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おそらく今日雷の国に着くだろうという日、いつもは早く起きている雷がその日に限って中々操縦室にやってこない。
大地を起こし終わって脱力している炎狼に飛翔が、
「炎狼、ついでだから雷のところも行ってきてくれないか?」
「おれは、もう動きたくねえよ。大地起こすために毎朝命張ってんだぜ?」
「お前は頑丈なんだからいいだろ?」
「じゃあ、お前が行け、飛翔。」
そんな会話がされている中、扉が開き雷が入ってきた。
その姿を見て、皆は少なからず驚く。
いつもはポニーテールに結んでいる髪は大地のように下でひとつに結ばれている。服装もいつものようなラフな物ではなく、少し正装のような感じだ。
こうして見ると、
「雷、何だか男の人みたい。かっこいい。」
沙羅が皆を代表して話しかける。
「ありがとう。」
と答えた雷の声に皆は驚く。
氷は手に持っていた鍋を落とし、飛翔がそれを何とか床に着く前に掴む。炎狼、大地は口をぽかんと開けたまま動かない。
「雷。私たちは根本的なことを誤解していたのか?」
飛翔が聞いてみる。
「そうだね。ワタシを女だと思っていたみたいだから。まあ、逃げるために一応女装していたからそう思ってくれてて良かったんだけど。ワタシ自身、自分のことを『アタシ』と言っていたしな。」
「いや、問題はそこじゃねえって。声だよ。お前がその声でいたらおれ達だって勘違いしなかったって言うのによ。どうやっていたんだ?」
何とか気を取り直した炎狼が話に入る。
今まで雷の声はアルトで一応女性の音域だった。しかし、今はハイバリトンくらいの高さだ。女性の音域と考えるのは難しい。
「これは昔からの特技だったんだ。凄いだろ?ちょっと自慢なんだ。」
「いや、自慢って...」
「じゃあ、雷も皆と同じ...」
「男だよ。」
「じゃあ、この中で女の子ってわたし一人ってこと?」
「そうなるんじゃないか?そういえば、『逃げるため』って言っていたよな。国へ行っても大丈夫なのか?」
何とか戻ってこれた大地も加わる。
「大丈夫。ワタシ個人の気持ちのことで他は関係ない。まあ、これがあったから多少煙たがられているけどな。」
そう言って何事も無かったかのように椅子に腰をかけて食事の準備が整うのを待つ。
その日の朝食は皆、何ともぎこちなかった。ただ一人、雷を除いては。
「そういえば、風の国の防御って本当に破れるものなのか?」
ずっと気になっていた炎狼が聞く。他の者たちも気になっていたがそういうことを聞くのは不穏当かと思って皆疑問を口にしなかったのだ。
「一応ね、方法は有るけど不可能だな。
手順としては、まずそこら辺を航行しているウチの国の船を見つける。ここで既に確率低いな。皆国に引きこもっているから。
そしてその船を無傷で手に入れてOSの解析。かなり意地の悪い公式でできているから元を知らないとまず無理だけど。
まあ、それをクリアしたとして、船の情報をある程度頭にいれておくだろ?そして国の領域に入ったら通信があって、提出していた写真などの書類と照合。
最後に、ここでどうせ引っかかって入れない。」
「なんで?そっくりさんが居るかもしれないじゃない?」
沙羅が聞くが、
「『そっくり』ではダメなんだ。どうしても本人でなくてはならない。すぐにばれるよ。」
「そんな機械の発明もされているのか?」
「いいや、この選別はアナログ。でも、下手に融通利かないデジタルよりもずっと信頼できるから。まあ、皆も風に来たとき絶対に目にするだろうな。」
皆が不思議がっている後ろで炎狼が一人飛翔の言葉に苦笑しながら納得していた。
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