第31話
| 港で大地が帰ってくるのを二番隊が揃って待っていると、千里もやってくる。 見たことのない船が港に入ってきて、やがて大地がそこから出てくる。 二番隊の面々は大地に向かって駆けた。 「大地さん、お帰りなさい」と坤が言い、「簡単にくたばるとは思っていませんでしたけど...」と凾熕コをかける。 「お帰り。で?後ろの人達はどのような扱いにしたらいいのかしら?」 千里が声をかけると、大地は一度振り返り、炎狼たちを見て 「えっと、こいつらはオレの仲間だから客人扱いかな?オレんちに泊めるから。紹介は後でな?とりあえず着替えてくる。そうだな、謁見の間の前の廊下まで案内してやっていてくれ。頼んだな、千里」 と言って走っていった。 二番隊の面々は、残された炎狼たちに興味津々だったが、「ほら、サボらない!!砂埜さんに報告するわよ!!」と千里に怒られて元の持ち場に戻っていった。 「私は地の軍五番隊隊長の千里。大地とは幼馴染ってやつよ、よろしく。こっちよ、付いてきて。」 言われるままに炎狼たちは千里の後を付いて行った。 能力者、というのが他の国にもいると聞いた。この国の能力者は自分の幼馴染がそれだ。能力者と分かる容貌をしていると聞く。 ちらと振り返って大地が『客人』と称した彼らを見た。 ふと、青い髪の人と目が合う。その人は少し表情を緩めて軽く会釈をしてきた。 おそらく、他国の人間だ。彼らが何故この国に来たのか。そもそも、この国から大地はどうやって外に出たのか... 分からないことばかりの出来事だ。 10分程度歩くと、謁見の間の前の扉に辿り着く。そこには既に垓が立っていた。 「大地はまだのようだな。私は軍の総司令官、垓という者だ。君たちは大地と共にあの船に乗っていた人だな。大地が世話になった」 見知らぬ自分達にそう声をかけてきた垓に驚いた様子の彼らは自己紹介をする。何処の出身か、というのは省かれているがそれについて垓が何も言わないのなら自分だって何も言えないと千里は口を噤んだ。 暫くして大地が軍服に着替えてやってくる。目があった千里に大地は目礼をし、垓に向かって敬礼する。 「では、用意と覚悟は良いな」 垓の言葉に大地が頷き、「君たちも一緒に」と垓が促し、扉の前の謁見の間の警護に当たっている一番隊の隊員に声をかけて扉を開けさせる。 千里は敬礼を向けて彼らの背中を見送った。 謁見の間の玉座には既に王がいた。 垓と大地は敬礼を向ける。王の傍には一番隊隊長、央圻も控えていた。大地が帰って来て安心したのか、少しだけ柔らかい表情を浮かべている。 王が片手を上げて制したので、敬礼をやめて垓は大地に向き直る。 「さて、約束だ、大地。ここ数日お前は何のために、どこへ行っていた」 話を促し、大地の口から説明された内容に垓は驚きを隠せない。ちらと央圻を見れば彼も同じように驚いている。 御伽噺だと思っていた... 『七勇』と呼ばれる人たちがいて、人が滅ぼされそうになったら現れて神の使いとして戦い、守ってくれる存在。 あそこで育った自分達は殆ど毎日のようにその話を聞かされていた。 大地は王に『神器』と呼ばれるものが隠されていそうな場所を知らないかと問う。 しかし、王は大地の話を真に受けることはなかった。 「その話を、何を根拠に信じろと?しかも他国の人間をこんなに簡単に国に入れるとはどういう神経をしている、二番隊隊長。貴様はこの国を他国へ売る気か?!」 小馬鹿にした笑みを浮かべてそういったのだ。 確かに、御伽噺..伝説だ。 だが、これは信じられる。いや、どうだろう。信じたいだけなのだろうか... 王の言葉に大地が奥歯をかみ締め、悔しそうな表情を浮かべる。その後ろでは、炎狼と名乗った青年が飛翔と青年に制されている。彼は気が短いのだろう... 飛翔が一歩前に出た。 「差し出がましいと思いましたが、国王陛下、こういうのは如何でしょう。二番隊隊長に思い当たる場所を教えてやってください。そして私もこのエンブレムが結界を解くのに必要ですから共に向かいますが、私の役割が済みましたら私を監禁してください。その日から三日後の正午までに彼が戻らなかった場合、私は風の国の情報を陛下に差し上げましょう。風の国の守りは陛下もご存知でしょう?それを設計したのは私の母です。外からの解除方法は知っています。それでも足りないと仰るのでしたら、どうぞ私の命も差し上げましょう」 彼の口にした言葉に少なからず驚いた。 自分の監禁を申し出て、更に命を賭ける。いや、彼は自分の命ばかりではなく、国の、国民の命を此処で賭けた。 この話、この王なら乗る。 垓は確信していた。彼は此処まで読んでいたのだろうか... 「貴様の命がどれほどの重さを持っているのかは知らんし、言っておることが真実かを確かめる術はない。だが、いいだろう。その賭けに乗ってやろう」 やっぱりな... 吐きたい溜息をまたしても呑み、垓はその場の成り行きを見守った。 「ちょっと待て、飛翔。オレが三日で戻らなかった場合どうするつもりなんだよ。もし、神器が手に入ってもお前が欠けているならそれは意味ないだろ?!」 大地が飛翔の肩を掴んで揺さぶる。 「ああ、だから三日後の正午までに戻ってくればいいだろ?それに、今の賭けはこちらが一方的に不利というわけじゃない。正確な場所が分かってから三日後だからな」 軽く言う飛翔に呆れもするが、確かに、今はこれしかないだろう...おそらく、自分達で探すとか言い出したら拘束して全員を監禁するようにという指示があるだろう。大地の話が本当なら時間がないのだろうし、全員が監禁されるよりは彼には悪いが飛翔独りの換金で済むならそうしたほうが効率的だ。 「ここからそう遠くではない。このオアシスの湖から真西に進んでいけば古代遺跡の集落がある。そこのひとつにどうしても発掘できん遺跡があるのだ。入ったつもりで進んでいるといつの間にかそこから出ているらしい。だから先代の国王はそれの発掘を諦めた。そこ以外心当たりはない。ところで、いつ出発するのだ?その飛翔とやらが逃げ出してしまわないように監視をつけておかねばならん」 「―――明朝、日の出と共に」と答えた大地の表情は苦渋に満ちていた。 |
桜風
10.12.5
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