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翌日。
早めの朝食を済ませて皆は氷の試練を受ける場所へと向かった。
「ねえ、車は?」
「今の季節は通れない、無理だ」
沙羅の訴えに氷はそう答えた。
ただ只管足を動かして前に進む。
「飛翔、風は?」
炎狼が風に乗って移動できないのかと聞くと
「凍りたいのなら、止めないが?」
と飛翔が返す。
少し前から雪が降っていた。上空で、しかも風を切って移動するには向かない。
口数も少なく、皆は黙々と足を進めた。
「ねえ、これ。渡るの?」
つり橋を前に沙羅が呟いた。
「ああ」
比較的風の強い谷間のつり橋は揺れている。
「もしかして、試練が始まってるとか?!」
雷もそんなことを言う。
「落ちたらちゃんと拾ってあげるから。ホラ、行こう」
飛翔が妙な言葉で皆を促す。
車ごと風に乗った飛翔の姿を見ている皆は渋々足を進めた。
寒さ以外の原因も加わり、大地は顔面蒼白だった。
夕方、やっと目的地に着いた。
「ここは?」
何かの集落の後と思われる場所だった。
「昔の、俺の故郷だよ」
氷はそう言った。
集落の傍には手作りの墓地があった。
途中で見つけて手折った野花をそこに供える。
祈っている氷の傍で皆もそれぞれ祈りを捧げる。
少し驚いた顔をして氷が皆を見ると
「お前の親父さんたちの墓なんだろう?」
大地がそう言う。
「ありがとう」
集落から少し離れた場所に洞窟があった。
「ここ?」
「ああ。ほら、此処だ」
洞窟の奥は氷の壁で行き止まりとなっていた。
しかし、その傍にエンブレムが嵌められる穴がある。
勿論、時の国のエンブレムもそこに嵌っていると皆が思っていたのだが、今回はまだ嵌っていなかった。
「いつもワタシたちより早いのにな?」
そう言いながら雷が自分のエンブレムを嵌める。
皆が嵌め終わったときに、時の紋章が突然現れて入り口が開く。
「こうやって届いていたってことか...」
感心したように炎狼が呟く。
「じゃあ、行ってくる。後は頼む」
そう言って氷は洞窟の奥へと進んで行った。
洞窟の奥へ進むと雪色の髪をした小さな男の子が居た。
「どうした?」
子供に向かって氷が声を掛ける。
「いらっしゃい。僕が、お兄さんに試練を出すんだよ」
そう言いながら振り返った。
突然、氷が凍り始める。
こおりに閉じ込められる形となった氷は身動きが取れない。
「お兄さん。お兄さんの試練は、そこから出て行くことだよ」
能力者である氷は、こおりを水に変えることが出来る。
しかし、どうしても上手くできない。
このこおりは自分の力を上回るということだ。
(クソッ!!)
どう足掻いても溶かせそうに無い。
少しして、少年がもうひとつ、目の前に氷柱を作った。
目の眼に映像が映し出されて氷は驚く。
「今さっき、魔族が来たよ。中継放送してあげるよ。あー、まだ仲間の人たちは戻ってないんだね」
そう言う少年の声は殆ど耳に届いていない。
氷はただ、その映像を見て呆然としていた。
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