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雷が道案内をする。自分が連れてこられたときの道はしっかり覚えていた。
「たしか、この先が謁見の間だって...途中に女官たちが話していたから」
雷に続いて飛翔たちも陰から部屋の中を覗く。
そこには、他国から連れ去られた能力者がいた。飛翔たちが知っている者全てが揃っている。
沙羅は着替えさせられて、謁見していた。
「何で?」
「さあ?」
「どうする?」
「様子見。と言いたいところだったが、タイムアップだな」
そう言って飛翔は振り向きざまに回し蹴りを入れた。
気配を殺して近づいていた兵士がいたのだ。
外が騒がしくなると謁見の間の中にも緊張が走る。
沙羅は急いでドアのほうへと下がり、エンブレムの力を解放する。
皆も部屋の中に入り、エンブレムを解放する。
檀上の女王が一瞬、眩しそうに目を細める。
兵士が彼らを囲もうとしたとき、
「あなたたちは下がりなさい。この方たちにお願いしましょう」
そう言って洗脳されているであろう爛たちに視線を遣る。
「畏まりました、久遠様」
そう言って恭しく礼をして爛が炎狼目掛けて走る。
それに続き、他の者たちも自分と同じ属性のものに走っていった。
「風竜、ハヤテ!」
飛翔はすぐにハヤテを呼び出し、
「沙羅のフォローに回ってくれ」
指示を出して空也を迎え撃った。
他の者も飛翔に倣い、自分の竜を召喚する。
時の国の兵たちは押されているこの状況に焦り、女王に指示を仰ぐが、先ほどと同じくその場を動くことを許されない。
「わたくしも参りますわ、久遠様」
そう言って側に控えていた神官が一礼をした。
髪は肩甲骨の下まで伸ばされたまっすぐでつややかな黒髪。瞳は漆黒で肌も白い。
彼女は悠然と階段を降り、棒を手にした。
それは自分よりも長く、なれて居なければ扱えない代物と思われる。
「私が...」
同じ棒術を使うホムラが相手になろうと進み出たが、
「残念だけど、霞様には指一本触れさせはしないわ」
そう言って目の前に立ちはだかったのは先ほど雷を返しに来た女性だった。
「頼んだわよ。唯(ゆい)」
「はっ!」
2人の会話の様子を見ていたホムラは、唯を無視して霞に手を出すことは出来ないと判断し、
唯に向かって打ち込んだ。
唯はホムラの攻撃を素手で受け止め、ホムラの棒を持ったまま蹴りを入れる。
紙一重でかわしたホムラはそのまま距離を取り、慎重に唯の出方を見る。接近戦は自分には向かない。
唯はくるくるとホムラの棒を回した後、投げて返した。
不審に思いながらも、ホムラはそれを拾い、構える。
「私には、必要のないものだもの」
唯はそう言ってまた対峙した。
炎狼は自分に向かってきた爛を傷つけないように慎重に小太刀を振り、防戦に徹しており、大地は楽しそうに向かってきた砂輝に困惑しつつも相手をしていた。
飛翔は淡々と兄と殴りあったりし、どちらかといえば、押していた。
氷は、こういう戦闘が苦手な沙羅を守りつつ周りの状況を把握しようとしており、雷は少し前線に出て自分に向かってくる者たちをあまり傷つけないように慎重に剣を振るう。
突然悪寒が走った。
雷が慌てて振り返ると、そこにはいつの間にか後ろを取っていた霞が棒で突こうとしていた。
慌てて雷は後ろに飛びつつ、剣で霞の棒を防ぐ。
しかし、霞の棒の遣い方が何か妙だった。
意外と慣れていない感じがする。
寧ろ慣れているのは別のもので、それに近いから霞はそれを遣っているのではないだろうか?
そんなことを考えながらの戦闘だったため、霞に懐に入られた。
マズイ、と思った途端、霞が耳元で
「天井にあるものが彼らを操ってる。割れば開放されるわ」
雷は一度距離を取るため、後ろに飛び、再び地を蹴り霞に向かった。今度は雷の剣と霞の棒が交差し、お互いが顔を合わせる。
「天井にあるもの?...この天井に埋め込まれているでかい宝石みたいなのか?」
自分の剣を鏡のように使い、天井を映して確認する。
霞は、雷の視線を辿って確認をし
「そう。彼らにも付いているでしょ?それが魔族が洗脳する力を増幅させる装置なの。装置って言ってもそんな大したものではないけど...」
逡巡の後、雷は霞に
「キミが嘘を吐いていないって証拠は?」
と、問う。
「無いわね。だから、自分の勘でどうぞ?するか、しないか2つにひとつだし」
少し、霞と目を合わせていたが、
「飛翔、ワタシをこの場で上に飛ばせる!?」
少し離れたところにいる飛翔に声を掛けた。
空也との攻防を繰り返していた飛翔はちらりと雷を見遣り、天井も見る。
「ヒカリ、リク。すまないが側の窓を開けてくれ!雷、着地は自己責任だぞ!!」
窓の側で戦っている2人に声を掛け、飛翔は目の前の兄を蹴り飛ばす。
ヒカリとリクが窓を開け、
「雷!跳ねろ!!」
飛翔に言われた雷が跳ね、風に乗る。
空也がそれを阻止しようとするが、飛翔に間合いを詰められ、飛翔と対することで精一杯となる。
雷は風に乗ってそれを地面のように蹴って勢いをつけて天井に埋め込まれている装置に神器の大剣を突き立てた。
そこからヒビが外に向かって広がり、パラパラと崩れ、そして、雷と共に大きな塊が落ちてくる。
「大丈夫?」
部屋の隅にいた沙羅が駆け寄って雷に手を差し出す。
「いったー...落ちてばっかりだね」
苦笑しながら沙羅の手を取って立ち上がる。
周りを見ると驚くほど落ち着いている。
「炎狼..様?」
「お兄ちゃん?!」
洗脳されていた人たちの記憶も戻ったようで皆は安心した。
ただ、1人を除いて...
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