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煌びやかなドレスに身を包んだ少女が牢の外に立っている。
年の頃は飛翔たちと大して変わらないだろう。
「さあ、この不埒者に罪人の証をつけてしまいなさい!」
「ですが、姫君様。烙印を押すには副司令官殿、司令官殿、そして国王陛下の許可が必要です。それを無くして烙印は押せません」
自国の姫にそう命じられて兵士は困っていた。
「それは後で取ればいいこと。お父さまや司令官。氷がわたくしのお願いを聞かないはずがありません!!」
自信満々にそういう彼女を見て沙羅が
「うわ〜。ホント、我がまま...」
と小さく洩らした。
「お前。今、なんと言った!?」
お前呼ばわりをされた沙羅は、カチンと来た。
何だかんだ言って、沙羅も国を背負う者として敬意を払われて育ったのだ。
それなのに、『お前』と蔑んで言われれば頭にくる。
反論しようとしたとき
「申し訳ありません」
飛翔が沙羅の前に立って頭を下げた。
「ちょっと!何で..」
「愚痴も、抗議も後で聞く」
抗議をしようとした沙羅を飛翔は軽く睨みつけて黙らせた。
「...お前も気に入らないわ。そこの。この者から烙印を押しなさい」
傍に居た兵士に向かってそう指示を出す。
命じられた兵士は半泣きになっていた。
この命令は理不尽だ。しかし、相手は自国の姫君。
そんな兵士の姿に飛翔は腕を出した。
「すみません...」
半泣きになりながら飛翔の腕に烙印を押そうとした。
しかし、辺りが騒がしくなり、
「その烙印は許可しない!!」
普段聞くことの無い副司令官の鋭い声が届く。
兵士の持っていた烙印に氷が張ってくる。もう、焼印を押すことは出来ない。
氷が牢の中まで入って、兵士の持つ烙印を取り上げた。
そして、
「お前は馬鹿か!!」
飛翔を怒鳴りつける。
周りの者は勿論、怒鳴られた飛翔さえ、氷を見上げてぽかんとしていた。
氷は飛翔の腕を掴み、牢から出て行く。
「お待ちなさい。その者はわたくしに無礼を..」
飛翔を連れて行く氷を姫が止めるが、
「あなたの越権行為に付き合う必要は無い」
氷は冷たく言い放ちそのまま飛翔の手を引いて出て行った。
沙羅は司令官に牢から出してもらい、その場を後にした。
「飛翔、お前は自分に無頓着すぎる!」
謁見の間の前まで戻って氷は飛翔の手を放し、またしても怒った。
「いや、しかし...」
飛翔が弁明をしようとするが、
「あのまま烙印が押されていたらどうするつもりだった?お前は罪も犯していないのに、ただ、あの姫に気に入られなかっただけで罪人だ」
「いや、だから...」
「いい加減、自覚しろ。お前が傷つくと悲しむ人がたくさん居るだろう?」
「はい...」
真剣な目で言われて飛翔も自分の行動が少々軽率だったように思えてきた。
「でも、氷...」
じっとその様子を見守っていた炎狼が声を掛ける。
「何だ?」
「飛翔、炎の属性も持っているからそう簡単に火傷なんてしないぜ?それに、傍に沙羅が居たからすぐに治癒してもらえれば痕なんて残らなかっただろうし...」
少し、遠慮がちにそう言う。
飛翔もそのつもりで居たから、沙羅の変わりに烙印を受けようとしたのだが、氷に怒られ、その説明も出来なかった。
「あー。だから炎狼は『飛翔なら大丈夫だ』って言いながら氷を追いかけたんだなー」
頭を掻きながら大地がそう呟いた。
氷は炎狼と飛翔を交互に見る。そういえば、炎狼はそんなことを言っていたような気がする。
「あ、いや。でも、心配してくれてありがとう」
飛翔がそう言うと氷はバツが悪そうに「ああ」、と短く答えた。
「ところで、あの姫様と何があったんだ?」
大地が聞くと沙羅が急に怒り出した。
「そう!聞いてよ!!あの姫、突然わたしと目が合ったっていうことで牢に連れて行ったのよ。無礼だって!何様?!」
「姫様でしょ?」
憤って興奮気味にそう訴える沙羅に雷は思わず突っ込んでしまった。
キッときつく沙羅に睨まれ、雷は目を逸らす。
「でも、ま。無事だったんだし良かったじゃないか」
大地に宥められて沙羅は引き下がった。
「ところで、国王陛下への報告は終わったのか?」
飛翔が氷に聞くと
「あ、いや。そういえば、全部終わってなかったな...」
と呟く。
また飛翔たちを置き去りにしておけば姫が騒ぐだろうということから、国王への報告は氷がひとりで続けて、残りの5人は司令官の執務室に招かれることになった。
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