第17話





「失礼します」

ノックをして誰かが二番隊隊舎に入ってきた。

誰だろう、と基は不思議そうに眺めた。

二番隊というところは殆ど訪問者がない。副指令が遊びに来るか三番隊が喧嘩を売りにくるくらいだ。

嫌われているのかと思ったが、特に用事がないから、という分かりやすいシンプルな理由らしい。

何より、隊舎が敷地の端っこだから遠いのがこれまた人の足を遠ざけている理由ではないかと基は推測している。

「隊長殿は?」

「奥の隊長室だけど?」

面白そうな表情で坤が答える。

「お呼びいただけますか」

「やっぱり、三番隊の能力者合わせても崩れなかった?」

分かっていたのか、と彼はその表情で語る。

基は隊長室のドアをノックした。

「何だ?」

「隊長に御用があると仰る方が...坤さん、楽しんでますよ?」

その一言で誰が来たか何となく察した大地は溜息をついて出てきた。

大地を呼びに来た彼は大地の姿を目にして敬礼をして自己紹介をし、大地もそれに応えて返礼した。

「口を割らないか?」

「いえ。岩の呪縛を解きたいのです」

「...行こう」

「恐れ入ります」

彼は大地を先導して部屋を後にした。

「四番隊って..法令関係でしたよね?」

彼は四番隊を名乗った。

「そう。レジスタンスって言ってもすぐに処刑とかにはならない。色々罪状を調べてそれに見合う罰を科す。まあ、うん。形だけでもってことだったらしいけど、今の隊長になって形だけじゃなくなったらしいよ。かーなーり審理に時間を掛けてるんだって」

坤が答える。

「でも、岩の中に閉じ込めている方が暴れられないし...」

「だから、審理がしにくいんだろう。まとめてひとつにしたからな」

苦笑しながら凾ェ答える。


「大雑把」

「悪いな。性格だ」

四番隊の隊舎に入った途端、岳に文句を言われた。

「雄碁が意気揚々とアレを持って帰ったのを見て二番隊がどうかしたのかと思ったぞ?」

呆れた表情で「千里は蒼褪めてたし」と付け加えられて大地は視線を逸らす。

彼女が心配してくれていたのは知っていた。

自分が任務で家を空けるときには大抵彼女は砂輝のために泊まりこんでくれている。

日付が変わって真夜中に帰ると千里は泣きそうな表情で「ばか!」と怒鳴った。

「ただいま」というと「知らない!」と客間に戻っていった。

悪いことをしたなぁ、とそのとき反省はした。

「しかし、あれで今回の全部なんだろう?」

「そのはずだ。現場での取りこぼしはない。少なくとも、一応あいつらの根城に使われていると噂になっていたところも確認した。そこでの生活の様子から考えてアレが人数的に最大数だろう」


岩を保管している空間、即ち牢獄には雄碁が居た。

大地を見てキッと睨む。

「お前たち、早くしろ!!」

自分の部下たちを叱咤している。能力者の3人。

彼らは蒼褪めて泣きそうな表情を浮かべていた。

岳曰く。

意気揚々とこれをもって帰った雄碁にこの岩を解くように依頼をした。

すると、彼は自隊の能力者を呼び出してこの岩を砂に変えるように命じたのだ。

しかし、待てど暮らせどそれは砂にならない。

では、誰がこれを岩にしたのかと聞くと、この者たちだといって譲らないのだ。

どうしても三番隊の、自分の手柄にしたいという空気がひしひしと伝わった。

その場に同席していた総司令が大地を呼び出すように命じ、そして今に至るとのことだ。

「雄碁、その者たちを連れて隊舎に戻れ」

垓が言う。

「いえ、司令。お待ちください。この者たちは今日は..その...そう!この岩を作ったので能力が消耗したのです。そうだろう、お前たち!!」

「下がれ、と言っている。ひとつ言おう。お前の報告はどうも矛盾というか..穴がある。自分では気づいていないようだがな」

「気づいてたらそもそもあんな報告できないでしょう...」と大地の隣で岳が呟いていた。

「大地」と垓が促した。

すでに雄碁はこの場に居ないものとみなしての言葉だ。

「はい」と返事をした大地はその岩を砂に変える。

束縛を解かれたレジスタンスたちは手に持ったままの銃を構えたが、それは火を噴くことはできなかった。

まず、その銃はまだ岩にくるまれていた。

逃亡を試みたものは皆、地面に倒れる。足元には岩の枷が着いている。

「こんなんで良いか?」

大地は岳に向かって言う。

「最初からこういう感じで作ってもらいたいもんですねー」

「まとめた方が連行しやすいんだよ」

大地の返答に深い溜息をついて「手間をかけさせたな」と岳は声をかけ、部下たちに指示を行う。

「報告書、今日中にあげて来い」

垓の言葉に「はっ」と敬礼をして大地は牢獄を後にした。

残された雄碁は奥歯を強く噛み、役に立たなかった部下たちを殴った。

「やめておけ。能力者としての特性を知らなかったお前が悪い」

垓は雄碁をそう言って止めて、牢獄を後にする。

憎しみに駆られた眸で雄碁は垓の背中を睨みつけていた。









桜風
10.5.16


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