第24話
| 塋仁が王都にすぐに戻らず、南の臣王の元へと向かった理由が臣王の倉庫と食糧庫の開放を依頼するためだった。 王の性格は、何となく想像できた。正直、あまり器の大きな人ではない。隊長として何度か王に謁見して話をしたことがある。他隊でもそういう機会は何度かあったみたいだが、彼らと話をしてもそういった印象を受けているようで自分は的外れではないのだと何となく安心したこともある。 だから、王都で何かあったら保身を一番に考えるのではないかと思った。 そうなると、民の命が蔑ろにされてしまう。それは福祉を所管している自分としては看過できない。 だから、先に手を打った。 最初南の臣王は全ての食糧を王都にと言ってくれたが、それはそれでまずいと思った。 この南の領地だってそのバケモノとかいうのに襲われることがあるかもしれない。だから、余力は残しておいてもらわないと。 だから、北の臣王のところにも一緒に赴いた。彼の意見を聞きたかった。 彼は塋仁の意見に賛成だった。 だから、とりあえず4割という話になった。 北はともかく、南は今の時期なら食糧の備蓄は多い。4割と言ってもそれなりの量にはなる。 毛布はそのまま南のを8割もらってきた。 あとで、4割分の量を北から南に送られるということになっている。 「てなワケで、まだ手詰まりじゃありませんよ?」 塋仁の言葉に垓は頷いた。 「聖坡さん、補けてください」 「ええ、もちろん」 ニコニコと微笑んで聖坡が頷く。 とりあえず、問題を浮き彫りにして順位付けてその対策を、と考えているのだろう。 「司令」と大地が言う。 「人事は央圻に一任すると伝えてくれ。事後承諾でも何でも、手続きを踏めば良い」 「うわぁ、お役人ですね」とからかう塋仁だが、人のことは言えない。 「はい!」と大地は返事をして敬礼をして彼の背中を見送った。 「では、私も出来ることを」と言って碧も去った。 「さて、大地くん。誰が居る?」 塋仁がおどけて言う。 「能力者を」 「ウチは..4人だったと思うケド」 塔子が言う。 「ただ、そのお借りさせていただく能力者は全員ウチの部下と組んでもらいます。土木をしてもらうので」 能力者のその力によって建物の強度が違うことになるが、それは自分が最後確認しながら調整しようと考えていた。 「それは構わない。ウチからも出そう」 そういったのは岳で、塋仁も「たしか、ウチに2人いた気がするね」と考えている。 「たしか、三番隊にもいただろう。使うか?」 岳が問う。 「出せるなら。もう能力者なら何でも良いので。形を作ってくれたらオレが仕上げます」 「了解した。たしか、もう捕獲済みだ」 「予算の方はどうしようねぇ」 砂埜がやってきた。垓が戻ってきたと聞いてやって来たらもういない。 材料は大方砂だが、それ以外にも必要なものは購入しなくてはならない。国の予算自体、あまり余裕はない。 「三番隊の、今捕獲されている奴らの減らせば?仕事しなかったんだし」 塔子の言葉に「それもそうね」とあっさり納得して垓の居場所を聞き、そちらに向かった。とりあえず、彼の了承は得ておこうと思ったのだろう。 「さて、と。部下たちは何処に向かわせたら良い?」 思わず砂埜の背中を見送っていた塋仁が大地に声をかけた。 大地は自分の時計を確認して時間と場所を指定した。 「大丈夫でしょうか?」 突然のことなので、少し不安でもある。 「あと10分ほしい」 塋仁が言うと「了解しました」と大地が承諾する。 大地は残った全員に敬礼を向けてそのまま駆けていく。とりあえず、今回の臨時の編成について央圻に確認を取りに行ったのだろう。 「さて。我々文官は文官らしく、穴でも探しますか」 塋仁が言う。 「穴?」と塔子が問う。何の穴だ? 「法の穴だろう。結構あるぞ。王命すら、内容によれば解釈の仕方次第だ」 「岳がその気になってくれたのは重畳。心強いってもんでしょ」 笑いながら言う塋仁に塔子は目を丸くして、そして心の中でつぶやいた。 この人、敵に回してはいけないタイプだったんだ... 城の中でも王の住居区に入れるのは、総司令と副指令そして一番隊のみだ。 入り口で央圻を呼び出してもらうと彼はすぐにやってきた。辟易している表情だ。 「何だ?」 「じつは」と先ほどの碧の話や塋仁の行動についてかいつまんで説明した。 「塋仁ナイス。碧さんには許可するって伝えてくれ。あと、東への連絡は、悪いが五番隊に頼んでくれ。あそこはずっと働き通しなのだろうが...」 「何処も同じです。あと、人事の方ですが...全隊の能力者を借り受ける可能性があります。夜に入ると一気に冷えて負傷者は大変危険ですからせめて風を防げるような空間をいくつか作ってそこへ避難させるのが一番早いと思います」 「そうだな。治療できる建物は別に作ったほうがいいだろう。塋仁に一応相談しておけ。...俺が能力者じゃないから良く分からないのだが、大丈夫か?確か物凄く精神力を使うって聞いたぞ?」 「今じゃないと意味がありません」 大地の言葉に央圻は瞑目した。「そうだな」と呟く。 「要らんかもしれんが三番隊も下につけろ」 「そういえば、あいつは...」 「査問会議の結果とこっちの人事は関係ない。あいつはまだ三番隊の隊長だ。やりにくいかもしれないが、人手は要るだろう?」 まあ、央圻の言うとおりだ。 「三番隊には文書で命令を出しておく。邪魔になったら言え。...でも、何処も要らないだろうな」 ぼやく央圻の言葉には返事をせずに大地は敬礼をしてそのまま駆け出した。 「でかくなったよな」 ポツリと呟き、央圻は三番隊への辞令を作成するため隊舎へと向かった。 |
桜風
10.8.15
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