序章   第3話




カーテンが開き、その二人は姿を現した。

一人は額に何かの紋様があり、東洋系の服装をしている女性で、もう一人は男性で、多少隣の女性のものとは異なるが同じく額に紋様があり、こちらは、西洋系の服装をしていた。二人とも雷とは違う、薄い黄金色の髪は長かった。

「すまないが、実はそなた達に頼みがあるのだ。知っての通り、今そなた達の国の間で戦争が行われている。その戦争は魔神に仕えている四天王の中で、最近時の国の時空の歪から復活を遂げた魔族が深く関わっているのだ。」

 男性が発した言葉に、炎狼は少し考え込み、怪訝な顔をしながら口を開いた。

「ちょっと待てよ、おかしいぜ、その話。だってこの戦争、おれのジジイのじいさんの生まれた時には既にあったって聞いてるぜ?なあ、飛翔。」

「ああ。わたしも炎狼と同じ話を聞いています。今更『魔族が深く関わっている』と言われても信じ難い話です。」

飛翔の意見を聞いた女性が、穏やかに話し始めた。

「そうです。途中は確かにあなた方、人が原因です。魔神は初代の各国の勇者によって封じられました。しかし、その寸前にあなた方、人に対して戦いの種を落としていきました。人の負の感情は魔族の力になりますから。そして、戦争は何度か起こったのです。沈めては、争いの種の芽が出てくるの繰り返しでした。更に、魔神の側近が復活を遂げた今、人々の争いは益々激しくなるでしょう。
そこで、あなた方にお願いがあります。復活した魔族を倒していただきたいのです。」

「『倒していただきたいのです』って言われても...わたし達生身の人間が魔族の、しかも強いやつなんでしょう?そんなの、どうやって倒すって言うのよ。」

沙羅は、全く乗り気なさそうに言葉を返した。

「そなた達には、各国の勇者になってもらいたい。知っているだろうが、炎、地、雷、森、風、水、時の七国の神に最も近い能力を得たものが勇者と呼ばれる。そして、高位魔族に対抗できるのは、その七人だけだ。」

「そりゃ、その七人のことをまとめて『七勇』と呼んで、その人たちのことは国でも色々と伝説はあるけど。貴方たちこそ、神様じゃないの?!何で自分たちでしないのよ、その方がどう考えてもてっとり早いじゃない!第一、そんな凄いのと戦って死んじゃったらどうするのよ。アタシは嫌よ。皆だってそうでしょ!?」

「私は引き受ける。どうせ、承諾するまで此処から帰してもらえそうにないし。それに、神に近い能力を得るんだったらそう簡単には死なないだろう。」

飛翔は腕を組み、壁に寄りかかりながらそう言った。それを聞いて大地が、

「ひとつ質問がある。もし、今の諸悪の根源を倒したら、やつらに連れ去られた人たちは助けられるのか?...能力者とか。」

「おそらくは。今は奴等も多くの力が欲しいだろうから連れ去った者たちを簡単に殺したりはしないだろう。能力者なら尚更だ。」

「それなら、オレも地の勇者の役目引き受けるぜ。」

「おれも仲間に入れてくれ。」

さっきまで適当に聞いていた炎狼が俄然やる気を出した。それに続いて氷も、

「俺も。少々脅迫じみたやり方は気に入らないが、ここから出られないなら仕方が無い。二人はどうする?」

「でも、『七勇』って言うからには全部で七人いるんでしょ?どう見ても此処には六人しかいないじゃない。あと一人はどうなるの?」

雷が、玉座の二人を睨みながら反論をしたが、そんなことを全く気にせずに女性が穏やかな笑みを浮かべて

「時の国の勇者はもう決まっています。今問題となっている魔神の側近が完全に覚醒する前に急遽一人だけこちらに召喚して、既に勇者の証であるエンブレムを渡してあります。あの方なら魔族たちの手からエンブレムを守り通すことが出来るでしょう。納得していただけましたか?」

「...もうここまで段取りが整っているなら断れないじゃない。分かったわ、アタシもやるわよ。いまいち信じらんないけど。沙羅は?」

沙羅は、ふてくされた顔をして、「やる」と呟いた。

「ありがとう、礼を言います。それでは、出口に向かって横一列に並んでください。」

六人は、言われた通りに出口に向かって横一列に並んだ。

すると奥から同じく六人の人が歩いてきた。

逆光で顔は良く分からない。そして、その人たちは、それぞれ炎狼たちの前に立ち、エンブレムを渡して再び戻っていった。

「さて皆さん、早速ですが『神器』と呼ばれる武器を手に入れてください。今受け取られたエンブレムは神器と一対になっていると考えてください。エンブレムがなければ、神器は手に入りませんし、神器がなければ、エンブレムの力を開放することは出来ません。ですから、皆さんには神器が必要となります。神器は各国に封印してありますが、それを得るには試練を受けていただかなくてはなりません。その試練を乗り越え、認められればあなた方それぞれに合ったものが神器として手に入ります。
では、あなた方を元の宇宙に帰して差し上げなくては。ついて来てください。」

そういうと玉座に座っていた二人はあっさり出口から出て行った。六人もそれに続いて出るとすんなりと出口をくぐることが出来た。

外に出ると、宇宙船と思われる大きな船があった。

「なあ、さっきあんなもんあったか?」

炎狼が大地に耳打ちをするが、大地は、

「気にするな、ここでそんなこと気にしていたらキリがないだろうよ。」

と割り切っていた。

「これに乗って移動するといい。個室は七つある。食糧や水、燃料など旅に必要なものは揃っているし不足することはないから安心しなさい。操縦はしなくても自動にそれぞれの国にたどり着けるようになっている。では、頼んだぞ。」

そう言って船から離れようとした男性を飛翔が、

「すみません、お聞きしたいのですが。此処はどこで、そして、あなた方は誰ですか?」

と呼び止めて尋ねた。

「ここは、『エデン』と呼ばれる所で、神界の中で最も人界に近い場所だ。彼女は『地の女神』。そして、私は『天の大神』と呼ばれるものだ。これでよろしいかな?風の勇者よ。」

「ありがとうございます。それでは、御前失礼いたします。」

皆は一礼をして宇宙船に乗り込み、船は飛び立った。









桜風
04.5.18


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