第27話
| 「ところで、ひとつ」と岳が言い、「二番隊か...」と垓が悩ましげに頷く。 何だろう、と基は不安になった。 「お前、副隊長でいいのか?」 央圻の言葉に「え?!」と声を上げる。 「自分が副隊長ですか?!」 それは..いやだ。 正直、あの人たちは問題を起こして歩いているイメージがある。いや、何度かそれを目撃している。 だから、『大地さんって本当に大変なんだなぁ...』と他人事のように思っていた。 実際、自分にとっては全く遠い存在なのが隊長なのだ。 なのに、副隊長といえば、隊長が不在だったらその代わりをする人。つまり、あの人たちが起こした問題について頭を下げて後始末をして回らなくてはならない。 ムリだ... 「ムリです!」 キッパリと断った。 「じゃあ、二番隊は三番隊の下に付くしかないな」 央圻の言葉にぎょっとした。 自分たちが..雄碁の下に付くのか?! イヤだ。絶対に避けたい。というか、それこそ二番隊が全員任務を放棄しかねない。 「三番隊の下ですか?それ以外には...」 「要らん」と四番隊の岳。 「同じくー」と七番隊の塋仁。 「技術職だから」と五番隊の千里。 「書庫、破壊されたくない」と八番隊の塔子。 「俺らの下においても仕事にならない」と一番隊の央圻。 「邪魔」と九番隊の砂埜。 そして、六番隊隊長の碧を見たが、そこは元々宗教を束ねている部署なので、自分たちがその下に付くことはまずない。 と、いうことは... 「三番隊は市内警備だからな。そういった点では二番隊とは多少任務内容が似ているんだ」 央圻はそういった。 絶対に大問題を起こす。あの先輩たちはそうだ。やる。我慢とかそういうのをなるべくしない。貴族は嫌いだし... 「もし、誰かが副隊長になれば...」 央圻を見た。 「まあ、隊長の代理として面倒ごととかは引き受けてもらうが、そのまま隊を独立させても問題ない。さすがに隊長不在で副隊長なしの隊を独立させるのはまずい」 「ちなみに、基以外は皆経験してみて不合格の判を央圻に捺されているからな」 垓が言う。 「つまり、基以外挑戦権すらないんだよ」 央圻の言葉に基はうな垂れた。 「自分は、まだまだ未熟で..知らないこともたくさんあります。今までも何度も大地さんに教えてもらったり他の人たちに聞いたりしました。自分が二番隊副隊長になれば、皆さんにご迷惑を掛けることもあると思います。色んなことを聞くと思います。 ...よろしくご指導をお願いします」 諦めた。 もう、こうなったら大地が戻るまで何とか隊は存続させて、戻ってきたら盛大に文句を言ってたくさん休みをもらう。 そう決めた。 深く頭を下げてそして顔を上げると隊長たちは皆苦笑していた。 「大地くんにだって色々教えてあげましたし」 「アンタが大地以上に優秀な子とは思ってないから。そういうの覚悟で、副隊長になれってあたしたちも言ってたの」 塋仁と塔子の言葉に基は再び頭を深く下げた。 「よろしくお願いします!」 「千里さんの勘はあたりますねぇ」 碧がこっそりそういうと「ここまでいい子だとは思っていませんでした」と千里は苦笑した。 あの隊にももう少しまともなのがいたらいいなぁ、と思って推薦したのだから。 その3日後、全隊の隊長が謁見の間に呼ばれた。 二番隊は隊長代理であるも基がそれに出席する。 「何でしょうか」 「んー?嫌な予感がプンプンとするけど。あ、この間の会議みたいにだんまりを決め込むように」 基に聞かれて塋仁はそういった。 本当に碌なことにならないだろう。 謁見の間には既に垓、聖坡、央圻そして雄碁がいた。 総司令、副指令、一番隊隊長はわかる。 だが、雄碁は何故此処に... 皆は彼の表情を見てまた溜息をつきたくなった。 本当に懲りない。 おそらく、一番隊の知り合いか何かにお願いしてこういう場を何とか設けてもらったのだろう。それに応じる王もよほど暇なのだ。 