水の章 第2話





皆は何故か部屋に用意してあるコートを取ってきた。いつでもそのまま水の国に入れるようにという事だ。

「ところで、『寒い』以外に何があるんだ?」

良く考えてみれば『寒い』以外の国の特徴を聞いてないことに気が付いた雷が聞きなおした。

「そうだな。国王は男だな。数年前まで内乱が起こっててごたごたしてたけど、今はもう落ち着いている。あ、俺のところも風ほどじゃないが男尊女卑はあるな。女性は政治に参加できないんだ。えーと、あとは...」

氷が悩み始める。

数分の沈黙があった後、飛翔が

「じゃあ、聞いてないと困るって事は何か無いか?」

と助け舟を出す。

「ああ、国王には姫がひとりいる。彼女は我がまま、というか、世間知らずというか...まあ、気難しい方だ」

氷がそう言い、皆が頷いた。


少しして通信が入る。

『ここから先は水の国の領域となる。貴艦の認識番号と所属の確認をしたい』

氷がモニタの前に立ち、

「この船の認識番号及び所属は未だ不明だ。しかし、わが国と敵対する意思は無い」

と言うとオペレーターは

『副司令官殿!ご無事で何よりです!!』

と敬礼をした。

氷が敬礼を返すと入港口が開く。

飛翔の操縦により入港した。


「副司令官殿!」

港では整備士たちが氷に敬礼をする。

「ああ、何か変わった事は無かったか?」

「姫君様が..いえ、何でもありません」

またか、と言った感じに氷は溜息を吐いて片手を挙げて了解の意を示した。

一応、受けられる報告を受けていると人が近づいてきた。

恐らく、氷の上司だろうと皆が思っていたら

「氷、心配したぞ」

「司令官。申し訳ありません」

やはり氷の上司にあたる司令官が声を掛けてきた。

「まあ、お前のことだから何かに巻き込まれても凌ぐとは思っていたがな。こちらの方々は?」

炎狼たちを見て紹介を促す。

「はい、彼らは...陛下にもお話しせねばならないことがありますので、そのときに紹介させていただきたいのですが」

ここで紹介をしてもいいのだが、他国のものだということを大っぴらに言うのは憚れると思った氷はこの場の紹介を見送った。

「そうか。では、まあ。着替えてきなさい。国王陛下との謁見の手続きは私が済ませておこう」

そう言って司令官は去って行った。

「じゃあ、ちょっと付いて来てくれ」

そう言った氷が歩き始め、皆もそれに続いた。


氷の執務室に着き、皆が待っていると氷が着替えて出てきた。

膝下までの裾で丈の長い上着にその下も少し長めの丈の厚手の詰襟を着ている。恐らくその下にもシャツを着ていると想定されるものだった。

「あったかそ〜」

沙羅はその服装に思わず感想を零す。

「でも、少し重いけどな」

苦笑をしながら氷は応えた。

「そういえば、そんなに寒くないな。アレだけ脅されたのに、ちょっと拍子抜けって感じだったよ」

雷が安心したようにそう言い、大地も頷く。

しかし、炎狼が乾いた笑いを漏らしていた。

「どうしたの?」

「いや、建物の中は暖かいはずだぜ。ただ、外が半端なく寒いと思う...」

力なく炎狼がそう言い、答えを求めて沙羅たちが氷を見ると氷は静かに頷いた。

肩を落としている仲間を促して、氷たちは謁見の間に向かった。










桜風
07.6.17


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