雷の章 第5話
遅い夕飯を摂った後、それぞれが、今度は客室に案内される。 飛翔が部屋で寛いでいるとノックをして雷が声を掛けてきた。 「飛翔、ちょっといいか?」 「どうした?」 飛翔は部屋のドアを開けて顔を覗かせる。 「どうだ、部屋の使い心地は?」 「―――悪くない、な。」 「そうか、それは良かった。ゆっくり休んでくれ。」 そう言って部屋から出て行くときに小さく潰された紙の切れ端を落としてドアを閉めていった。 雷の用件が部屋の具合を伺う為だけとは思っていなかった飛翔がそれを拾い上げて広げる。 『今夜十二時。外から部屋に来てくれ。城下に行きたい。』 と書かれており、自室を示す図も描いてあった。 (ま、いいけどな。) その紙を燃やして証拠を隠滅したあと、飛翔は時計を見た。あと、一時間。 時間になり、雷の部屋に行く。 指示されたとおりにバルコニーから外へ出て地図にあった雷の部屋に向かう。 小さくノックをして「雷。」と声を掛けると、姿を現した雷は昨日までの姿に戻っていた。 「ごめん、こんなことに力使わせて。」 「いいけど。雷を連れて行けばいいのか?」 「いや、皆も、かな?一応皆の部屋を訪ねて飛翔と同じコンタクトの取り方したから。ああ、でも、沙羅は分かってくれたかな?」 「神器の事じゃないんだ?」 悠長なことを言っている雷を見て飛翔は思ったことを口にした。 「まあ、そうなんだ。...どうしよう。」 「それなら、『気付かないならそれで仕方ない』で良いだろ。態々起こすこともないだろうし。じゃあ、行こうか?皆を拾っていけばいいんだな?」 「あ、でも沙羅を一番にお願い。身支度に時間がかかるかもしれないから。」 「了解」と言いながら飛翔は風を呼んで雷と共に外へ飛んで出る。 沙羅の部屋のバルコニーに降りた。 雷のときと同じようにノックをすると沙羅が顔を覗かせてきた。 「あれ、他の皆は?...雷、いつもの格好に戻ってる。」 「沙羅を一番に迎えに来たのよ。気付いてくれたのね。」 「まあ、ね。部屋の使い心地を聞くだけであんな時間には来ないと思ったから。じゃあ、他の皆も迎えに行くんでしょ?神器のこと?」 「あー、ごめん。違うんだ...」 雷が申し訳なさそうに言う。そんな雷を気にする様子もなく、沙羅は「そ?」と一言だけ言った。 他の三人も連れて城の外へ出た。 「ごめん飛翔、ここらで降ろして。後は歩いた方がいい。」 雷に言われて飛翔は皆を降ろす。 「なぁ、ここからどこへ行くんだよ。」 炎狼が少し不機嫌に聞いてくる。 「アタシがお世話になっていたところ。ケジメをつけたかったし、皆にもこの町の構造を知ってもらいたいと思ったから。」 「なんで?」 「たぶん、アタシが神器を手にする試練を受けているとき、また彼らに拘束されると思う。だから、ここに避難しててもらいたい。」 「...そうなると、この町の人たちにとってオレたちは迷惑じゃないのか?」 大地が問う。 「そう、かも知れない。でも...ワタシが頼れるのはここしかないんだ。」 少し辛そうに雷が言葉を紡ぐ。 「まあ、理由を包み隠さず話してそれで受け入れてもらえればそれに甘えて、ダメなら何とか姿を晦ませておけばいいだろ。」 氷が沈んだ雷にフォローを入れる。 そして気を取り直した雷が先頭を歩き、町の中へ入っていった。 |
桜風
05.11.13
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