第36話





執務をしていると周囲が騒がしくなる。

一番隊が慌ててやってきた。

「どうした」と垓が促すと「襲撃です」と短く言う。

その報告と同時に王宮が揺れた。

「庁舎が襲われているのか?!」

「はい」と報告に来たものが返した。途端、垓は執務室を飛び出して謁見の間に向かった。

今の時間、王は謁見の間にいる。


「何事だ?!」

そういわれて王の傍に控えていた央圻は耳を澄ませ「襲撃のようです」と冷静に返す。

「な...?!わ..私を守れ!!鍵だ、鍵を掛けろ!!」

言われるまでもない。不本意であるが、それが仕事だ。

「王妃は?!姫は!!民草などどうでも良い。何が何でも守れ!!」

「奥の宮には腕の立つもの達が充分な人数つめています。今、最も危険なのは貴方です」

央圻が言うと国王が蒼くなる。

少し黙ってろ、と思って態々そういった。

廊下側から何か声が聞こえた。

一瞬そちらに意識が行ったが、謁見の間の窓ガラスが割れて魔物が入ってきた。

魔族...

こんな近くまでやってきたのはきっと最初の襲来以来。

いや、最初の襲来では、最終的にこの王宮は無傷だった。つまり、最大の危機と言うヤツだ。

残念なことに、此処には能力者がいない。

「大地さえ...」と思わず口にして舌打ちをした。

最も頼りになる弟分。しかし、今彼は彼で試練を受けている。そんな彼にさらに何かを背負わせようとした自分が不甲斐ない。


「飛翔殿?!」

扉の前を守っていた垓が驚きの声を上げる。

「陛下は?」と飛翔はそんな垓に対して特に説明をするつもりがないのか、自分の疑問を口にした。

「私も心配しているのだが、中から鍵を掛けられ...!!」

部屋の中から悲鳴が聞こえた。

飛翔は扉に向かって、

「扉のそばに誰かいるのでしたら逃げてください。こちらから開けます」

と声を掛けてカマイタチを起こして扉を切り刻んだ。

カマイタチという自然現象は知っているが、此処まで威力のあるものだとは思っていなかった。

垓は呆然と飛翔の背を見つめた。

謁見の間では国王が魔物に襲われるところだった。

飛翔は傍らの兵の銃を奪い、魔物の目をめがけて発砲した。

それは見事に命中して魔物はのた打ち回る。その隙に総司令と飛翔が国王の元へ駆け寄った。

「...貴様は」

国王が飛翔の姿を見て呆然と声を出す。

「ええ、脱獄です」

何事もなかったかのように飛翔がその単語を口にした。

怒り狂った魔物が飛翔たちに襲い掛かってきた。

飛翔が構えたが、途端にそれは燃える。

その炭の塊となった魔族の後ろを覗くと、

「一応、お前はまだここにいるんだろ?これ、返しとくぜ?」

と赤い竜に乗った炎狼が飛翔から預かっていた護身刀を投げて返す。

「大地が戻ってきたら一緒に魔物を遺跡とは逆の砂漠に追いやってくれ。沙羅に何かいい案があるらしい。おれは沙羅を乗せて先に行っておく。あ、一緒に雷と氷も拾ってくれ。街の中にいるから。じゃあ、後でな」

そう言って炎狼が遠ざかって行った。

「あれは?」

垓が口を開く。

「炎の勇者の炎狼です。あの竜とエンブレムの力は神器を手にしなければ解放されないことになっているようです。既に大地が神器を手に入れたから私たちの元にエンブレムは戻ってきています」

襲い掛かってくる魔物を炎狼から返された護身刀で切りつけながら飛翔が説明した。

垓と央圻は顔を見合わせた。

これまた、御伽噺では終わらないことらしい。









桜風
11.2.20


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