水の章 第3話





謁見の間も荘厳な扉の前では司令官が待っていた。

「遅くなりまして、申し訳ありません」

「いや。しかし、全員揃っての謁見というわけにはいかない、な...」

司令官の目は沙羅に向かった。

氷もその視線を辿り、何が言いたいのか気がつく。

「いえ、ですが...許可は頂けませんか?」

「例外を作ると、この先も認めなくてはならなくなる」

「何?」

恐らく自分のことだろうと分かった沙羅が氷に聞く。

「いや、さっき話しただろう?女性は政治に参加できないって。その関係で、謁見する権利も持っていないんだ」

「でも、沙羅は...」

雷が庇おうとしたが、この国のものではないと庇おうとしたが言葉に詰まる。

もう、どう見てもこの国の者ではないのは明らかなのだが、氷が話さない方が良いと判断した手前自分が言うのは不躾だと思っていた。

「では、私と沙羅は外で待たせていただくこととします。ここで待たせていただく分は一応、問題は無いのですよね?」

飛翔が司令官に向かって提案した。

それを聞いて氷は少しほっとしていた。司令官も済まなさそうに

「そうですね。正直、こちらでお待ちいただけるのなら助かりますね」

と答えた。

「じゃあ、わたしは飛翔とここでお留守番しておくわ。飛翔が一緒なら皆も安心でしょ?」

沙羅もそう言う。

「すまない、ありがとう」

氷は2人に礼を言い、衛兵には自分たちが出てくるまで誰も中に入らないよう指示を出して謁見の間に入っていった。


「お久しぶりです、国王陛下」

深々と礼をして氷が言う。

「ああ、大丈夫だったようだね。皆心配していたよ。司令官が心配ないと落ち着いていてくれたから混乱は少なかったけれども。さて、何か話があると司令官が聞いているらしいが?」

穏やかにそう言った。

少し、国王は氷に遠慮をいるような気がする。

炎狼たちは国王の様子を見てそう思った。

「はい、実は...」

話を促されて氷はこれまでの経緯を話し、ここにいる仲間たちのことも話す。


ひと通り静かに氷の話を聞いていた国王は話が終わるとふう、と溜息を吐く。

「やはり、貴方は水の神、ルーン様の申し子だったのですね。この椅子も貴方にこそ相応しいと、私は今でも思っておりますよ」

と言いながら玉座から立ち上がる。

「ですから、何度も申し上げましたとおり。陛下以外、その椅子に座るべきではありません。勿論、自分も含めて。自分にその意思はありません」

目の前で何やら国家機密とも呼べそうな話が展開されている。

「どういうこと?」

「知らねぇよ」

話の飲み込めない雷たちはこそこそ話をするが、当然話が見えない。

こんなとき、飛翔がいればなぁ、と皆はそう思った。

たぶん、飛翔なら見当くらいはつくだろう。そうでなくても落ち着いてその場を観察している人が居れば何となく安心する。


そのまま、玉座は氷に相応しい、国王こそその椅子に座るべき人だ、というある種無意味な攻防が繰り返されていたが、突然扉が開いて衛兵が慌てて入って来た。

「何事だ?副司令官は誰も入れるなと言ったはずだが?」

鋭い口調で静かに司令官が言う。

「は!ご命令に反しましたことには如何様にも罰してください。これは私の独断であることも加えて申し添えさせていただきます!!」

最敬礼をしながら声を張ってそういう衛兵に雷は目を丸くして驚いた。

こんな兵士、自分の国には居ない。

「それは分かった。それで、何があった?」

静かに氷が聞く。

「は!副司令官殿のお連れ様が姫君様に連れて行かれました。行き先は牢だそうであります。何でも、姫君様の反感を買ってしまったらしく、烙印を..」

最後まで報告を聞かずに氷は走り出していた。

「おい、待て!飛翔なら大丈夫だ!!」

慌てて炎狼が追いかける。

一瞬呆気に取られていたが、雷と大地も追いかけていった。










桜風
07.7.1


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