の道に入った途端、ゴンッと音がした。

そちらを覗くと落とし穴があってその中は巨大な剣山になっていた。あのままあちらに入っていたら穴だらけになるところだった。

そして、まだ入っていない道の覗いてみると、そこには落とし穴はなく、一見何もない。しかし上を見上げると、やはり剣山の吊り天井になっており、こちらも穴だらけとなるところだった。

「やっぱりな、行きたくないと思ったんだよ。」

そう言って大地は元来た道を戻っていった。

走っていたときには気付かなかったがひとつだけ道がささくれ立っていた。さっきの球はこれに気付かせないためでもあったらしい。

そのまま警戒しながら歩いていく。


やっと開けたところへ出た。

その間の道のりは矢が飛んできたり、槍が飛び出したりと遺跡とラップのお約束を全て受けたのではないかと思うほどの大量のトラップと距離だった。


そして、最後の難関。

「―――どうやって行けと?」

そこには部屋の真ん中にのみ地面があり、入り口からそこまでの道がない絶壁となっていた。

いや、道はあるのだろうが見えないのでないと同じことだ。

そして、部屋の中央のそのまた中央に台座があり、何か光っている。

手がないことはない。しかし、自信がない。自分の体内時計で考えるとここへ入って一日以上経っている。持ってきた水筒の水ももうない。

来るときは飛翔の風だったが、帰りは歩きになる。町までは半日はかかるからもう時間がない。

「どの道、生きるか死ぬか、だ。」

大地は腹を括り、全神経を集中させる。

ゆっくりと天井を砂に変えていく。天井が崩れないように加減をしながら。

作るか崩すかのどちらかなら楽なのだが、両方一緒にというのはかなりの精神力が必要となる。

見えない床を探し出すため、うっすらと砂を広げていく。

現れた道は直接入り口に続いているものではなく、一度大またで溝を越えなければならない造りだった。

しかもその道は細く、大地の足の幅ぎりぎりだった。

落ちて言った砂をまた元に戻すのは時間と気力が必要となるため、大地はそれをやめて今ある壁の強度を高めて道に足を伸ばす。二、三歩歩くと今度はその道が崩れはじめた。慌てて走る。

しかし、真ん中の地に着く前に足元が崩れた。

「くそっ!」

何とかそれを蹴って縁に手を掛け、体を乗せて這い上がる。

もう精神的にも肉体的にも限界だった。ズルズルと体を引きずりながら中央の台の物に手を掛けて、気絶した。

―――ふうん。ま、いいだろ。ちゃんとこれも手にしたしな。
   合格だ。

   貴様は...胸の中央にエンブレムを当ててこう念じろ。

   『地の強さ、我が魂に。』

   ...リク、いるんだろ?

―――まあ、一応ね。ザズ様、今度はこの人?

―――ああ、こいつだ。よろしくしてやれ。

―――気が向いたら、ね。

―――お前はいつもそう言いながら気が向くからな。

   大地、目が覚めたらすぐにリクを呼んだほうがいいぜ?

   もう時間がない。

   地上までは送ってやるよ、サービスだ。

―――今言っても覚えてないんじゃないの?

―――なら、お前が声掛けてやれ。

―――気が向いたらね。


意識が沈む中そんな声が聞こえた気がした。












桜風
05.5.8


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