第11話





遺跡の発掘が終わり、中にあったいくつかの財宝をサンプルとして持ち出し、すぐに王都に戻った。

しかしその翌日は、基は出勤できなかった。

遺跡の中に居た時間は短かった。だが、中にいた時間とは比べ物にならないくらい精神力を消耗していたらしい。

もちろん、初めての遺跡潜入で緊張もあっただろう。

だが、それだけではなかったのだ。きっと。

だから、一緒に遺跡に入った彼らが翌日もけろりとして出勤してきていたと聞いて、改めて自分の不甲斐なさに落ち込んだ。

「最初はそんなもんだ」

凾ェそう言ってくれたが、結局それは慰めだ。


遺跡から持って帰ったサンプルは八番隊が早速検証に入った。


そんな中、塔子が数日不在にするという情報を耳にした。

「今日は塔子さんお休みなんだってぇ〜」

出勤してきた坤がいう。

「ああ、四大貴族会議があるからな」

大地が頷く。

「あの、四大貴族会議って...」

何か、本当に自分は物を知らないな、と反省しつつも基は大地に問う。

「貴族の中でも建国の時代から王を補けていた存在のことだ。東西南北。この王都を中心として国をそのように分ける。それぞれを四大貴族が治めて、その四大貴族が普通貴族を認めるって言うのが貴族の仕組みらしい。垓さんは北、央圻さんが東で、塔子さんが西だ。南は、昔は軍に居たんだが、今は中央政治に関わっていないらしい」

大地がそう説明すると「塔子さん?!」と基は声を上げて驚く。

「ああ、あの人も家督を継いでいるから現当主だ」

そうは見えない、と基の顔に書いてある。

「四大貴族会議って何するの?」

「さあ?」

「色々だよ」

別の声がした。

「総司令が留守の間は総司令代理でお忙しいのではありませんか?」

呆れた表情を浮かべて大地が声をかけた。

聖坡が来ていた。

「老い先短い年寄りには優しくしろ。全く...あ、コーヒーひとつ」

人差し指を立ててそういう聖坡にこれでもかと溜息を吐いて見せて大地が動く。

「あ、自分が」と声をかけた基を制して大地は給湯室へと向かった。

「大地のコーヒーが飲みたいんだよ」

茶目っ気たっぷりな笑顔で聖坡が言う。

大地もきっとそれを知っているから、そのまま自分でコーヒーを淹れに行ったんだ。不思議な関係だな、と思った。
「で、副指令。『色々』って?」

「だから、色々。貴族は貴族の中での規律があるのは知ってるか?まあ、貴族の法だな」

基と坤は首を振る。

「縁がないもん」という坤に「だよなぁ」と聖坡は笑う。

「副指令は...」

「北の領土を分けていただいている。垓の傘下の貴族だよ。と、言っても。あの子はまだ家督を継ぐ気はないらしい。最近可愛いご息女が誕生しているんだけどねぇ」

「え?!子持ち??」

「見えません...」

「写真を持ち歩いていらっしゃるぞ。頼めば見せていただけるんじゃないのか?」

戻ってきた大地が聖坡にコーヒーをだしながらそう言った。

「まあ、あの子も貴族の責務を果たしたことになるから安心だろう」

聖坡の言葉に「そうですね」と大地が応える

「貴族の、責務?」

坤が聖坡を見ながら言葉を繰り返した。

「貴族は、楽が出来るだけじゃないんだぞ。ワシみたいな下っ端貴族ならそこまで大変じゃないが、四大貴族はかなりの責務を背負っているし、垓のところなんか、貴族の王と言われている、貴族の天辺だ。最も重い責務を背負っている」

「例えば?」

「家を絶対に絶やしてはいけない。まあ、『血を』っていわれないだけ少しは楽かもしれないが...ただし、家を絶やすことを禁止されているから、もし、子が望めないと分かったらすぐに養子を迎えなければならない。それでも、養子を迎える前には他の三大貴族の承認が必要になる。あと、養子はひとりだけ。たしか、四大貴族は子供はひとりだけと決まっていたはずだなぁ...」

「...それ以上生まれたら?双子とか」

敬語を忘れて基が問う。

「昔は、殺していたらしい。捨てても恨んで家をつぶしに来るかもしれないから、と。ただ、今は他家の領地内の孤児院に預けるそうだな。二度と会えない」

「双子の場合、どっちを選ぶんだろ...」

坤がポツリと呟いた。

「より多く泣いている方だそうだ。体力があるということだからな。体が丈夫な方が良い」

「そんな...!」

基が声を上げた。

「まあ、オレたちには関係のない話だ」

「そうだねぇ。ところで、この間の遺跡の話を聞きたくてここにやってきたんだが...いつから話し始めてくれるのかな?」

聖坡が大地を見上げて言う。

「報告書は提出しました。ごらんになっていただけたと思います。現在、八番隊が分析、研究を行っているはずです」

大地がそういうと「ん〜、いけず」としなる。

いい年こいたオッサンがしなると結構見るに耐えないところがある。

皆は視線をさっと逸らした。









桜風
10.3.21


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