第6話
| 八番隊の隊舎は二番隊のそれに比べてとても大きかった。 「おっきー...」 見上げて呟く基に坤が苦笑した。 「ここは、資料室も備えているから。この隊舎の半分以上は資料室なんだよ」 「八番隊は、何を所管しているんですか?」 「教育とか。あとは文化。遺跡に行く前はここで資料を借りて勉強してから行くんだ。伝承とか集めて時代背景とか色々な資料を見て対策をある程度練って出発。遺跡で発掘したものはまたこっちに持ってきて、研究。二番隊と八番隊は特に密接な協力関係にあるんだよ」 そう言いながら坤は足を進めて八番隊の隊舎へと向かう。 「対策、ですか?」 「そ、対策。一応遺跡にはなんだかんだで盗掘防止のためにいろんなトラップがあるし。その遺跡の年代からどういうトラップが仕掛けられているかある程度の見当をつけていくんだ。時代によって特徴のあるものとかあるからね」 そうだったのか... 「直接突っ込んでいくだけだと思った?」 「はい。行ってみて、トラップに突き当たったら考えるのかと...」 「そういう手法をとっていた歴代隊長はいるらしいけど。前の隊長からは先に十分研究してから、ってなったらしい。その方が成功率が上がるし、負傷者を出すことが少なくなる。 おーい、塔子(とうこ)さん!」 八番隊隊舎内の資料室入り口で坤が声を上げた。 「資料室内ではお静かに」 背後から声をかけられて基は驚いて振り返り、坤はのんびりと振り返った。 さらりと長い髪を下ろしためがねを掛けた女性が仁王立ちしている。元々派手めの顔なのか、化粧っ気はなさそうだ。 30代と聞いたが、もう少し若く見える。 そういえば、今の隊長たちはかなり若い層で、歴代で一番平均年齢が低いと先ほど果物をつまみながら碧が言っていた。 「サボり?一番隊隊長と言い。全く...」 「休憩、よ。というか、来るのが遅い!あ、それ何?あたしへの献上品??」 基が持っている袋を覗き込みながら彼女が言った。 「あ、いえ。これは...」 「六番隊隊長に貰ったんですよ、大地さんにって。で、資料は?しーりょーおー!」 両手を差し出して坤が資料を要求する。 「手続きを踏んでから!ったく、ホントにこの子は...」 溜息をつきながら彼女は資料室内のカウンターへと足を向けた。 カウンターでなにやら書類に書き込んでいる坤の手元を見ながら、基は次に来たときのための勉強をしていた。 そんな基の姿を彼女は目を細めて興味深そうに見ていた。 「塔子さん、いる?」 ひょい、と顔を覗かせて誰かが尋ねてきた。 というか、聞き覚えがある。 振り返ると記憶どおりの人物が立っていた。五番隊隊長だ。たぶん... 「あら?二番隊の...って、またなの?!」 そう言いながら彼女は資料室に入ってくる。 「そう。また。イイデショ?」 そう言って坤は嬉しそうに彼女を見上げてウィンクをした。 「あなたは良いでしょうね、坤。ま、いいわ。仕事だし。無事に帰っておいでなさいよ」 「まあ、一応そのつもり。ところで、もしかして五番隊隊長ともあろうお方がサボりですか?通信室は大丈夫??」 「部下が優秀なもので。塔子さん、これ。美味しいのよ」 そう言ってかわいらしい包みをめがねの女性に向けた。 つまり、この仁王立ちの人が塔子さん。 「まったく、ウチの隊長はホントにまじめだよね。こうして五番隊隊長と八番隊隊長までもがサボってるのに」 嘆くようにわざとらしく坤が口に出す。 「何言ってるの。大地がまじめだから、あんたたちが多少羽目を外せるんでしょ?感謝しておきなさい、大地に」 面白そうに笑いながらめがねの人が返した。 あ、そうだ。この人も見たことがあると思ったんだ... 基の視線を感じて塔子はめがねを外した。 そうそう、この顔。面接のときにも居た! 「何?今まで気づいていなかったの?!」 「塔子さん、めがねを掛けているときとそうでないとき、全然印象が違うもの」 笑いながら少しフォローするように彼女が言う。 そして、基を見た。 ドキリとして基は思わず『気をつけ』だ。 「二番隊、どう?って、初日じゃ全然わかんないわよね」 千里が問い、塔子は溜息を吐いた。 「ああ、そうそう。二番隊に行って失敗したなーって思ったらこの千里を恨みなさい。というか、辞めたくなったら辞表の書き方は千里に習いなさい。千里もそれくらいの面倒はみなさいよ」 またしても『辞表』... 「何を言うの、塔子さん。この子なら大丈夫よ、きっと。ね、649番さん?」 「なに、その死刑執行番号みたいなの」 坤が不吉なことを言う。 「受験番号。って、違ったかしら?」 「いえ、そのとおりです。私も、不吉な番号が3つも揃ってしまったと思いましたので覚えています」 たしかに、とその場にいた基以外の3人は思った。 |
桜風
10.1.31
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