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皆が慌てている中、
「まあ、こうなってしまったものは仕方がない」
と飛翔は落ち着いた様子で本を閉じて立ち上がり、操縦席に着く。
が、
「全然体勢が良くなってないぞ?」
外を見ながら大地が声を掛ける。
「操縦が利かない、か。外からこちらを狙っている様子は?」
「分からない。けど、これと同じような船はない」
「じゃあ、大地。その扉、壊せるか?」
「は?!」
「さっきから風を使おうと思っていたのだが、協力してもらえそうにないんだ。取り敢えず、外に出た方が安全だろう?」
「いや、安全って」
「空中でしょ?風が協力してくれないって...だったら落ちるだけじゃない!」
「これだけの質量を支えるよりは、人を6人支える方が遥かに楽だし、確実なんだ」
あくまでも冷静な飛翔の言葉に、
「信じるぞ?」
と大地が確認し、
「ああ、必ずねじ伏せる」
飛翔も鋭い視線で頷いた。
蒼くなっている沙羅を雷が慰め、氷と炎狼も降りる覚悟を決める。
「いくぜ!」
そう言って大地は扉を叩き壊す。
最初に飛翔が降り、炎狼、氷、沙羅、雷、大地と続く。
「まだかよ、すぐに地面とこんにちはになるぜ!」
炎狼が飛翔に声を掛けている。
何か口の中で呟いていた飛翔が
「仕方ない」
と呟く。
「ちょ、ホントにぶつかるよ!!」
「ミンチな死に方だけはしたくない〜!!」
雷と沙羅の悲鳴が上がったときにはもうすぐ地上といったのところで、そして、上昇気流が吹き上げてきた。
それが一旦クッションのような形となって一度跳ね上がり、その後皆は地面に落ちた。
「痛ぁ〜...」
腰を抑えつつ雷が立ち上がる。
「ギリセーフ」
炎狼が脱力してその場に寝転び、
「大丈夫か?」
大地が抱えている沙羅に声を掛ける。
「ご、ごめん。ありがとう」
自分のクッションになってくれた大地から慌てて離れ、沙羅は向き合ってお礼を言う。
「お疲れ」
「私はいいのに...」
氷は飛翔を支えており、飛翔は気恥ずかしそうに離れた。
先に落ちた船は炎上することなく、ただ、へしゃげていた。
皆はここの空気に奇妙なものを感じた。鳥肌が立つ。
そんな奇妙な感覚にとらわれていたが、突然飛翔は視線を鋭くして
「お迎えが来たよ」
そう皆に声をかけた。
周りには時の国の兵らしき者たちがそこを囲んで銃を向けている。
「こういう歓迎のされ方、初めてだな」
炎狼はそう呟きながら立ち上がり、両手を挙げる。
連行された皆は同じ牢に入れられた。城の中は外とは違って不思議と空気が澄んでいるように感じる。
「珍しいな。仲間全部を同じところに閉じ込めるなんて」
大地が周りを見つつそう独りごちる。
「何、普通に感心してるのよ!これからどうするの?」
不名誉な投獄に気が立っている沙羅が飛翔に聞く。
「まあ、向こうの出方を見てみたい。どういう性格の者か。たぶん、この中の何人かをまず外に出すだろうな。出て行ったメンバーを見て少し考えてみたい」
冷静に話す飛翔に沙羅はふてながらもその場にしゃがみこんだ。
少しして飛翔の予測どおり、兵士がやってきた。
先ほどの兵の中には男性も居たが、今回は女性のみだ。
「お前と、...どれだ?」
沙羅の腕を掴んだ兵がもう1人の兵に聞く。
「女は2人だと聞いていたんだが...こいつか?」
そういいながらもう1人の兵は雷を掴み、そのまま鍵をかけて出て行った。
「飛翔、感想は?」
苦笑をしながら炎狼が飛翔に声を掛けると
「どの国の牢の構造も似ているな...」
という答えが返ってきた。
「ああ、そうか。飛翔は全ての国の牢を見てるんだったな」
飛翔の答えに氷がそう言うが
「違う!女を連れて行くつもりで、雷を連れて行ったってこと!」
「私の17年間の努力は無駄じゃなかった」
「あ、そ」
「で?どう見る?」
大地が飛翔に聞く。
「さっきの兵は親衛隊か何かだな。きっと女王の側に控えている隊だろう。そして、情報が正確だ。まあ、詰めが甘かったところは否定しないが、女性が2人。間違いではない。でも、たぶん雷は帰ってくるな。そして、雷は機転が利く。それに、私たちのエンブレムはそれぞれが持っている」
「でも、神父が言ってたんだけど。これって神気を放ってるらしいぞ。だったら、神への信仰が篤いヤツとかなら気付くんじゃないのか?」
大地は自分の腕に嵌めているエンブレムを触ってみる。
「ここではその逆だろう。女王自ら直接神の信託が聞けるというコトは、神界に近い空気だと考えられる。実際あのエデンと空気が似ている気もするしな。というコトは、私たちとは比べ物にならないくらい神気に慣れてしまい、力が中途半端だと却って気付きにくいんじゃないのか?」
そんな話をしていると、足音が聞こえる。
それは、戻ってきた雷とそれを連行している兵だった。さっきと様子が違う。
先ほどの兵たちは軍服を着ていたのに対して、今、雷を連れてきた女性は黒のハイネックの上に黒の道着のようなものを重ね、下も黒い。
見た目は20歳くらいで、髪の色は薄い金色で瞳は朱色だった。肌は透けるように白く、少し、雷の神竜であるヒカリと似た気配がある。
牢の中に居る飛翔たちを見て苦笑をし、鍵を開けて雷を入れる。
「大人しくしているんですね」
「もう1人は?」
「あの方は女性でした。でも、こちらの方は勘違いだった。だからお返しするんですよ」
彼女はそのまま去っていった。
「服を脱がされたってところか?着飾ろうとされたんだな」
「ああ、しかし。彼女は最初からワタシが男だって分かっていたみたいなんだ」
そう言いながら雷は首をかしげた。
「どういうコトだ?」
「さあ?まあ、出ろというコトなんだろうな」
飛翔は牢の入り口に手を伸ばす。
そこには、鍵が挿したままになっていた。
それを回して扉を開けて、皆は牢を出た。
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