序章   第2話



砂地から炎狼のいた草原、そして森を抜けて飛翔の言っていた神殿に着いた。

「やーっと着いた。何が『少し歩けば着くだろう』だ。延々三時間は歩いただろうが!」

炎狼の言っている通り、三時間近くずっと歩き通しだった。

「悪かったな、お前がこんなに軟弱になっているなんて思ってもいなかったんでね。ちゃんと鍛錬しているのか?」

「そこそこな。しかし、此処は何なんだよ。」


 あたりは季節に関係無く、一面に花が咲き誇っていた。花の甘い香りが漂ってくる。

絶滅したはずのものや伝説といわれているものまであり、植物学者がいたら泣いて喜びそうなこの風景にただ圧倒される。

炎狼は、すぐ傍の果樹になっている果物を採って口にする。  

「お!これ美味いぞ。」

「拾い食いをするな、炎狼。ここ、何ていうか、凄く気が澄んでいるな。」

「ああ。こんな澄んだ気なんで今まで感じたことが無い。

...あからさまに怪しいな、正解だったかもな。」

「んじゃ、行こうぜ。」

慎重に話している大地と飛翔をおいて炎狼は神殿の中に入って行った。

「炎狼、警戒もせずに歩くのは一向に構わないが、何かあったときは知らないぞ。」

先頭をさくさく歩いている炎狼に飛翔が声を掛けた。

こんなに澄んだ気が漂っているところにそんなに危険は無いと思うが、警戒しても損は無い。

飛翔の言葉に炎狼も少し気を張る。

「オレが先頭行こうか?遺跡のトラップ見抜くの得意だし。まあ、たぶん何も無いと思うけどな。何かあるとそれなりに感じるから。」

大地の提案に炎狼、飛翔はともに従った。

 大地の言ったとおり何事もなく、まっすぐ進んだ先の最奥の重々しい扉の前に立つ。

「開けるぞ?」

そう言って大地が扉に手を掛け、炎狼と飛翔は構えた。

扉が開いて、中を覗くとカーテンがかかっていて良く見えないが、正面に玉座みたいなものが並んで二つある。

おそらく此処は、謁見の間なのだろう。とりあえず、さしせまった危険が無いことを確認して三人は部屋の中に足を踏み入れた。

部屋の中には人が三人いた。

一人は、金色の髪と瞳を持ち、もう一人は明るい青緑色の髪と瞳で、最後の一人は、薄紫色の髪をしている。

炎狼たちは、その人たちがいるところへ近づいた。

「私は飛翔といいます。お聞きしたいことがあるのですが。」

「此処はどこか、でしょ?ごめんね、アタシも知らないのよ。アタシは、雷(らい)。ヨロシク。」

「ああ、オレは大地だ。じゃあ、何で此処ではないどこかへ行って手がかりを探そうと思わないんだ?」

「だって、此処に入ったらもう出ることが出来なくなるみたいだから。あ、わたし沙羅(さら)っていうの。あと、こっちの彼、氷(ひょう)って言うんだって。」

その言葉を聞いて炎狼はさっきの扉を開ける。そして外に出ようと足を踏み出すが、何かにぶつかって進めない。

「ね?見えない壁みたいなものがあるのよ。こんなことなら初めから扉開かなきゃいいのにねぇ。」

沙羅は肩を竦ませながら炎狼に声を掛けた。

「ぶっ壊す。」

炎狼は少し扉から離れて精神を集中する。そして、右手を前に突き出すと、その掌から炎が現れた。

しかし、それは見えない壁にぶつかり、消えた。

「ねえ、あれ何?どうやったの?」

「まあ、水芸の炎バージョンと思ってもらって構いませんよ。炎狼、良かったな、その結界が反射系のものでなくて。」

沙羅に聞かれて答えた飛翔が炎狼に声を掛けている。その後ろで沙羅と雷が、

「水芸って何か知ってる?雷。」

「確か、囃子の伴奏にのせて刀の先とか扇子、服から水を吹き出す奇術だったと思うけど...。今のは水芸とは少し違うみたいだったけど、奇術のようなものってことじゃないの?」

沙羅は、「ああ」と納得して手を合わせた。

「違う!あれはおれが出したおれの炎だ。奇術なんてちゃちなものと一緒にするな!っつうか、飛翔。適当なことを吹き込むな!!そして、沙羅!雷!お前らも納得すんな!!」

炎狼が熱く語り終わったとき、部屋の中の空気が変わった。

 先程まで目を瞑り、壁に背中を預けていた氷が目を明ける。瞳は銀色だった。

「誰かがいるな。」

「ああ、さっきまではいなかった筈だが。あの人たちなら答えを持っているだろうな。此処がどこか、そして、何の目的で私達をここに閉じ込めているかを、な。」

まだカーテンがかかっていてはっきりとは見えないが、二つ並んでいる玉座に誰かが座っている。










桜風
04.5.9

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