全員揃ったのを確認して一番隊が王を呼びに行く。 「片膝をついて頭を垂れろ。王が許すまで顔を上げるな」 岳に言われて基はその姿勢になり、王の到着を待った。 暫くして衣擦れの音が聞こえた。 「面を上げろ」 初めて聞く声。これが王なのだろう。皆が顔を上げたのを確認して基も顔を上げた。 玉座はとても高いところにある。王の顔は見えない。 それくらいのほうが自分にはちょうどいい。 「さて、皆に確認したいことがある」 「何を、でございますか」と垓が問う。 「二番隊隊長のことだ。他国への逃亡を図ったと聞いたが、誠か?また、その場合責を問われるのはその身内となる。かの者は卑しい身分であると聞く。孤児院とか言うところで育った、と。その責任者をこちらにひっ捕らえてみてはどうだ?孤児院などというところは貴族の財を啜って生きているのだろう?敵前逃亡するような者を育てた者を保護する必要はないと思うが、どうだ?」 「恐れながら...」と央圻が王に向かって口を開いた。 が、それと同時に「それはできません」と碧が声を上げた。 「なんと言うことを仰るのですか!神に仕えるあの方を、捕らえる、ですと?!六番隊隊長としてそれは拒否いたします!!」 碧が声を荒げて否と主張する。 珍しいことで、皆は呆気に取られた。 「何だと?」 自分に口答えをした臣下に向かって王は威厳を示そうとした。 しかし、碧はそれにひるむことなく、寧ろ鋭い口調で続ける。 「陛下。今、陛下には神の..ザズ様の声が届いていらっしゃいますか?神の声を聞くことが出来ますか?」 碧のその言葉に王の表情ががらりと変わった。 「何を言う!六番隊隊長、つまり余の臣下であるお前が余にそのようなことを申してよいと思っておるのか!!」 「私が仕えているのは神です!」 まあ、そうだなぁ... 何となく垓はそう思った。 思ったが、これは止めた方がいいのだろう。 「その者を牢へ。余への反逆だ!」 「陛下、よろしいのですね?」 岳が確認した。 「当然だ!この者は余への冒涜を口にした。これは立派な反逆罪だ!!」 唾を散らしながら言う王に岳は小さく溜息をつく。 「陛下。ひとつだけ確認させてください。六番隊隊長。この方のみ、我々軍の規律が適用されないのはご承知の上で、仰っているのですね?その命令を取り消されるおつもりはありませんね?」 基はそれを知らなかった。 否、他の隊長も知らなかったようで皆困惑の表情を浮かべている。 もちろん、岳に碧の捕縛を命じた王でさえ、だ。 垓と央圻はそれについては知っていたようで、知らなかった仲間たちに驚きの表情を浮かべている。 「岳。よろしい。私は私の意志で牢獄に入ります。ひとつ借りりますよ。陛下、その代わり、二番隊隊長の育った教会への手出しはしないで頂きたい」 そういったかと思うと、碧は立ち上がり、さっさと謁見の間を出て行った。 またしても皆呆気に取られる。王は自分を酷く侮辱されたと思い、そのまま何も言わずに下がっていった。 王がいなくなってしまったのなら、ここで片膝を付き続けても意味がない。 「まあ、俺が一応とりなしてみるが...」央圻が言うが自信ない。 「さっきの。ねえ、岳。本当?」 「当然だろう。あの方は唯一、神に仕えているんだ。我々はどんなに信心深くても王に忠誠を捧げている。六番隊だけは王に忠誠を捧げることはない。ただ、神はこの国を正しい方向へ導くために、今の王族の祖にこの国を託された。だから、神に仕えている彼らもまた王に寄り添い、人々を正しい道へ誘っている。だから、王がその道を踏み外せば、彼が寄り添うことはなく、また...」 そう言って口を閉じた。 その日のうちに岳が何故王に態々碧の捕縛を命じたことについて、取り消さないのかと確認したのかが分かった。 国中の全ての聖職者がその義務を放棄したのだった... |
桜風
10.10.4
ブラウザバックでお戻りください