雷の章 第3話





「お帰りなさいませ、雷様。後ろに控えている者たちは見ない顔ですが従者ですね。それより、どうしてそのようなお姿であられるのですか?雷様のような美しい容貌にはそのようなみすぼらしい衣装は合いません。私めが献上致しました布でお作りになったあの衣装が良くお似合いでしたよ。」

機嫌をとるような仕草で雷を迎える人がいた。

雷はあからさまに辟易した表情で聞いており、『従者』と表現された炎狼たちは顔を顰める。

(『従者ですね』と来たか...断定かよ。)

雷は内心後ろの仲間たちに謝りつつ、

「彼らは丁重にもてなしてくれ。ワタシは一度着替えて国王陛下と話をしなければならない。」

と命じて去っていった。


少し時間が経過した。

そんな中、炎狼たちはというと。

「この国の『丁重なもてなし』ってこんなことするんだな。」

どう見ても牢だろうという所に投げ込まれていた。

「ねぇ、何で抵抗しなかったの?」

隣の牢に入れられた沙羅が壁越しに聞いてきた。沙羅だけ別の牢に入れられたのである。

「こちらの立場が悪くなる行動は控えたほうがいいだろう。それに、放っておいても今日、明日のうちに雷が来るだろう?」

既に寛ぎモードだった飛翔がそう答えていた。

「なあ、何寛いでいるんだよ。少しは慌てようっていう気がないのか?」

そんな飛翔を見て炎狼が呆れる。

「そうは言うが、国にいるときにはこんなにゆっくり出来る時間なんてなかったんだから。ゆっくりできる時にはゆっくりしたいじゃないか。」

「...今はそんな場合か?!っつうか、お前相変わらず忙しいんだな。」

「まあね。家には着替えと風呂と食事に帰っているだけだったから。久し振りにゆっくり本が読めると思って帰ったらエデンだったしな。」

飛翔の言葉を聞いて、炎狼が手を合わせる。

「ご愁傷様。」

「...飛翔、お前の国の立場って何だ?」

気になった大地が聞くが、隣から

「言っちゃダメ!楽しみが減っちゃうじゃない。」

と沙羅の抗議の声が聞こえてきたため、飛翔苦笑をしながら肩を竦ませて答えは言わなかった。


場所は変わって雷の自室。

服を着替えて部屋を出ると外には何人か立場のある人たちがいた。

「雷様、このたびは無事の帰国、心よりお喜び申し上げます。」

(...心から残念ですって思ってるクセに。)

「ワタシと共にここへ来た方たちは?」

炎狼たちの所在を聞いてみると、

「お客様方は客室でお休みになっておいでですよ。お疲れなのでしょう。」

という答えがあった。

それなら仕方がないと思った雷は一人で国王に謁見することにした。話をするだけだからぞろぞろと揃う必要もないだろうと思ったのである。

「ワタシは父と話がある。皆は席を外しておくように。」

そう言って国王の居る部屋へ向かった。


ちなみに、その頃の炎狼たちはというと、

「雷様を唆したまま国外に居ればよかったものを...。あの役立たずは何の用で帰ってきたのだ。お前たちはアレとどういう関係だ!」

と尋問を受けていた。

(こんな言われようの雷に同情するぜ。)

炎狼はこっそり思った。


「父上、戻りました。」

「雷、か。そのまま戻らなくともよかったのだぞ?お前には王族は窮屈すぎるだろう?」

「...そうですね。でも、もう逃げるのはやめることにしました。ここが窮屈ならもう少し住み良い環境にしますよ、自分の力で。」

「そうか。ところで話があると聞いているのだが?」

「はい。実は―――。」

雷は今までのことを話した。

父は目を瞑り、深い息を吐く。

「そうか。しかし、残念ながら私にはその神器とか言ったか、それの封じてある所に心当たりがない。この城に伝わる物も重要書類でさえ色々書き換えられているからな。」

「いいえ、大丈夫です父上。ワタシには心当たりがあります。」

父は目を瞠る。

「幼い頃からこの城中を遊び場にしていたのですよ。友がいないから一人で遊ぶと言ったらここの探検しかないでしょう?ワタシが『神器を封じてある所』と聞いてすぐに浮かんだ場所があるのです。おそらくそこかと。そこではなかったら...その時考えます。」

そう言ってウィンクをした。

「...雷、その姿でそれはやめろ。」

「申し訳ありません、クセです。」

そう言って雷は肩を竦ませて笑う。それにつられる形で父も笑う。

どれ位ぶりだろう。自分がこの城の中で父と笑うのなんて。

雷はここで笑っている自分を嬉しく思った。











桜風
05.10.9


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