水の章 第1話





風の国をあとにして、水の国に着くだろという日が来た。


「そういや、飛翔。兄貴の事いつから分かってたんだ?」

炎狼が聞いてみる。

「初めて会ったときからだな。あの人、風を使ったからすぐに確信したよ。」

「風を使うと分かるものなの?」

沙羅が疑問を口にすると、飛翔が

「人それぞれの雰囲気ってあるだろ?それに似たようなものなんだ。特に空也兄様の風は特徴が大きいから。
あの人の風は防御が極端に弱い。『攻撃こそ最大の防御』という感じの風を身に纏っているんだ。」

「確かに、防御が甘かった気がするな。」

一度手合わせした事がある雷が呟いていた。

「あとさ、何で隠してたんだ?」

「言っても何とかなることとは思えなかったし、お前に話せば2人とも何とかしようなんて考えかねなかったからな。」

飛翔のこの言葉に炎狼はムッとして

「それの何処が悪いんだよ?!」

と鋭い口調で聞く。

「悪くないが、話がややこしくなりそうだったからな。悪かったな、黙ってて。」

炎狼にきつく言われたにも拘らず飛翔は事も無げに言葉を返す。

「なんかさ、お前らって不思議だな。」

大地が苦笑しながら声を掛けた。

「何がだよ?」

突然微笑ましい目をしてそう言われた炎狼は不機嫌に返す。

「だって、喧嘩してるはずだろ?でも、飛翔はそんな感じしないし。オレの国の時だってお前ら喧嘩したはずなのに全然引きずらなかったっていうか、あっさりしてただろ?あの時は驚いたけどな。結構派手に言い合いしてた2人が同じ部屋でいいって言ったときは。」

「...気にしてなかったのって飛翔だけだぜ?あん時はおれはまだ腹立ってたよ。」

ふてながら炎狼が答え

「そうだったのか。すまなかったな、炎狼。」

飛翔の言葉に炎狼は益々機嫌が悪くなる。

「お前って本当に......もういいや。で?次の水の国はどんなところだよ。」

これ以上飛翔と話をしていてもやはりムカつくだけだと思った炎狼は自ら話題を打ち切った。

「ああ。...寒い、と思う」

自国のことを突然聞かれた氷の答えはそれだった。

「寒い、のか?」

「たぶんな。俺は慣れてるし、そろそろ春だから暖かくはなってると思うが...」

『春』と聞いて皆は安心するが、

「今の水の国と地の国の夜と比べて、どちらが寒い?」

飛翔にそう聞かれると

「地の国って寒かったか?」

と氷は首を傾げながら逆に聞いてきた。

「「「「......。」」」」

あの気温を非常に寒いと感じている飛翔以外は沈黙した。

「俺は、おかしなことを言ったのか?」

「いや、私はそうは思わないが...」

そう答えて、飛翔が改めて沈黙した仲間に視線を向けると炎狼と目が合った。

「飛翔、おれのエンブレムはお前に任せる!」

「いらない!」

「遠慮するな。お前は炎の属性も持ってるからそんなにダメージを受けないんだろ?!」

「観念しろ。お前は私の国の『真冬』を体験してるだろ。それより少し寒いくらいだ、多分...それに、そういう気候に慣れてる氷はお前の国や、地の国も文句をひとつも言わずに過ごしただろう?!」

それを言われると熱帯地方4人は黙らざるを得なくなる。

「ごめん、わたしちょっと部屋に帰るね。」

そう言ってふらふらと沙羅が出て行った。

「大丈夫か?」

心配そうに氷が呟き、

「まあ、大丈夫じゃないのか?」

大地が諦め顔でそう答えた。


少しして沙羅が勢いよく戻ってきた。

「見て見て!可愛い〜!!」

そう言って皆に見せたのが

「コート、だな。」

炎狼が答える。

「コート?」

「そう。寒いから、それを着ろってありがた〜い神の啓示だろうよ。おれも取ってくるわ。」

そう言って溜息を吐きながら炎狼が出て行き、他の皆もそれに続いた。









桜風
07.6.3


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