第9話





「酒臭い。お前ら、一応考えて飲め」

翌朝、大地が顔を顰めてそういった。

顰められたメンバーの中に基もいる。

「だよねー。身の程をわきまえたまえ、皆の衆」

そういったのは坤。

ザルだった...

「坤、そっちの窓開けろ。これじゃ仕事にならん」

大地の指示を受けて坤は自分の傍の窓を開ける。

比喩ではあるものの這ってきた基は自分のデスクから離れることが出来ない。

「坤、凵B今良いか。あとの者たちは修練場で吐きながら走って来い」

大地に命じられて屍と化している隊員たちは死にそうな表情で廊下に出て行った。

「基も?」

出て行ったのを確認して坤がからかうように言う。

「当然だ。もうウチの隊員でオレの部下だ」

大地の言葉に坤と凾ヘ顔を見合わせて笑った。


「...なんで坤さんと凾ウんは」

吐きそうになりながらも大地の指示通り皆走る。

「次の任務で向かう遺跡の攻略についての打ち合わせだろう。打ち合わせというか、作戦会議って言うか...坤は元々遺跡に強いし、凾ヘこの隊の古参だからな。あとは、まあ...」

隣を走っている仲間が教えてくれた。最後濁した言葉が気にならなくもないが基は納得しかけた。

そうか...って、あれ?

凾謔閧熹Nかさの行っている隊員はいる。凾ヘどちらかといえば若い方じゃないのか??

「体力的なものがあるからウチの隊は結構出て行くのが早いんだ。で、あとは別の意味で居てもらう必要があるって言うか。ま、そのうち分かるだろ」

走っていると、休憩に入ったらしい三番隊の隊員が近付いてきた。

ちょっと今走っている二番隊隊員はその喧嘩を買うだけの気力がない。

やはり喧嘩を吹っかけてこれられた。

言われっぱなしも癪なのか誰かが返す。

またしても喧嘩腰..というか喧嘩目的の言葉の応酬が始まるがそれは長くない。

ザバーっと空から大量の水が降ってきた。

見上げると冷たい瞳で見下ろしている人物が居た。

「ああ、そっか。上は会議室だ。九番隊が使ってたのか」

三番隊の隊員たちは逃げるようにその場を去った。

そして我らが二番隊。水をかけられたことで結構すっきりした。

「三番隊は基本的にボンボンが多いから。こういうのには滅法弱いんだ」


「何だ何だ??」

戻ってきた隊員たちに凾ェ声を上げる。

「濡れネズミじゃん!って、どれだけ水を無駄に...」

「違う。砂埜ちゃんの怒りを買っただけ」

一番買ってほしくない人の怒りを買ったのか...

部下の言葉を聞いて大地はちょっと凹んだ。今度会ったら素直に謝っておこう。

「すぐにミーティング始めて良いか?」

大地に言われて皆は口々に了承の意を示した。


初めてのミーティングに基は緊張して臨んだ。

遺跡についての予想と説明は凾ゥら。攻略については坤から説明がある。

隊員たちはそれぞれ質問や提案を行った。

そして、配置の話になったところで「基はどうするんだ?」という質問が出た。

自分の名前が出てきて緊張がまた高まる。

「オレが面倒見る」

ずっと黙って聞いていた大地が答えた。

皆はそれを聞いて頷く。

そして、そのまま配置の話が進められた。

ミーティングが終了した後、大地が珍しく隊長室に入っていく。

「まあ、基。大地が面倒を見てくれるって言うなら一番安全だ。安心しろ」

「でも、自分本当に役に立たないと思うんですけど...」

「じゃあ、大人しく大地に面倒見てもらえ。あの人は自分以外の面倒を見ること出来るし。隊長だし」

軽く凾ノ言われて基は困惑した。

だって、遺跡の調査と言っても、安全を保障されたものではなく、最初に足を踏み入れるのが仕事ということはトラップとかたくさんあるだろう。

先ほどのミーティングでもその話はたくさん出ていた。

「ねえ、基」と坤が声をかける。

「あ、はい」と慌てて基は坤に向き直った。

「僕たちの中で一番給料が良いのって、誰か知ってる?」

「...大地さん。隊長、じゃないんですか?」

その言葉に坤は頷く。

「そう。大地さんって僕たちと年は変わらない。見たら分かると思うけど。それで、一番給料が良い。随分年かさの人も居るのにもかかわらず。意味分かる?」

基は首を傾げた。

「働け、ってこと。実際、大地さんはちゃんと部下の面倒を見てるよ。あの人が隊長になってから隊員が怪我で軍を去ったことはないんだ。って言っても日は浅いけどね」

笑って最後に一言余計につける。

「レジスタンスとの戦闘でも?」

恐る恐る基が聞く。

「もちろん。ああ、でも。普段から僕たちはこう見えて体は鍛えてる。イザというときは自分が何とかしなくちゃだから。大地さんに頼って、それが叶わないときは自分が何とかしなくちゃ。僕たちもちゃんと給料貰ってるんだし」

「まあ、何事も経験。行ってみなきゃ今後もずっと何も出来ないままだ。お荷物は、さすがにこの隊には要らない。大地が良いと言っても、俺たちがいやだ。死にたくないからな」

凾フ言葉が胸に突き刺さった。

『お荷物』

現時点で自分は間違いなくそれだ...










桜風
10.2.21


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