雷の章 第9話
皆は雷の示した暖炉の傍で立ち尽くしていた。 「まあ、子供のころ遊んでたって言ってものね。」 と沙羅。 「ちょっと前の女装してた雷を見てたらこんな埃臭いところに出入りしてなかったって簡単に想像できそうなものだったよな...」 と炎狼。 「さて、どうする?」 暖炉内で見つけた穴を覗き込みながら飛翔が皆に問う。 確かに、子供なら通るのに苦は無い。 今でも沙羅と、細身の飛翔が通るのは可能だろう。しかし、身長が180を超える大地と氷。そして日ごろ鍛錬を重ねているために体格がいい炎狼は正直無理だ。 口に出さないまでも皆はそう思っていた。 「なあ、飛翔。中はどうなってるか分かるか?」 少し考えていた様子の大地にそう言われ、飛翔はそのまま穴に入る。 「横穴だな。高さは..沙羅は腰をかがめて進めばいいが、私だと四つん這いになった方が楽かもな。幅は、やっぱり狭いな。」 「何か手があるのか?」 いつも口数の少ない氷が声を掛ける。 「人んちの地下の穴。広げていいと思うか?」 誰に問うでもなく大地が呟く。 「いいんじゃねぇの?城が崩れないようなら。」 どうとでもなれといった感じで炎狼が答えた。 「後で元通りに直せるのか?」 「ああ、それは心配ない。」 「なら、いいんじゃないの?」 「そうだな。すまないが飛翔、上がってきてくれ。」 大地のそう言われ、飛翔は穴から抜けた。 そこへ今度は大地が入る。 「キツ...」 穴にギリギリで嵌った大地がそう呟いた途端、姿が消えた。 「大地?!」 「埋もれたか!?」 皆が心配していると穴の中から砂の流れるような音がしている。 「...大地?」 不思議に思って声を掛けると、 「ま、今はこれくらいでいいだろ。入る順番はどうする?オレはこのままで、後は...」 と声を掛けられた。 「ねえ、明かりはあるの?」 沙羅の疑問に大地が 「んなワケないだろ。暗いぜ。」 と答えると 「じゃ、わたし2番!」 と言って穴の中に入っていった。 その後は飛翔、炎狼、氷の順に入っていった。 「炎狼、明かりを」 「って炎か?酸素なくなるぜ?」 そう言った炎狼に対して 「思ったとおりね。そんなときはわたしの出番よ!」 そう言って沙羅は 「光の精霊、ルミエール」 と言って召喚をする。 今回のは沙羅の手のひらの上に小さな光の玉が浮いている。それの照らしている光の範囲は思ったよりも広い。 「助かる。」 そう言って大地は足を進めた。ズボズボ、と言う音と共に皆も続いた。 行き着いたその先は枯れ井戸だった。 梯子を上っていき、外へ出る。皆が外に出た後、大地はまた井戸の中に降りて道をほぼ元通りに修正した。 井戸を上ると炎狼、飛翔、氷の3人が靴を脱いでいた。 「どうした?」 「いや、うん。お前は気にならないだろうよ。沙羅も。お前らブーツだもんな...」 炎狼が言いながら靴の中の砂を落とす。 「そう恨めしそうに言うな。通れなかった道を通ることが出来たんだから。」 砂を出し終わった飛翔が炎狼を嗜める。 「さて、ここで夜を待って城下町に行くか。」 そう言って夜になるのを待ち、飛翔の風に乗って皆は城下町へと向かった。 |
桜風
06.1.9
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