雷の章 第2話





「飛翔、あとどれくらいでウチの国に入る?」

「一応、2時間くらいの猶予はあるが、そちらのレーダーの性能によってはもう少し早くにコンタクトがあるかもしれないな。」

「じゃあ、一応国の話をしておいた方がいいだろうね。

ワタシの国は貴族とそれ以外という2つに分けて考えられている。

貴族たちは自分たちの住んでいる以外の土地を『スラム』って呼んでる。結構綺麗なところなんだけどね。

国の重要な地位に就ける、軍や政治家には貴族だけしかなれないんだ。

しかし、それ以外のものは貴族以外が仕事にしている。だから一応貧富の差はあっても生活に困ることは少ないって聞いたな。周りと助け合って生活しているし。

逆に貴族は自分の家名を強くするためにお互い蹴落とし合っているからどうも結束が弱い。

ワタシの見解では貴族以外の人達の暴動が起きたらあっさり落ちるよ、今のままだと。」

「国王は?」

大地が聞くと、雷は溜息を吐いて、

「いるよ、勿論。でも、お飾りなんだ。いわゆる傀儡ってやつ。貴族が好き勝手するのを止められずにきてそのままそれが伝統になっている。
まあ、世継ぎの教育係がそういう王になるように育てるからね、仕方ないと言ったらそうかな。
国を継ぐのは長男。庶子は好き勝手出来る。教育も適当だし、貴族たちも口を出さない。庶子を味方につけたところで自分たちが出世できるわけじゃないからね。
反対に、国を継ぐと決まっている者はがんじがらめなんだ。貴族がいろいろと干渉してくるし、監視も煩い。」

「...雷は国を継ぐ人なのか?さっきの『逃げる』って言うのはこの事かと思ったんだけど。」

雷は少し驚いたように、そう言った飛翔を見た。

「凄いな、何で分かったの?そう、ワタシは国を継ぐ人になったんだ。」

「『なったんだ』?」

氷が聞き返すと、

「そう、『なった』。ワタシは元々次男だった。だから好き勝手な生活をしていたんだけどね、兄が二年前に流行病で死んでしまったんだ。それで自動的にワタシが国を継ぐ者となった。
そのときの貴族たちの慌て様ったら...。ワタシはさっき言ったように好き勝手な生活を送っていたし、貴族たちもワタシの教育までやっていなかったから傀儡としての国王に仕立て上げられない。
自分の意思というものを持ちすぎているんだ。それで、貴族たちはせめて、何とかワタシに取り入ろうとしてきた。『ウチの娘を后に貰ってくれ』とか、賄賂とか。
いい加減、そういうのが嫌になったって言うのもあるけど、自由だったのにいきなりいろんなことを言われて対応しきれなかった、心がね。だから、ワタシは逃げた。あんな格好をして、貴族社会から離れたかった。
この髪のウェーブ、自前じゃないんだ。そういうのも全部城下町でやってもらった。あの声で話したら大抵の人は女だと思ってくれるから私の正体に気付く人はなかった。そこには今までどおりの自由な生活があった。
ワタシの顔色を窺ってくる人もなかったし、皆対等だった。凄くいい空気だった。ワタシはそうやって二年間逃げてきた。
でも、それはもう辞めるよ。逃げない。ワタシはあの国を、国民を守りたい。国に戻ったら城下町に行って真実を言おうと思ってる。」

「お前の格好見ても何も言わなかったのか?一応付き人とか、乳母とか居るんだろ?」

「居るけど。ワタシの格好を見て貴族たちは何か言いたげだったけど、何も言わなかった。国を継ぐ人間の機嫌を損なったら色々と大変だから。形だけとはいえ、一応最高権力者だし。特にワタシは今までの世継ぎたちと違って色々見てきてるからね。下手に刺激しないほうが無難と思ってるんじゃないかな。」

「王って言っても色々だな。」

溜息混じりに大地がそう言う。

「国が違えば環境が違うからね。」

苦笑をしながら雷が答えた。


少しして警告が告げられた。

『ここからは雷の国に入る。責任者の名と、属する国を述べてください。』

雷は椅子から立ち上がって深呼吸をひとつしてモニタの前に出る。

「ワタシは雷の国の次期国王、雷だ。これから帰還する。港を開けてくれ。」

そう言った雷を見た通信員は慌てて手続きを行い、取り入るような笑顔で自分の名を言い、入国を促した。

「...オレ、こういうの苦手だわ。」

大地がそう呟いた。











桜風
05.9.22


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