第2話





入隊式が執り行われ、今年の新人がそれぞれの隊に入隊した。

「おい」と声を掛けてきた人物に基は緊張を走らせる。

「は、はい!」

「二番隊隊長の大地だ。今年はお前だけだ。ついて来い」

そう言って彼はスタスタと歩き出す。

「わ、私だけですか?!」

「まあ、そうだな。お前だけだ。ウチの隊は年が近いのから離れてるのまでいるが、たぶん全員特に干渉してこないから安心してろ。あと、辞表はいつでも受け付けるから遠慮なく書いて来い」

未来明るい新人になんて事を言うのだろう...

心から不安になった。

そして、しばらく歩いていたが、中々目的地に着かないようだ。

「あ、あの...」

「何だ?」

「今、どちらに向かっているのですか?」

「二番隊の隊舎だ。遠いだろう」

笑いながら大地が言う。

「はい」と言っていいのか悪いのか、基はとりあえず口をつぐんだ。


「戻った。今年は、新人が1名だ」

「うわぁ、かわいそー!」

隊舎に入るなり大地が言うと隊舎内の者たちが口々に悲観的な言葉を口にする。

それを気にせずに大地は自分のデスクについた。

「初めまして」と基は声を掛けられてその人物を見た。

「坤(こん)」と名乗った彼に基は挨拶をする。基より10センチほど背が低いが年齢はどうやら彼の方が上のようだ。成人男性でその身長は少し低い方だと思う。

それに比べては失礼だが、二番隊隊長は背が高くて体格もいい。正直、「かっこいい」とかそういう褒め言葉が良く似合う人物に見える。

「坤、ひとまずお前が面倒見てくれ」

「特別手当は?」

「総司令官に言って来い」

「そんなことしたら、僕クビじゃん!」

笑いながら坤はそういう。

その言葉を受けて大地も喉の奥で笑った。


しばらくして会議だとか言って大地が出て行った。

「基は、ここを希望したの?」

「んなわけねぇ、って!お前くらいだよ」

傍にいた人がそう言って笑う。彼は凵iしゅん)と名乗った。

「まあ、そうかも...」と坤も笑う。

「で?実のところは?」

「いえ、特に。希望は聞かれましたが、それについては私も不勉強なところがありましたので答えられませんでした」

「へー。まあ、聞かれたからって中々希望なんていえないよね。どれが地雷かわかんないし。あ、そうそう。言い忘れてた。ここでは隊員同士はタメ口で。たぶん、基が最年少だろうけど。あと、隊長には適当に敬語ね?他の隊の隊長には、そこそこしっかり敬語ね??」

そこそこしっかり、って...

「それって、まずいでしょう?」

「普通はなー...ただウチの隊はトクベツなんだよ」

豪快に笑いながら凾ェ言う。

それからやっと隊内での自己紹介となった。

意外と少ない方なのかな、と思う。

「ところで、聞きにくいのですが...二番隊の仕事って何ですか?」

基の言葉に皆は顔を見合わせた。

「二番隊は、一番給料がいいところ」

そのひと言で全てを察した。

「ほ、ホントに?」

「うん、ホント。あと、遺跡調査とかもあるから。一番危険なのは二番隊」

「お前、ホントに何も知らずに入ったのか...あ、辞表の書き方は調べとけよ?」

何で入隊早々『辞表』という言葉を2回も聞かなければならないのだろう...

安易に決めた就職先に、基は既に後悔していた。


「碧さん」

会議が終わり、大地が六番隊隊長に声を掛ける。

「ああ、大地。どうですか、あの新人は」

苦笑しながら碧がいう。

「かわいそうなんですけど...」

やはりこちらも苦笑しながら言う。

「まあ、千里さんの推薦だったしね」

「千里?!あいつも酷いなぁ」

笑いながらそういう。言うほど思っていない証拠だ。

「そういえば、書類の方はどうですか?期限まであるのですが...」

少し申しわけなさそうに碧が言う。

「ああ、出来てます。もって行きますよ」

大地が言うと「申し訳ない」と碧は頭を下げた。

「神父殿はお元気ですか?」

「あー、まあ。最近オレが行けていないから様子は妹から聞いてるだけなんですけどね」

「特にここ数ヶ月お忙しかったですからね、二番隊は」

頷きながら碧が言う。今全員が揃っているのもある意味奇跡だ。

「しかし、あの方こそ、これに相応しいのに...」

そう言って碧は自分の服をちょこんとつまんだ。

「あの人の柄じゃないですよ。宮仕えなんて」

「それは、キミもでしょう?」

碧はそう言って笑い、自分の隊舎へと戻っていった。


「...どうしたんだ、お前ら」

呆れた口調で大地が言った。

「どうしたんだ」といったが何が起こったかは何となくわかる。何せ、部屋の中に三番隊の隊員たちがいたからだ。

「こいつらがやってきて...」

「ふん、二番隊の奴らは俺たちに文句は言えないって知らないのか?」

「知らなかったな。とりあえず、この隊舎に入ったからにはこちらの流儀に従ってもらう」

そう言いながら大地は殺気を放つ。

「隊長が口を出すなんて、子供の喧嘩に親が出てくるようなものだな」

せせら笑って三番隊の隊員は言うが

「なんだ、やっぱりお前らガキだったんだな。だったらパパを呼んで来いよ。隊長殿を」

とニヤニヤしながら凾ェ返した。

その言葉に真っ赤になったが、ひとりが促して隊舎を後にした。

立ち去り際に基はそのうちのひとりにぶつかられ、思わずしりもちをついた。

そんな基を嘲笑しながら彼らは部屋を出て行った。

彼らが出て行くのを見送って大地は自分のデスクに向かいながら、「基、襟のところに盗聴器つけられてるぞ」と忠告をした。

慌てて坤が基の襟の裏を確認するとそれらしい小型チップが付けられている。

「さすが隊長!」

笑いながら坤が言う。

「それは捨てておけよ」という大地に「はーい」と返す坤は素直にその言葉に従う様子はなかった。

「基、坤。これを六番隊の隊長に渡してきてくれ。ついでに、基は坤に施設内を色々と案内してもらっておけ」

「六番隊隊長、ですか」

「面接にいた隊長たちの中で一番年嵩の人だ」

基は思い出す。何となく、だが他の隊長たちとは服が違った。

それについて聞こうと思ったが、坤が早々に部屋を出て行こうとしていることに気がついて「了解しました」と敬礼をして出て行った。

「ああ、ついでに資料室に行って資料を受け取ってきてくれ。あっちにはこちらから連絡しておくから」

部屋を出て行こうとした基に大地は慌ててそういうと部屋の外から「わかりましたー!」という返事が返ってきた。
「あいつ、どうだ?」

大地が基に絡んでいたらしい凾ノ問う。

「とりあえず、辞表の書き方を勉強しているうちに馴染んじゃうってタイプだと思うけどな」

「...そいつは、結構」

苦笑しながら大地はそう答えた。









桜風
09.12.6


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