雷の章 第4話
昼食には誰も来なかった。 よほど疲れていたのかなと思った雷は皆を休ませてやろうと何も言わなかったが、夕食にも誰も来ない。 城の者に聞いてみると呼んだが返事が無かったので寝ているのではないか、と言われた。 それにしてもおかしい。 不審に思って席を立つ。 そのままの足で客室に向かい、全ての部屋を調べてみたが炎狼たちの姿はどこにもない。 慌てて臣下の一人が、 「町にお出掛けになられているのでは?」 と言ってきた。 出会ったばかりの頃なら信じていただろうが、生憎既にひと月近く寝食を共にしている。炎狼や沙羅、そして巻き込まれた大地ならまだその可能性はあるが、飛翔と氷でそれはない。相手の出方を見るタイプだし、出かけるにしてもまず自分に声を掛けるはずだ。 嫌な予感がして走る。 目指すはこの城の地下。牢のある場所。 一方、見事に放置されている炎狼たちは、 「腹減った...」 炎狼が呟いていた。 「なあ、二食抜きってありか?」 「お前は子供の頃には色々やらかして一日食事抜きって事がしばしばあっただろう?」 「今は育ち盛りだろ?!っつうか、一日抜きにされたことない。結局母上が一食は持ってきてくれていたから。」 「甘やかされているなぁ。」 大地が呆れたように呟き 「だから今は頭が上がらないんだよ。」 と飛翔がからかうように言った。 その横で静かに氷が何かしている。 「氷、何をしているんだ?」 炎狼が興味を持ち、声を掛けると、 「炎狼。一応、ここで炎は使うなよ。」 とだけ返して何か差し出してきた。 小さな、丸い...珠? 「何だ、こりゃ?」 「水だ。空気中の水蒸気を集めて一応不純物取り除いたから綺麗だぞ。空腹ならこれでも口に含んでいろ。それがなくなるまで喉を潤せるから少しはましだ。あとひとつしか作れなかったのだが...」 「沙羅にあげてくれ、私は大丈夫だ。」 「同じく。」 残りの二人にそう言われて氷は格子から手を出し、沙羅に声を掛ける。 「沙羅、これを口に含んでいれば少しは気が紛れるぞ。一応、水だけどな。」 静かに受け取った沙羅はそれを口に含んだ。 「甘...い?何かほんのり甘いよ?」 「水にだって味はある。少し甘いものなんだ。空腹だから余計にそれを感じるんじゃないか?」 氷の答えに納得して、口の中のほのかな甘みに沙羅は少し機嫌が良くなった。 「...来たか?」 ふと、飛翔が呟く。 バンッ!!という音が少し離れたところから聞こえてきた。 勢いのある足音共に姿を現したのは、 「よう、おれら忘れられたのかと思ったぜ?雷。」 「すまない。」 雷は皆に頭を下げ、自分に付いてきた臣下たちに向き直り、鋭い口調で言う。 「これは一体どういうことだ?!ワタシは『丁重にもてなすように』と言っておいたはずだが?それに、皆はどこかと聞けば客室で休んでいると。―――いつからこんな地下の、狭い牢がこの城の客室になったんだ?ここでどうやって丁重にもてなしていたのだ?」 雷に冷たく言われた臣下たちが答えに窮している。それを不快に感じながらも雷は牢の番をしている者に言って炎狼たちをそこから出した。 「すまなかった。」 「いや、中々快適だったみたいだぜ、飛翔にとっては。」 「静かで涼しいし、これで本があったら言うことなかったんだけどね。」 「...お前、本当に神経が太いな。」 大地が呆れながら飛翔に言うが飛翔は首を傾げて「そうか?」と答えた。 |
桜風
05.10.23
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