第10話
| 遺跡へ出立する日の朝。 早い時間だというのに、千里と塔子、央圻と垓、聖坡が見送りに来ていた。 「毎回、見送ってもらうたびに思うんだけど」と坤が言う。 「何?感謝しても仕切れない?なみだがちょちょ切れる?」 「僕、死にに行くような気がするんだよなー」と軽く返す。 キッと塔子がにらみ、同じく見送りに来ている砂輝に気を配る様子を見せた。 「いいのぉ...わしも行きたい」 「留守番、お願いします」 駄々をこね始めた聖坡に大地がすかさず釘を刺す。 「往復の時間も含めて20日くらいで戻れると思うから」と砂輝に声を掛けると「はいはい」と彼女は肩を竦めて答えた。 「ま、砂輝ちゃんの心配はしなくても大丈夫よ。あっちの方もね」 そういったのは千里で「悪いな」と大地は軽く頭を下げる。 「では」と言って皆は敬礼をする。 砂輝を除いて彼らは全員返礼をした。 5日ほどで目的の遺跡に着いた。 「遠いですね」 「近いのからどんどん確認してきてたからな。最近はあまり新しいのは見つからない、ってのが通説だったんだが...」 ここ半年で3箇所。 何かあるのかもしれない、と大地は何となく感じた。 「では、早速」 とうきうきとした足取りで中に入ろうとした坤の首根っこを掴んで「こっちのキャンプの準備をしてからだ」と凾ェ止める。 坤は不機嫌を露にしたが、それと同時にキャンプを張る準備を人一倍頑張った。 早く遺跡の中に入ろうと思ったら、キャンプを張るのをとっとと済ませなければならない。 確認事項を済ませてやっと遺跡の中に進入することとなった。 先頭は、絶対に彼が譲らないから坤。 まあ、彼はこのために軍に入ったのだから仕方ない。もちろん、キャリアがあるから色々と勘が鋭いので先頭にもってこいでもある。 その後ろは凵B これは遺跡の発掘に向かうときには必ずこの順だ。 大地は一番後ろ。しんがりだ。 今回は大地の前に基となっている。大地の目の届く範囲、手の届く範囲に居た方がフォローしやすいという理由だ。 他に、隊員6名の計10名だ。 あまり多く入ると色々と面倒だから、という理由だ。 面倒というのは、自分の身を守るのと仲間の身を守るの、その両方をしなくてはならないというのがある。 だから、人数は少ないに越したことはない。 ずっと暗くて狭い道を歩く。 休むことを殆どしない。 ああ、だからかと基は納得した。 経験を重ねている年嵩の人たちはキャンプに残っている。無線を持って行っているので、連絡を取れるが確実に連絡が取れるとは思わない。 連絡が取れる間は相談をすることもあるのだろう。彼らは経験者としてキャンプからアドバイスをするのだ。 凾ェ最古参でも、人生経験などを考慮したら他の年嵩の隊員の意見だって聞きたいはずだ。 ずっと暗い中、こちらの持ってきたランタンのみで進んでいるので時間感覚がどうもおかしい。 「どれくらい、中に居たんでしょうか」 ポツリと基が言う。 自分の声はもちろん、それ以外の声はここに入ってから殆ど聞かない。必要ないことを口にすることをしないのだ。 「まだ1日も経ってない」と背後の大地が言う。 まだ1日も経っていない?! 基は驚いて大地を振り返った。 「本当ですか?!」 「ああ、距離にしたらそうなる。もしかしたら1日経ったばかりかもしれないが...」 距離?! 基は目を丸くして大地を見る。 「進め」と命じられて基は慌てて足を進める。 「どうやって距離を測っているのですか?」 「基、黙れ」 前の方から凾フ声が聞こえる。 「あとで教えてやるから。今は静かに進め」 この閉鎖空間の中でここまでピリピリした空気が漂っていると落ち着かない。 それでも、隊長が静かにしろというのだから静かにする以外ない。 「大地!」 前の方で凾ェ叫んだ。 久しぶりに聞いた人の声に基はビクリとした。 「走れ!」と大地は声を張り、その場に足を止めた。 「大地さん?!」 基も足を止めようとしたが、前に居た隊員に腕をつかまれ、殆ど引きずられるかのようにその道をひた走った。 暫く走って、少し開けたところに出た。 そこには坤と凾煖盾ス。 「なんで、突然」 「トラップの作動があった。坤が気づいた」 「え!?じゃあ、大地さんは?!!」 そう言って基が振り返る。 「あの人なら、大丈夫だ」 自分の腕をひいて走ってくれた隊員が請け負う。 しかし、でも... そう思っていると、 ザッザと砂を踏む音が近付いてきた。 皆が構えると「皆、無事か?」と声をかけてきた人物が居た。 「大地さん!?」 基は彼に駆け寄ろうとして、それは仲間たちに制された。 「凵vと誰かが彼の名前を呼ぶ。 凾ヘ首を少し傾げてコキリと首の骨を鳴らして大地の前に立った。 「何で...」と基が呆然とすると「ありゃ大地さんじゃないってコト」と坤が言う。 坤の言う大地ではない何かの前に立った凾ヘ構えた。 目の前で繰り広げられる肉弾戦。 凾ェ捕まえた途端、それは砂に変わる。 「あ、あれ?」 「昔の呪術師が作った何か、なんだよ」 苦笑して坤が言う。 「呪..術?」 「御伽噺ではなくて、こういう古い遺跡には時々あるんだ。これに触れられるのは、能力者。もちろん、能力者以外でも触れるけど、その呪術を破ることが出来ないんだ」 坤が説明する。 「え、じゃあ...」 「初めて見るのか?凾ヘ能力者だよ」 「そんでもって、俺以上に強い能力者は、大地だよ。俺、今まで能力者色々見てきたけど、あいつ以上の能力者は見たことない」 暫く待っているとザッザと砂を踏む音が近付いてきた。 「皆、無事か?」 そういったあと、大地は祈りの言葉を口にした。 この国の誰でも知っている初歩の祈りの言葉。大地を待っていた彼らも口々にそれを返す。 「どうでした?」 「形を元に戻すのが面倒だったんだ...また居たのか」 近くにある小さな砂の山を見て大地は苦笑した。 今度は何故大地を大地だと判断できたのだろうか、と基は首を傾げる。 「祈りの言葉だ」と凾ェ言う。 「呪術で作られたあいつらは絶対に『祈りの言葉』は口に出来ない。何をどうやってもな。だから、はぐれたときには祈りの言葉を口にする。それが、本人である証にしているんだ。少なくとも、呪術で作られた何かではない証明になっている」 そうなのか、と納得して遅ればせながら基もその言葉を口にした。 大地たちは苦笑し、「じゃあ、先を急ごう」と大地が促した。 アレが出たということはもう少し、という目安にもあるそうだ。 それを聞いて、基は少し元気が出た。 |
桜風
10.3.7
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