地の章 第8話
目が覚めたときにはあの遺跡の入り口だった。 意識を失う寸前のあの言葉を思い出す。 「えっと、エンブレムを胸の中央に当てて、『地の強さ、我が魂に。』?」 一瞬にして服装が変わり、力が湧いてくる。炎狼とは違うデザインの自分の服を見ながら 「こんなトコロ凝ってどうするんだよ。」 と呟いた。 神器のことを考えると、両手に手甲とグローブのような物が同化した物が両腕に装着された。金属製なのだろうが軽い。利き手の方には爪もついていてそれは出し入れできるようになっている。大地の得意な体術に合っている。 感心していると頭に声が響く。 <オレっちはリク。あんた、今回の地の勇者だろ?でもさ、急いだ方がいいと思うんだけど?あと少しで約束の時間になっちゃうんだよね。アンタの仲間殺されちゃうよ。 オレっちに乗って帰ってギリギリってところかな?まあ、力を貸してあげないこともないけど...。でも、オレっち七神竜の中では一番飛ぶの遅いからな、そこは文句を言わないでくれよ。『地竜、リク』って呼び出してみな。> (...微妙にムカつく言い方する奴だな。) そう思いながら大地は外の広いところまで行って、 「地竜、リク!」 と叫んだ。 体が勝手に動き、地の拳を打ちつけていた。時空が裂けたように地が割れ、巨大な竜が現れた。炎狼のときは距離があった事もあってはっきりとした大きさは分からなかったが、こうも大きいとは思っていなかった。 呆れて見上げていると、 <乗らないの?時間ないって言ってるんだけど、意味分かってる?> と頭に響く声でリクが話しかけてきた。 大地は我に返り、跳んでみる。かなりの高さのリクの背に一度で乗ることができた。身体能力も桁違いに上がるらしい。 <じゃあ、行くから。落ちないように気をつけてよね。> 翼を動かすと砂煙というか、砂嵐のように砂が舞う。 行きに飛翔が連れてきたのより速く感じた。 「速いじゃないか、お前。飛翔の風よりも速いと思うぜ?」 <『お前』じゃなくて、リク!...飛翔って風の勇者だろ?あの人が手加減してたんだよ。皆も一緒だったし、誰かさんが高所恐怖症だったから気を遣ったんじゃないの?> (悪かったな。普通の人間は飛べないんだよ!) <あの人が独りで飛んだらもっと速いはずだね。空で風に勝てるのいないから。でも、一番速いのは雷(かみなり)だよ。光だからね。> 「でも、空で風に勝てるやついないんだろ?」 <そう。だから、地上で。> わけが分からないと思ったが、考えても仕方がない。何より、早く町に着かなければならない。 大地はリクの邪魔にならないように口を噤んだ。 少し時間は遡って飛翔。 「後数時間で貴様も終わりだな。しっかり国を売って死んでいくんだな。」 嫌な笑いを浮かべて国王が去っていく。彼は態々こんな高い牢にまでやってきてこれを言いに来たのだ。 ここの高さは、眼下の家々が豆粒の大きさに見えるくらいのものだ。 (でも、風に乗れる風使いには大した高さじゃないんだけどな。) と飛翔は思っていた。実際飛翔にとってここは『高いところ』のうちに入らない。 エンブレムは戻ってきているのだから、大地が無事に神器を手に入れたことは分かっている。しかし、よく考えたら炎狼はその後三日ほど眠り続けた。下手したら大地もそうなっているのではないだろうか。 そんなことを考えていると、風に異変を感じ、悪寒が走る。 飛翔は牢の中の窓に跳び上がりそこの鉄格子を掴んで懸垂の要領で外の様子を窺う。 炎の国で見た魔物たちが町に向かって来ていた。 「町の人たちを避難させてください!」 見張りに立っている二番隊の二人に言う。二人は顔を見合わせて首を傾げ、飛翔を見る。飛翔は真剣な瞳をしていた。一人が近くの窓から外を見る。 「マズイ、何か変なのが来る。...時の国の奴らだ。」 町に火が上がる。 「ちっ。」 舌打ちをして飛翔が外の風を呼び、壁に穴を開ける。そこから飛び降りた飛翔は重力に任せて下降していき、謁見の間がある階の窓の前で止まる。 窓を蹴破って建物の中に入っていく。 (時に国の目的は判らないが、魔族は私たち人の負の感情が糧となっていると言っていた。それなら、国は滅ぼさずに自分の配下に置きたいと考えるはずだ。つまり、国を落とすに一番の近道は、頭を、国王を消すことだ。) 既にいくつかの魔物が進入して戦闘が行われていた。 一つずつ倒していくと埒が明かないと思った飛翔は 「伏せてください!」 と叫び、魔物たちの頭めがけてカマイタチを起こして倒していく。そのまま長い廊下を抜けて謁見の間の前の魔物も倒した。 「飛翔殿?!」 扉の前は総司令が守っていた。 「陛下は?」 「私も心配しているのだが、中から鍵を掛けられ...!!」 部屋の中から悲鳴が聞こえた。 飛翔は扉に向かって、 「扉のそばに誰かいるのでしたら逃げてください。こちらから開けます。」 と声を掛けて再びカマイタチを起こして扉を切り刻んだ。 謁見の間では国王が魔物に襲われるところだった。 飛翔は傍らの兵の銃を奪い、魔物の目をめがけて発砲した。 それは見事に命中して魔物はのた打ち回る。その隙に総司令と飛翔が国王の元へ駆け寄った。 「...貴様は。」 国王が飛翔の姿を見て呆然と声を出す。 「ええ、脱獄です。」 何事もなかったかのように飛翔がその単語を口にした。 怒り狂った魔物が飛翔たちに襲い掛かってきた。 が、途端にそれは燃える。 飛翔がその後ろを覗くと、 「一応、お前はまだここにいるんだろ?これ、返しとくぜ?」 とホムラに乗った炎狼が飛翔から預かっていた護身刀を投げて返す。 「大地が戻ってきたら一緒に魔物を遺跡とは逆の砂漠に追いやってくれ。沙羅に何かいい案があるらしい。おれは沙羅を乗せて先に行っておく。あ、一緒に雷と氷も拾ってくれ。町の中にいるから。じゃあ、後でな。」 そう言って炎狼が遠ざかって行った。 「あれは?」 総司令が口を開く。 「炎の勇者の炎狼です。あの竜とエンブレムの力は神器を手にしなければ解放されないことになっているようなんです。既に大地が神器を手に入れたから私たちの元にエンブレムは戻ってきているのです。」 襲い掛かってくる魔物を炎狼から返された護身刀で切りつけながら飛翔が説明した。 |
桜風
05.5.22
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