第14話





修練場では大地の怒声が響く。

既にヨロヨロのヘトヘトの部下たちに向かって叱咤を飛ばす。

「あー、ムリ。あの人の体力、バケモノ並み」

修練場の隅に避難して坤が呟く。

「てか、すげーな」

同じく避難した凾ェ苦笑しながら修練場の真ん中に視線を向けて呟いた。

もう立つのがやっとだという風体なのに、それでも大地に挑んでいる仲間、基に感心しているのだ。

彼は彼なりに出来ることを頑張っているようだ。

最も若いのだから体力だけでも、といったところなのだろう。

なんとも涙ぐましい、全く正直者の性格を全身で現している。他の隊員たちは、既に死んだフリを決め込んでいた。

だから、大地は基に稽古をつけている。

隊長が新人をいじめているようにも見えるが、それはそれでまあ、構わない。

「ま、まだまだぁ...」

既に息の量のほうが多い、まったく叫び声には程遠い蚊の鳴く声の音声で基が叫んで大地に向かっていく。

「お終いだ」と大地は苦笑してデコピンをした。

痛恨。

デコピンでそのまま倒れた基は「くそぉ」と呟いて意識を手放した。

「おい、サボリ2人組。基を七番隊に連れて行ってくれ」

避難していたのはバレていた様で、坤と凾ヘ顔を見合わせて「よっこいしょ」と立ち上がり、基を運んだ。


「おはよう」

目を覚ますと知らない天井だった。

ゆっくり体を起こすとミシミシと何か音がした。

「ちょっと目を...」と言われて目を覗き込まれた。知らない人だ。誰だろう...

「よし、いいね。隊舎に戻りなさい」

「あ、あの。此処は...」

「七番隊の隊舎。戻り方、分かる?」

聞かれて少し不安だが頷いた。

空き時間に庁舎全体の地図を眺めて早く覚えられるように努めていたのだ。なので、もし迷子になったら恥を忍んで誰かに聞いてみたらいい。

「気をつけて。あと、隊長に伝言頼めるかな?」

言われて基は頷いた。

「あまり、部下をいじめないように」

基はグッと詰まった。それはつまり、自分の不甲斐なさを指摘されたのと同じ意味を持つ。

「...わかりました」

かろうじて了承の返事を口にする。

その様子を見て、彼は笑った。


そして、それからも何回かその部屋で基は目を覚ます。

「全く、懲りないんだねぇ...」

「私の出来ることって少ないんです。頭はあまり良くないし、能力者でもない。だったら、何が出来るか。体力で勝負をするしかないって思って」

基の言葉に彼は笑った。

「隊長が隊長なら、部下も部下だ。あ、これは褒めているんだ。勤勉だって」

少し気分を害した基だったが、たぶん、本当に褒めているつもりなのだと思ってその怒りは収めた。

「でも、段々君の隊長も手加減をしなくなってきたみたいだよ。上達している証拠だ。...けど、あまり怪我をしないように。仕事が増えてしまう」

「...死なない程度に鍛錬してもらいます」


しかし、こうして何度も七番隊で目を覚ましていたお陰で七番隊の隊員とはある程度仲良くなった。

廊下ですれ違うと挨拶を交わしたり、他愛のない会話に花を咲かせたり。

少し、ここが..この地の国の軍という組織が自分の居場所のような気がした。

ちょっと前までは何だかまだお客さんといった感じがしたのに...



1週間後、二番隊は揃って隊舎を出た。三番隊と共に...










桜風
10.4.29


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