|
解散した後、飛翔は城の上に浮かんでいた。
自分たちが目指す方向を眺めている。
あの先でこの旅が終わる...
「やっぱりここか」
下から声を掛けられた。
「氷...?どうした?」
風に乗ってゆっくり屋上まで降りる。
「どうやら、兵たちがあの船の中身を回収してくれていたらしい」
そう言って手に持っていた本を軽く掲げた。
「あ。良かった!失くしてしまったことをどうごまかそうかと悩んでいたんだ」
そう言いながら氷の持っていた本を受け取る。
「本当に大雑把だな」
そんな飛翔の姿に氷は苦笑した。
「まあ、よく言われるよ。寝ないのか?」
「飛翔こそ」
返されて飛翔は息を吐き、その場に座る。
氷もその隣に腰を下ろした。
それから2人はしばらく無言だったが、
「この国に、魔族が現れたのは偶然だったのかな?」
氷が沈黙を破った。
「いや、恐らく違うだろう」
「根拠は?」
「風真が、言っていたんだ。魔界にも時空の歪のようなところがあって、そこは実は人界に繋がっていたのだ、と。実際、色んな本を読んだが下級魔族が現れたという感じのことは何処の国にもあるみたいだ。
しかし、今までの歴史上で高位魔族が現れたのはこの国だけ」
飛翔の言葉に氷が驚く。
「それは本当か?」
「さあな。でも、これに書いてあった」
そう言って先ほど受け取った本に触れる。
「さっき言わなかったのは?」
「あんまりいい情報ではないだろう?」
困ったように笑う飛翔に氷は「それもそうだな」と呟く。
「明日は、どうするんだ?発つんだよな?」
「ああ、久遠様の口調から言っても時間がないからな。皆もそのつもりだろう」
「なあ、霞の能力って見当がついているのか?」
「んー...さっきのうちに聞いておけば良かったと今更ちょっと思ってるけど、多少見当はついてるよ」
氷は少し目を大きくして驚く。
「そうだな。氷のところの聖職者って何が出来る?というか、仕事って何?」
「仕事?退魔とか、破魔。あとは、聖水を作ってそれが結界の元になるとかそういう感じか?」
「やっぱり何処の国も似てるんだろうね。つまり、霞の能力もそれに近いものだと思う」
「聖水を生み出すのか?」
大真面目に返す氷に飛翔は苦笑をしながら
「それって、氷の能力だろ?
たぶん、結界。あと、昼間の騒ぎのときに見たんだけど。彼女は時空の移動も出来るみたいだ。消えたかと思うと雷の後ろを取った。雷ほどの腕の持ち主の背後なんて簡単に取れるはずないだろう?
たぶん、そういうところだと思う。信仰心の篤い国だしね」
なるほど、と納得して氷は頷いた。
「何で、こんな高いところが好きかなぁ?」
後ろから声がして振り返ると、大地がいた。
「大地?砂輝さんと一緒に過ごさなくていいのか?」
飛翔に言われて大地は苦笑をした。
「部屋に帰ったら寝てたんだよ。叩き起こしてまでする話もないし。まあ、大人しくここまで上がってきた」
「それなら、炎狼たちのところでも良かったんじゃないのか?」
「酒だろ?オレあんまり好きじゃないから。お邪魔だったのか〜?」
からかうように大地が言うと
「いいや。だが、態々苦手なところに来なくても、と思っただけだ」
と真面目に返す飛翔。
「まあ、ここまで来いよ。いい景色だぞ」
からかい返す氷。
「イヤだよ。すぐ近くの地面が見えると気分が悪くなる」
「そんなに高くないのに...」
飛翔が呟くと
「高いんだよ!普通は落ちたら死ぬ高さだ!ったく...」
後ろで大地がブツブツ言っているので飛翔と氷は顔を見合わせて笑い、腰を上げた。
「じゃあ、下に降りるか?」
氷に言われて、大地も「おう」と返事をし、城の中へと戻っていった。
|