第41話





国の復興事業が始まった。

国王のための倉庫が解放され、市街地の民の暮らしは以前に比べれば多少は楽になったが数は全然足りない。

四大貴族たちも王都へ物資を運んではいるものの、やはり圧倒的に数が足りない状況だ。

三番隊は相変わらずである。

今は全員が力を合わせていかなければ上手く機能しないと言うのに、と多くの者たちは思っていた。


「隊長、炎の国所属の船が接近中です」

「ええ?!」

通信室が俄かに慌しくなった。

それは、大地たちが国を出立してひと月経ったある日の昼下がりだった。

「通信が入りました」

「応じます」

千里が答えてモニタが表示される。

千里は目を丸くした。似ている...

「私は炎の国、現頭領秀炎と申します。貴国の代表者との会談を申し込みたいと思っているのですが...」

「まず、炎の国の『頭領』というのはどういった地位の方でしょうか」

「国の代表です」

国の代表?国を代表してきた、と言うことだろうか。

「んー、そうですね。国をまとめるものの位が『頭領』です。風の国は『帝』ですが、申し訳ない。大地殿に伺っておけばよかったのですが、貴国ではそういった方をどのようにお呼びするのかが私は分からないのです」

「国王陛下、です」

不意に自分の背後から聞こえた声に千里は振り返る。

「総司令?!」

「ゲートを開けろ」と命じられて千里は部下に命じる。

「おや、信じていただけるのですか?」

「いくら、炎の国が武勇に優れていても、その人数でこの国を落とすのは難しいでしょうからね」

垓の言葉に秀炎は頷き「感謝します」と一言言って頭を下げた。


「何をしにいらしたのか...」

王が呟く。

炎の国の代表がこの国に来たとすぐに連絡が入った。

まずは、垓が用向きを聞き、王にあわせるかどうかを判断すると言うことになっている。

「良い機会です。あのものを人質にとり、炎の国を落としましょう」

そういったのは三番隊隊長、雄碁だった。

「それは出来ない。地の勇者殿と約束をした」

王がすぐにその案を却下する。

「あのような、親なしの言うことをお聞きになるのですか?この国で最も尊いのは貴方です。貴方がかの蛮国を攻めると判断されれば誰もがつき従い、この先貴方は名君として国の歴史に名を刻むこととなるでしょう。これは、滅多に巡ってこない良い機会です」

雄碁の言葉を聞いて王は彼をじっと見つめる。

「そなた、それを本気で口にしておるのか?」

「ええ。陛下ならきっと...」

期待に満ちた瞳で王を見つめていた雄碁に王はふっと笑う。

雄碁もその笑みを見て力強く頷いた。

「この者を捕らえよ。国に乱を呼び込もうとしておる」

傍に控えている一番隊に告げる。

「陛下?!」

驚愕の表情を浮かべている雄碁に構うことなく、王は目の前に積まれた書類に目を通す。彼は今までのほほんと暮らしていたツケを必死に払っているところなのだ。


「あー、あの子とうとうやっちゃったんだー」

塔子が呟いた。

雄碁が投獄されたという噂はすぐに広まった。

いつかやるだろうと思っていた。

王は随分と変わった。

数日で別人に変わったといっても過言ではない。

だから、きっと別人が王に成り代わったのだと思うことにした。別に、今までの王が王でなくてはならないなんてちっとも思わない。

国がよくなれば誰が王になってもかまわない。民と言うのはそういうものである。

「三番隊は何処預かり?ウチは要らないわよ」

「二番隊だろう。雄碁が何を進言して投獄されたかまできちんと噂に乗せてやったから無駄口を叩く者は減るだろうしな」

塔子の疑問に答えたのは央圻だった。

「でしょうねー。あー、バカバカ。人が変わったの、見てわかんなかったのかしら?」

「お前もあんまり言ってると不敬だ何だで投獄されるぞ。岳に」

「そうだな。飛翔殿が脱獄してくれたお陰であの塔はなくなってしまったが、まだまだ空き室はあるからなー」

央圻の執務室にタイミング良く入ってきた岳がするりと話に入ってきた。

「うわぁ!」飛び上がって驚く塔子に一瞥をくれた岳は央圻を見る。

「央圻さん、総司令がお呼びです。例の人と陛下の会談を設けるみたいです。陛下の執務室に行ってください」

「了解した」

踵を返して央圻は王の執務室へと向かう。

「あ、あのー...岳さん?」

覗うように声をかけてくる塔子に「八番隊、暇じゃないんでしょう?」と岳が声を掛けると「そうだった!」と慌てて駆け出した。

「ま、これで仕事がしやすくなるのは事実だな」

ポツリと呟く。

色々と引っ掻き回してくれた三番隊隊長の失脚に岳も安堵の息を吐いた。









桜風
11.5.1


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