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朝食の時間になっても大地は出てこない。
皆の目が自然と炎狼に向く。
「待て」
抗議の意味も込めて炎狼が言うが、
「頑張って!」
ぐっと握りこぶしを作り、沙羅が応援する。
「今までの経験で得たコツがあるだろう?」
静かな飛翔の指摘に
「ない!あんなのもうイヤだ。いい加減開放されたと思ったのに!!」
「明日以降もあるよ?」
力説している炎狼に雷がトドメを刺す。
撃沈した炎狼を心配そうに見ていた爛が
「あの、宜しければ私が...」
と立ち上がったが、
「いや、ダメだ、爛。爛をそんな危険な目に遭わせるわけにはいかない!」
そういって炎狼は気合を入れて部屋を出た。
「...自分が、って名乗らないんだな、砂輝ちゃん」
空也のその言葉に砂輝は
「お兄ちゃんを起こすのってホントに面倒ですから」
と笑顔で答えた。
暫くして、疲れきった炎狼とダルそうな大地がやってくる。
「悪い...」
遅くなったことに対して大地が謝罪するが
「おれにも謝れ!!」
炎狼は勢いよく振り返り、大地に抗議した。
大地は炎狼を一瞥して溜息を吐き
「悪かった」
と一言言って席に着く。
「かわいくねーーー!!」
「年下にかわいいと言われて喜ぶ男なんてそうそう居ないんじゃない?」
冷静な雷のツッコミが炎狼を余計に腹立たせた。
その後の朝食では、炎狼はテーブルマナーもへったくれもなく、ただひたすら自棄食いをした。
その隣で爛は炎狼を心配しておろおろしていた。
皆の酔いと目もさめたころ、城を出ることになった。
「そういえば、霞は今日は礼拝してないんじゃ...?」
「ええ、でも。今日からは神官ではないから」
「除籍されちゃったの...?」
恐る恐る沙羅が聞くと
「いいえ、休職です」
笑顔で霞が答える。
そんなシステムがあるんだ...と納得する皆が楽しくて霞は笑う。
「では、霞さん」
「はい」
「よろしくお願いしますね」
「わたくしがここから出て行くと結界が...」
「分かっています。大丈夫、私は『久遠』です。この国を守ります。だから、時の勇者、霞様。貴女は、皆の愛する世界を...」
霞は強く頷く。
「ヴィーク様の加護のあらんことを」
久遠はそう言って礼をする。
久遠のディースや他の見送りに来た者たちも同じく礼をした。
「永遠の時を穏やかに」
霞はそう応えて見送りに来た者たちに背を向けた。
「久遠様、兄をこき使ってやってください。役に立つと思います」
飛翔がそう言う。
「任せろ。当然役に立つ」
「爛のこと、お願いします」
炎狼が頭を下げる。
「私も、この国を助けるために力をお貸しします」
爛が炎狼にそう伝えた。
「久遠様。こいつ、小さいけど役に立つんで。オレの弟子ですから」
大地が砂輝の頭に手を置いてそういうと、砂輝は乱暴に頭を振ってその手を払い、
「お兄ちゃんの弟子じゃなくてもあたしは役に立つの!」
「ええ。頼りにしていますよ、砂輝さん」
久遠に微笑まれ、砂輝は紅くなって「はい」と答えた。
皆はそれぞれ久遠に挨拶をして先に行く霞に続いた。
「皆さまに、神のご加護を」
久遠は再び祈りを捧げた。
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