第4話





しばらく歩くとやっと六番隊の隊舎に着いたらしい。

「しつれーしまーす」

と坤がドアを開けた。

全員が振り返る。

「ども!二番隊です。隊長の命令で書類をとどけにきましたー」

適当な敬礼をしてそういう。

基は慌てたが

「あー、すみませんねえ。お入りなさい」

と穏やかな声が返ってきた。

見ると、面接にいた人だ。

何だって『隊長室』というものがあるのにもかかわらずそこに引きこもらないのだろう...

隊員たちはやりにくくないのだろうか。

「これでいいんですね?」

坤が渡すと中身を確認して六番隊の隊長が「はい、ありがとう」と頭を下げた。

「少し休んでいきなさい。ちょうど、果物が手に入ったんですよ」

そういわれて「やり!」と手を上げたのは坤で、基は驚いて口をあんぐりあけた。

この国では「果物」というのは貴重で高価な食べ物だ。

中々口に出来ない。

みずみずしい上にあの甘さは天上の食べ物だと、基は思っている。

「基ぃー。僕が全部食べちゃうよー」

坤の言葉で我に返り、「失礼します!」と言って室内に足を踏み入れた。


「うわぁお。どーしたんスか?大量じゃないスか」

「お下がりですよ。国王陛下はザズ様への供え物のお下がりは口になさらないから、結局六番隊がいただけることになるんですよね」

そういいながら適当に果物を手にする。

そしてナイフを抜いて、とても危なっかしい手つきで六番隊隊長は皮を剥き始めた。

「あ、あの...!私が」

と見ていられなくなった基が手を出す。

「おや、助かります。こう見えて、不器用なんですよ」

特に意外性を感じないセリフを吐きながら六番隊隊長は基にナイフと果物を渡した。

スルスルと慣れた手つきで基が皮をむく。

「意外に器用なんだなぁ...」

唸るように坤が言うと

「家事手伝いが出来ないとぶん殴られますから」

と基が返す。

「貧民層はこれくらい出来て当然なところないですか?」

そう言って綺麗に剥かれた果物が皿に載ってやってきた。

「僕は一人だからそういう手間をかけたことないし、正直、果物を口にしたことがあるのは今までどれくらいあるか...」

そう言いながら坤は基の剥いた果物に手を伸ばす。

「まあ、家族が多いとお手伝いも大変でしょうしねぇ」

と言いながら六番隊隊長も手を伸ばした。

「あー、大地さん上手だもんねー」

もぐもぐと手も口も速く動かして既に皿の上には果物が後一切れ。

これだけは基が死守して自分の口に運んだ。

「隊長が?」

口に入れた果物を飲み込んだ基は先ほどの坤の言葉を聞き返す。

「うん。孤児院って子供がたくさんいるからね。しかも、次から次に弟妹が増えていく。年を重ねてお兄ちゃんになったらその面倒も見るし、神父さんもそこそこお年らしいから自ずと面倒見が良くなってくるし、手伝いは日常茶飯事。家事全般得意らしいよ。まあ、料理は大雑把らしいけど」

あの大地の姿からそれは想像できない。

「っていっても。普段は砂輝ちゃんが色々やってるみたいだけどね。まだ年齢制限に達してないから軍に入れないし。入ってくるのかな...?」

首を傾げて坤がいう。

「砂輝ちゃん?」

「二番隊隊長の、唯一血のつながった妹さんですよ。血がつながっていない家族ならたくさん居ますけどね」

微笑んで六番隊隊長が答える。

「妹さんがいたんですか」

「手を出したらぶっ飛ばされるぞー」

笑いながら坤が言い、

「砂輝さんに、ですけどね」

と六番隊隊長が付け足した。

「へ?!」

「大地さんが師匠だからね。強いみたい。何人か束になってかかって負けたとか、家に押し入った強盗を伸して軍に突き出して、しかもそれが賞金首で賞金貰ったけど、身内が軍人だからそれは取り上げられたとか。色々伝説持ってるよ」

楽しそうに坤は砂輝の伝説を語り始めた。

「それ、言いふらしたと知られたら砂輝さんにどつかれますよ」

「うわ、そうだった。基、内緒な?」

基は肩を落として「了解です」と返した。









桜風
10.1.3


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